台風のような女

面白いね君、外での志乃ちゃんのこと、この春さんに教えてよ。

と言われた俺は言葉の選択を間違った事を悔いていた。

どうやら更に面倒事に巻き込まれるらしい、自分が蒔いた種が此処まで見事に成長すると植えた本人でも少し困ってしまう。

面倒事は遠くから傍観していたほうが楽しいのに何で俺が中心にいるんだよ。


「ねえねえ早くお姉さんに教えてよ、どんな奇妙な関係かを」


急かしているようなのであえて乗らせてもらおう。


「そんな奇妙な関係ってほどでもないが俺の家に帰ったらそこの四人と志乃がいたんだよ」

「つまりに志乃はあなたの家に不法侵入したと」

「そうだ」


そう何も嘘は言ってない。ただぼかした部分はあるがまぁ誤差の範囲だろう。

しかし彼女は顎に手を当て探偵のような仕草をしながら言い放った。


「志乃とその子達がそんな事をするとはとても思えないんだけど、ねぇ何か隠してるんじゃないの」


見抜かれてしまった。上手くぼかしたつもりだったがバレたようだ。

ただ悪あがきをしてどういう反応が来るのか気になってしまったので少しだけ悪あがきをする。


「別に隠してるつもりはないが、逆に何故そいつらと志乃のことがそんなに信用できるだ」


俺の問にたいして彼女はさも当然であるかのように返した。


「それは簡単だよ、まず私の妹がそんな事をするはずがないし意味もない、そして彼女達のことは可愛い志乃ちゃんから聞いているから」


どうやら彼女、春さんの中で妹の志乃はそれなりに評価しているらしい。

それにしてもユノが家族にノア達の事を話しているのは以外だった。てっきり家族とは家庭内別居のようなものだと思っていたがそうではないらしい。


「で、本当はどうなの?」


此処まで来たらしょうがないので全部話すしかないので腹を決める。


「やれやれ、隠せそうもないから全部言うがそんな大したものじゃないぞ」

「うん、良いよ。そもそもそんなに期待してないから」

「それ初対面のやつに対して言うことか」


ただこのまま話をしてもきりがないので本題に入る。


「俺はホームレスで廃工場に住んでたらそいつらが俺がスーパーに行ってる時に入られただけだ」

「それって、貴方が勝手に住み着いた場所に志乃ちゃん達が来たってことでしょ、別に不法侵入じゃないし」


その通り過ぎて言葉が出ない。というか何でこの彼女は驚か無いのだろう、普通の女性なら少しぐらいは驚くはずだが。

そんな事を考えていると彼女、春さんは意味の無い事をしてきた。


「そういえば、まだ君の名前知らないや、私は名乗ったから名乗ってもらおうかな」

「それはお前が彼女達の質問を勝手に答えただけだろ」

「それはそうだけど結果的に君も私の名前を知ったことになるじゃないか、あと人のことを呼ぶ時はお前はやめたほうが良いよ。せめて私のように君とかのほうが」

「別に呼び方なんてなんでも良いだろ、俺の名前なんて覚えて入れないだろうしな」

「それは確かに」


おい、せめてそこは否定をしてくれよ。春さんはまだ俺の力を知らないし、ノア達にも教えていないのでせめて否定はしてほしかった。


「でもそれとこれとは話は別、早く教えてよ」

「あぁ分かったよ、俺は関縁辞だ」

「そう、で年齢は?」

「おま、年齢は言ってなかっただろ」

「女性の年齢は知らないほうが得なんだよ」


まぁ元から教える気無かったけど、そう言った彼女は後ろを向き帰ろうとしていたので俺は呼び止める。


「そういえば志乃を知らないか、どうやら会話の途中で勘違いを起こしてどこかに行ったんだよ、こっちに来ていることだけは分かっているだが」

「それなら安心してもらっていいよ、志乃ちゃんなら今家にいるから」

「そうか」


もう此処には用がないのか春さんは今度こそ後ろを向いて来た道を辿っていった。

角を曲がって姿が見えなくなった後、俺は会話中に大人しかったノア達に目を向ける。


「やけに大人しかったな、何かあったのかあいつと」

「あ..あの志乃のお姉さんとは、...」

「どうした大丈夫か、気分でも悪くなったなら俺の監視はやめて家に帰れ」

「別に...気分は、気分は悪くない。ただ...怖くて何も出来なかっただけ」

「怖かった?」

「はい。あの人からは何か底なし沼のような...とにかくあの人はやばいです」

「やばいです。てあいつはそんな人には見えなかったが」

「僕とズサも肺が潰れそうだったよ」

「そんなにか」


こいつらが大人しかったのはどうやら春さんのおかげらしい。

どうせならずっと一緒にいて監視してくるこいつらを抑圧して欲しいものだがそれそれで可哀想なのでやめておく。

にしても春さんは危険人物らしい、こいつらが何を感じ取って判断しているかはわからないが。

俺自身正直そこまで危険性を感じなかった。




「なぁ」

「何」


廃工場に帰る途中俺はユノが抜けた彼女達に話かけていた。


「ふと思ったんだがお前たち家に帰らなくてもいいのか、家族とか心配してるじゃないのか」

「私は家に私がいないほうができることが多そうなので別に何も言われませんね」

「私の家は私がいないほうが幸せ、それに私もそのほうがいい」

「僕は別居してるから何も知らないし大丈夫だよ」

「家族いる、けど会えない。」


全員、面倒くさそうな家庭環境がありそうだ。

今ので恐らくユノの家庭環境も何かありそうな事は確定した、恐らく母親と学校だけじゃない。

ただ関わるかは別問題だがきっと彼女達に理不尽にも連れ出されるだろう。

ほんと勘弁して欲しいものだが。

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