ユノの過去と現在

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ユノ



何で、何で何で何で何で!

親にも学校にも知られていない場所なのに何でお母さんがいるの。

私、雪羅志乃は親から、正確には母から逃げていた。

いつも成績や出来を姉や人と比べられてそのたびに罵倒をされる。

もう心の限界だった。

人の心は他の人たちが思うほど強くは作られていない。

だからいつの間にか私の心はすり減っていて気付いたときにはもう後戻りできないところまで心は荒んでしまっていた。

そして中学3年あたりから学校に行かなくなった。いや行けなかった。

もし行ったとしてもまた他人と比べられるのが怖かった。

そうやって家に引きこもって過ごしていく時に父と姉からせめて高校は卒業したほうが良いと言われた。

その時点で母とは顔を合わせていなかった。

同じ家で鉢合わせしても顔を見ることもせずに二階の自室に逃げていた。

ある時家にいるのが飽きて夜だったけど散歩をした。

そんな時に道路の向こうから歩いてくるノア達の姿を見つけた。

初めの印象は不良かと思っていた、そしたら彼女達が声をかけてきた。

訝しんだけどノア達から自分と近ものを感じていたんだと今にって思う。

その時から私自身も彼女達の一人になった。

生きていて久しぶりに姉と父以外の人と話した私は高揚していた。

そして家についてもその高揚感は治まらなかった。

ただその高揚も長くは続か無かった。

高校に入ってすぐに私は先生に呼ばれた。

中学は途中で不登校になったけど勉強は出来たので受験は大丈夫だ。

だけどそれが仇になってしまった。

どうやら成績トップだったらしい。

過剰な期待をされてクラスメイトには元不登校なのにと疎まれていた。

勉強をしなくても成績は不動のトップ、いつかカンニングをしていると疑われた事もあった。

その時にはもちろんカンニングなどしていないので不問に終わったがその頃から変な噂が広がっていた。

『雪羅志乃は先生を買収している』

根も葉もない噂だったけど噂には尾鰭がつきしだいに段々と私という存在自体を学校全体で避難する様になっていた。

私は耐えられなくなって学校を飛び出した。そしていつもの仲間のところに足を運んでいた。

そして今日までノア達と自分を否定するものからただひたすら逃げていた。


「ユノ、落ち着いた?」

「ええ、ありがとうノア」

「お互い様」


無我夢中に走っていたので周りの事をよく見ていなかったけれど此処は廃工場の敷地裏だった。

どうやら放心状態の私の手を引っ張って回り込んだようだ。


「不思議な事がある」

「不思議な事とは何かしら?」


ズサが何やら疑問を覚えたらしいので聞いてみる。


「関が途中で歩くスピードが速くなった、もしかしたら関が何か企んでいたのかもしれない」

「嘘、でも関さんは私達の事を知らないはずだわ」

「それはわからない、調べようと思えば何だったてできる」

「で、でも」


途中から私は声が出なくなっていた。

否定をしたい気持ちはあるのに何故か声が出ない。

もしもの可能性が脳裏にちらついて離れなくなっていた。


「ねー、別にそんな事考えてもどうにならないんだからほっとこうよそんな事」

「ルシア、そんなことで済まされないことを今考えてるの」

「ズサ、私達の過去と事情はできるだけ口に出したり掘り返さないよにって言ったよね」


ルシアの声が氷のように冷たくそして低くなった。

一瞬にしてその場の空気が凍りついたのがわかった。むしろ彼女の声によって室内気温自体が低くなっているのかもしれない。

ズサは焦ったように言葉を発した。


「ごめん、少し妄想が過ぎた」

「うん、別にいいよ妄想が止まらないときってたまにあるよね」


ルシアの声がまたいつものようになったので緊張が少しほぐれた。

関さんのことに関しては進展はないが今は考えないでおいたほうが良さそうなのでとりあえず忘れることにした。


そうして各々が考え事に更けていると廃工場の扉が開く音がした。

どうやら関さんが帰ってきらしいので考えていた事を少し聞いてみようと思ったので声を掛けた。


「関さん、質問があるんだけど良いかしら」

「おう、何だもう大丈夫なのか」

「少し良くなったわ」

「それで質問って」

「関さんあなたは私の母とつながっているの?」


その問いに対して数秒の沈黙が訪れる。

4人も目を大きく見開いて私を見ていた。

関さんは何やら考え事をした後。


「別につながってはいない、だがお前の母親と話をしてきた」

「お母さんと話」


その言葉に私は驚いた。

つまり今の彼の間は少なからずともつながっていると見て良い間だった。

自分達と同じと感じていた彼はどうやら私を傷つける存在になってしまった。

だから私は


「そうですか」


そう言い残して廃工場を飛び出した、別に行く宛があるわけでもない。

ただ走りたかった、胸の中にある不安と苦しみから逃れたかった。


どれくらい走っただろうか、私は4人に会った道に来ていた。

別に此処に来たってあの4人が来るはずもない。

ただ此処で少し夜風に触れて頭を冷やそうとしたことだけは確かだった。



「志乃?」


私しかいない道路に声が響く。

ふと声がした方を振り返るとそこには姉の雪羅春菜(ゆきら しゅな)が目と口を開けてこちらを見ていた。

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