異変

あの後朝食を食べ終えた俺達は昨日も訪れた場所を通り抜けてユノ家の前まで来ていた。


「此処で間違い無いのか」

「うん。間違いないよ」

「そうか」


今日は金曜日なので在宅勤務でなければ親はいないだろう。

ユノは元々不登校なので学校には行っていないと踏んで来てみたが家にいるだろうか。

そう思いながら指でインターホンを触れようとした時。

ガチャ

そう音を立てて扉が開き少し化粧をした春さんが出てきた。


「あれ、昨日の子達じゃん。志乃ちゃんにでも会いに来たの?」


春さんは鞄の持ち手を肩にかけていかにも外面の格好をしていた。

これから会社か大学二でも行くのだろう。

そんな彼女はノア立ちに何かを見定めるような目をして。


「ユノなら二回の自室にいると思うから待ってて、ちょっと呼んでくる」


そう言って彼女は階段を使って二階へ上がり姿が見えなくなる。


「志乃ー、お友達が来てるわよー」


しかしその問いかけに帰って来た返事は俺達には聞こえなかった。

春さんは下へ降りてきて鞄の中身を確認して俺達に。


「リビングまで降りてくるらしいからリビングで待ってて置いてね」


そう言って彼女、春さんは外へ出かけて行った。

今の会話だと俺のことを覚えているのかわからないな。

もちろん覚えている可能性もあるが、ただ単に親か見送りに来た兄と思われて

触れられなかった可能性もある。

俺のことを覚えているのかははっきりさせておきたいな。

そんな事を考えながら俺達は玄関先から廊下を右に渡りリビングに移動する。

これは結構良い家だな。ホームレスなので家具のことはよくわからないがそれでもところどころに高級そうなものが置いてある。

そうして家の内装を見ている内にリビングへつくとそこにはユノがいた。


「ユノ来た」

「来てもらって悪いわね」

「ううん、そんな事無いよ僕が会いに来たかっただけだし」

「それはそうと何で母とつながっている関さんもいるのかしら」


ユノが鋭い目つきで俺を睨む。それはもうネズミを追いかける鷹のような目つきで。

あれ、俺短期間で睨まれすぎじゃないか、どうやら俺は人を怒らせるような特技あるらしい。別に必要としていないが。


「ユノそれは誤解なの」

「それは本当なのネラ」

「うん、関さんは本当にユノお母さんとつながって無いよ」

「私が彼の顔を見ながら確認したけど嘘はついていなかった」

「ズサが言うなら本当なのでしょうね」


謎のズサに対しての信憑性何なのだろうか?

まぁ恐らくズサが一番他人の嘘や考えがわかるのだろう。


「で、私はまだ彼からの謝罪を聞いていないのだけど」


おい、ちょっと待て。今の会話でどこに俺が謝罪する必要性があった。

ユノの思考回路に俺はもうついていけぞ。


「どこに俺が謝罪する要素があるんだガキ」

「ガキ...確かにガキだけど貴方もよ。後謝罪の要素は私を騙したことかしら」


理不尽だ。

勝手に勘違いを起こされたのはこちらだというのにユノの中では騙したということになっているらしい。

とんだご都合主義様ということで。


「悪かったな、騙すような事して」

「ええ、そうね」

「それで大丈夫なのか」

「大丈夫って何がかしら」

「家での生活だよ」

「家での生活は普通だわ」

「ほら、言った通りだろ」


俺とネラ達との賭けではどうやら俺が勝ったらしい。

類は友を呼ぶというがユノは友ではあっても類したものでは無かったらしい。

賭けに負けて悔しがっていているのかそれとも自分達の間違いに気づいて絶句しているのかは分からないが先程から何も言葉を発さない。

まるで春さんを対峙したときのように。


「おい、何か喋ったらどうだ」

「そうね久しぶりって言うわけでもないけど何か喋ったらどうかしら」

「...]


そこから数秒間の沈黙が訪れる。

流石に不思議に思い振り返るとネラ達は異形を見るような顔でユノ事を見ていた。


「ごめん、ユノ。今日はもう...帰ってもいいかな」

「別に構わないけれど体調でも崩したの?だったら家まで送るけれど」

「いや、だい...大丈夫」

「私達もちょっと帰るね」

「そう、少し寂しいけれどいつでも会えるからまた今度会いましょう」


そう眼の前で勝手に話が進んで行き俺は一人リビングに取り残されてしまった。


「悪いが俺も帰る。謝罪はもう終わったからな」

「分かったわ。私も少ししたらまた彼女達の元に戻るわ」

「おう、戻ってこなくていいぞ。俺の監視役が増えるのはゴメンだからな」


そう言ってリビングを出て最後に玄関を出る途中ユノは手を降ってきた。

それを俺は無視し玄関を出る。

玄関を出て門の前につくと門の外の右横にネラ達が体を縮こませこちらに来るよう手招きをしていた。



「何であいつと一緒に居ずにさっさと出てきたんだ」


あの後俺達は廃工場に戻ってきていた俺達は会話を始める。

ちなみに帰っている途中は終始無言で空気が張り詰めていた。


「気づく、まとも、違う」

「ノアどういうことだ」

「あれ、ユノ、けど、違う」

「本当にどういうことだ」

「あれはユノだったけど、ユノじゃなかった」

「何を言っているんだルシア、あれは正真正銘ユノだったろう」


念の為記憶を掘り返すがほとんど何も変わっていないように思える。

ただ当たりが強かったような気もするがそれだけで他には異常は無かった。


「なんて言うのでしょう。ユノは精神が違っていたとでも言うのでしょうか」

「なんだユノの精神が違うって」

「こう何か、考え方がいつもと少し違うような気がするんです」

「じゃぁ何だユノはこの一にで精神をきたす何かがあったとでも言いたいのか」

「そういう事になるのかもしれません」


はぁ、何やらまた面倒事になりそうな予感がする。

ユノの異変、ネラ達が言っている春さんの危険性、関わっていないと嬉しいが。

そんな事を考えなが俺は壊れている天井から空を見上げるのだった。






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