日常

ユノの家に訪れてから2週間後、俺は特に何をするわけでもなくのびのびとしていた。

もちろん彼女達はこのままでは駄目だと何やら話し込んでいた。

そして、その話の本人ユノはこちらに姿を現さず学校に行き始めたということだった。


「お前たちいつまでコソコソ話しているんだ。もう2週間になるぞ」

「関さんも何か考えてよ、ユノを元に戻す方法を」


ユノを元に戻す方法。

はたから見ればユノは引きこもりから抜け出して学校に再び通い始めた事は素晴らしいことだが彼女達はどうやら違うらしい。

曰くユノは心を失ってしまっているだとか、俺はユノのことを良く知らないので別にどうでもいいが彼女達は本気でどうしようか考えているらしいので少し話に乗る。


「ならお前たちが危険としている春さんをどうにかしたらどうだ」

「出来たらやってる」

「無理」


ズサ、ノア二人で即答。

やはりどうしても春さんは苦手らしい。かと言って何もせずに終わるのは嫌なのか焦った顔をしていた。


「多分ですけどあと少しでユノは本当に取り返しがつかなくなってしまう気がするんです」

「そうなのか、なら早く何かをするべきだろ」

「ですから出来たらやっています。ですが春さんといるユノを元に戻すにはどうすれば良いのか分からないんです」


ユノを元に戻すにはどうすれば良いのか分からない、そんな事はただの言い訳に過ぎない。

彼女達は一つだけある方法から目をそむけたいだけだろう。もしくは本当に気づいていないのか。

だから俺は再び彼女達を問正す。


「なぁ、まだお前たちは本当に死んでもユノを助けたいのか」


それは前のような感情的になっていないからこその質問。

今は前ほど感情は高ぶっていない時だから即答は難しいだろう。


「何を言ってるんですか、それはこの前返した返答と違いはありません」

「そうだよ、関さん。私達の事甘く見てる?」

「変わらない」

「同じ」


即答。

どうやら彼女達の認識は依然として変わらないようだ。


「ならできる事を全てやれ。手段を選ぶな。全てを使ってユノを元に戻せ」


そう、俺は彼女達の覚悟が見たかった。別に覚悟が変わっていたらこんな事をするつもりは無い。


「だけど春さんがいる限り私達は何も出来ないのと変わりないよ」

「ルシア聞いて無かったのか、自分の持っているもの全てを使うんだ」

「全てって私の体?」

「違う。体、家、人脈、知識、できるもの全部だ」


どうやら彼女達は覚悟ではなく知識が足りなかったらしい。

俺はその後彼女達にいろいろと教えて廃工場のゴミ山の上に立ち天を仰ぐ。

少なくと彼女達は数日で準備を整えユノを元に戻そうとするだろう。

この結果が吉と出ようと凶と出ようと俺には関係ないができるだけ成功することを望んで置こう。


「よし、関さん」

「なんだ」

「関さんも手伝ってくれるよね」


さっきの発言があるから断りにくい。

自分の言葉で自分の首を締めたの初めてだな。

勿論俺は助けたりするのは面倒なのでさっさとどこかに消えようとしたが間に合わなかった。


「手伝うに決まってるだろう。ユノがどんな何にどんな風に苦しんでいるのかは気になるしな」

「理由、最低」

「ノア、目的がどうであれ求める結果が良かったら全て正当化されるんだ」

「それは少し違う気がしますけど」


とにかくこうなってしまった以上俺は彼女達を手伝わなければならない。

俺の持っている力はこういう場面ではとことん使えないので本当に消えて欲しいものだ。


「で俺は何をすれば良いんだ」

「それは勿論春さんの相手」

「つまり俺が春さんをユノから引きが剥がした後お前たちがユノを元に矯正するってことでいいのか」

「それで合ってる」

「だがそれが失敗した時はどうするんだ」

「その時は関さんも手伝ってよ」

「なんで俺も手伝うんだ、俺は春さんを引き剥がしているんだぞ」

「だからだよ。恐らく元凶だと思う春さんとも話をするの」


どうやらまだ彼女達の中では春さんが怪しいらしい。

確かにユノの家に行った場での彼女達を見る目は少し怪しかった気がする。


「なら良いが、日程はどうする」

「善は急げと言うけど準備は大事だから2日後とかどうかな」

「日曜日か、良いんじゃないのか」

「みんなも良い?」


全員オーケーという顔をしてこちら見ている。


「みんなも大丈夫らしいから2日後ね」

「ああ、わかった」


そういったルシアはネラ元へ行きまた話し合いを初めた。

恐らく細かな詳細を決めているのだろう。

俺は俺でやれることをするか、できることはほとんど無いが。

でも流石に何もしないのは後から苦言を呈され兼ねないのでどうするかを自分でも考えてみる。


前提としてユノはおかしくなってしまった。

恐らくそれは春さんが関与しているとして見た方がいいだろう。

ユノを変える、彼女達はそう言っていたがユノを変えるにしても春さんをどうにかするにしても結局元っとも難しいのは自分では無い誰かを矯正することだ。

かの旧ドイツの首相、共産主義国の代表者は武力という人々の畏怖する力を使って人を支配してきたが彼女達はそういった力を持っていない。

いや、持っていたとしても使おうとはしないだろう。

きっと彼女達は平和的な解決を望むはずだ。

だがきっと最悪とは時に起こってしまうものだ。

恐らく彼女達のやり方ではユノが元に戻る事は極めて少ないだろう。

あれは自分でも自覚せずに行っているの可能性が高い。

ユノ自身は自分という存在を否定されたと感じノア達とは距離を取り始めるだろう。

なら俺にできることは消去法で一つだ。


俺の取るべき行動は決まったので後は実行するだけになった。

予想通りに進まなければ良いが。

その後、2日後になるのを待ちながら俺は基本となるだろう彼女達の作戦を聞きに行った。

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