廃工場での喧嘩①

廃工場についた俺達は各々の定位置についてくつろいでいた。

まだ此処に来て2日の者達に定位置があることに少し疑問を抱くがこんな事はこの2日で慣れてしまったので頭の外に追いやる。

俺も何だかんだ慣れるのが早いなと思いつつ彼女達に話しかける。


「これであいつの安否は分かったから捜索することはないな」

「うん、でもだからといって安全かどうかはわからないよ」

「そうなのか?」


ユノが自分の家にいるならこの上なく安心だと思うのだが彼女達はそうではないらしい。いったいどこに安心できない要素があるのか検討もつかない。

家にいれば飯は三食付きで雨風しのげて水も電気も使えるというホームレスにっとてはこの上ない場所なのに。

俺からしたら最高の場所だが彼女達はそうではないのか全員不安そうな顔をしていた。


「一体何がそんなに不安なんだ、教えてくれ」

「姉、母、上から順危険」


ノアの行っていることが理解できない。

春さんやユノの母のどこが危険なのだろうか、別に普通の家族だと思うが。

後、この順位に入っていないお父さんは幸運なのか不運なのかよくわからないが多分良かったのだろう。


「どこがそんなに危険なのか俺には理解できないが。その順位で良いのか」

「僕もネラもズサも異議は無いよ」

「本当お前たちのその相手を読む力はどうやってるのか分からないな」

「そんなの簡単、声質、目線、声の高さ、表情筋の動き、体の動き、筋肉の硬直度、足音これでわかる」

「ズサ、それが出来たらほとんど俺は超能力者だ」

「これは鍛えるものじゃない、後天的だけど自身を守るために自然とついたプログラム」

「そうなのか」


俺にも出来たらなと思っていたがどうやら無理そうだ。

もしできたら相手の心を読めるメンタリストにでも成れたと思うがそもそも俺は一般人にはすぐに忘れされてしまうので意味はない。

本当にこの力には恨みしか無いが今こうしていれる事を考えると逆にそれで良かったとも考えれるのは彼女達のおかげなのか、それとも俺自身が成長したのか、どちらにしろ今が良いことなのは間違い無いので一応は感謝をしておく。


「じゃあユノは危険かもしれないが最悪の危機は逃れたは逃れたからもう介入することは無いな」

「何を言ってるんですか、考える限り二番目に最悪な状態ですよ」


ネラがおかしな事を言う。

二番目に最悪な状態、何を考えて発言をしたのだろうか。

不思議に思い周りを見渡すと全員こくこくと首を立てに振っていた。

これは俺がおかしのか、それとも彼女達がおかしいのか判断はつかないが俺と彼女達の間に明確な認識の隔絶があるのだけは理解できた。


「お前ら脳に味噌が無いのか、考える限り一番良い状態だろう」

「関さんこそ脳に味噌が詰まって無いんじゃないの、ユノの家は間違いなく魔境と言っていい場所だよ」

「そんな事があるか、母、父、姉がいるんだぞ安心できるだろ」

「もう忘れたの、姉と母が危険って言った事」

「それはお前たちが勝手に言っているだけだろう、実際はどうか確かめる術は無いじゃないか。お前たちからしたら全部分かっているのかもしれないが俺からしたらお前達があること無いこと言ってるだけにしか見えないぞ。それに物事を見る時に主観に頼るのは最も愚かな行為だ」

「それは関に理解力が無いだけ、それに貴方の意見も主観」

「俺のは世間的一般論だよ」


売り言葉に買い言葉、それを買ってしまった自分を馬鹿だなと思いながら頭を冷やす。

ユノの事を一般的に見れば何も間違っていなはずだ。

だがたまにそれが通用しないことがあると俺は知っている。

しかし俺は彼女事を何も知らない。彼女の家のことも何もかも。

だから俺は一般論でを進めるしかない。そう俺の持てうる知識で。


「オッカム剃刀って言葉を知ってるか」

「急になんですか」


どうやら彼女達は俺のことを警戒しているようだ。

無理もないと思うが。


「だからオッカム剃刀を知ってるかって聞いてるんだ」

「知りませんけど」


他の奴らも知らないような顔をしている。


「なら教えてやる」

「別にいま関係ありません」

「いいから話を聞け、オッカムの剃刀っていうのはある事を説明する時に仮定が少ないほうが正しい事が多いってことだ」

「だから何」

「つまりだな、お前たちの言ってることは本当かも分からないが仮定が多すぎるってことだ」

「仮定が多い?どこが」

「まずユノの家の姉と母が危険という仮定と家が最も危険な場所という仮定、そしてユノ自身が危険な場所にいるという仮定だ。まだだ仮定はあるだろうがまず挙げられものでも3つ。お前たちの考えは基本的に3つの仮定で成り立っている。それに比べて俺の考えはユノ家族は一般的であるという仮定、だからユノは家にいるという2つの仮定で出来ている」

「そうかも知れないけど貴方にユノの何がわかるっていうの」

「あって2日だぞ。何もわかるはず無いだろ、そもそも俺が望んでもないのにお前達が俺につきまとっただけだろうが」


一通り言いたいことを終わった俺は息を整える。

そうして彼女達を見るとまるで親の仇のような目線を向けてきていた。

だけど反論の言葉が飛んでこない。彼女達は自分達の考えが感覚的なものだから反論しづらいのだろう。

そう思い目を逸らした時にゆっくりとズサが口を開いた。

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