ユノ編

帰宅途中で

自販機での騒動があった後、俺と彼女達は廃工場へと帰り足を進めていた。


「たっく、何でお前らは俺についてくるんだ、帰る場所は俺の住処じゃないだろう」

「監視、続行中、あと私達には居場所がない」

「そんな事は分かってるよ、だがなお前らには話をすれば人から理解をされる魔法のような力があるだろう」

「それはあなたも同じ、だけど私達はそもそも話せる土俵に立てない」

「そうですね、他にも理由はありますが大体そんなところかしら」


ノア、ユノに無理だと言われてしまった。

そもそも俺の提案した方法はそもそもそういう状態では無かったらしい。

彼女達が何を抱えているかは知らないがどうやらとても面倒くさそうなのでこれ以上は首を突っ込むのをやめにする。

好奇心は猫をも殺すというからな。

そんな事を考えながら前にいるズサ、ネラ、ルシアを見ると彼女達は楽しそうに談笑をしていた。




「ふと思ったんだがお前らはどうやって知り合ったんだ」


俺の問に対して答えたのはズサで。


「私とネラ、ノアはネット。ユノは深夜の散歩中、ルシアは街にある丘の神社裏の井戸で」

「誰が最初にこのメンバーを作ったんだ」

「ノアとネラがネットで知り合っていて自分がそこに入った」

「僕はその三人が神社に来た時にたまたまいたんだよね」

「私が最後に入ったのよ」

「なるほど...ちなみに何でネラとノアは知り合おうって思ったんだ」

「私はノアと何かが似ているなと思ったからですね」

「私も」

「なるほど」


彼女達はネットからリアルに出会いの場を広げて行ったのか。

そこで疑問が生まれたので投げかけ見る。


「なら俺の廃工場じゃなくてネットで良いんじゃないか」


そう、別にあの場所じゃなくて良いはずだ、ネットのほうが色々と便利だろうから

な。

だが、俺の考えが甘かったらしい。


「無理、そもそも家や学校だと居場所がないし、お金はあってもお店に入ろうとするとお店の人に怪しまれるからね」

「そんなものなのか」

「そうそう、毎回別のところに行ってもどうせそれほど多くないから全部のお店に怪しまれるんだよね。こんな時間帯で学校はないのかってね」

「そうなのか」


そんな場所には行きたくても行けないのでその悩みは少し羨ましいが、結局力を使って潜り込めば良いのでそんなに羨ましくもなくなっていた。

別にこの力をそんな犯罪まがいなことに使う気はないが。


「そういえばさ関はなんでお金を集めてるの」

「確かに気になります」


ルシアの質問に対して俺は壮大でもなんでもないありきたりな回答をする。


「そんなのは簡単な理由だ、食券機とかコインランドリーとかを使うためだ」

「意外と普通」

「普通で悪かったな、俺はあいにくとそこら辺のホームレスと変わらないただの人間だ」

「本当かしら?あなたからは私達と同じではないけれど近しいものを感じるわ」

「さっきも言ったが俺はお前たちとは違うんだよ」

「どうだか」


ズサとユノに疑われつつ足を進めるスピードを少し速める。

それはななぜか、理由を言語化するのは難しいが嫌な予感を感じ取ったので少し足の速度を速めたのだ。

それについて彼女達はなんとも思はないのか只々歩調を合わせる。

そしてもうすぐで廃工場というところで右の曲がり角から人が出てきた。

その人物は俺達を見るなり目を丸くし言葉を発した。


「ん、もしかしてあなた志乃?」


今角から出てきた女性は俺ではなく明らかに俺の隣にいるやつに語りかけている。


「お...お母さん」

「また外をほっつき歩いて、学校はどうしたの勉強は」

「そっそれは」


ユノの母と思われる女性から発せられた言葉には苛立ちと冷酷さが含まれていた。

確か今ユノの事を志乃って言っていたよな、まったく変な状況で本名を知ってしまったな。

そんな事を考えていると4人は。


「ユノこっち」


ユノの手を取ってどこかに行ってしまった。

俺はその場に残されユノ事を志乃と呼んだ女性と対峙する形なっていた。

え、どうすれば良いんだこれ。

とりあえず目の前にいる女性に話しかけてみる。


「彼女に何かようですか」

「別に用というわけでは」

「なら何だったんですか、彼女あなたを見た途端逃げていきましたよ」

「そうですね、立ち話もなんですから場所を変えましょうか」


____________


そう言って俺は恐らくユノの母親にあたる人物とカフェにに来ていた。


「それで何があったんですか」

「別に何がというわけではないんですが、志乃に少し後ろめたさがありまして」

「ほう」


後ろめたい、つまりユノの過去に関係することなのだろう。

実に興味深い、ユノが何を抱えていて何を恐れているのか。

ユノに限った話ではないが彼女達の目は深い闇に覆われていて光が差し込んでも変わることなく暗い。

そのうち一人の理由を聞けるのは接するときの参考になる。

だがあの様子を見た後では本当か疑わしい物はあった。


「私が志乃の心を壊してしまったんです」


ユノの心を壊した、その言葉で俺はふと思った事がある。

人の心が壊れるのは一人の影響では稀だ、実際に壊れる時はいくつかの要因が難解に重なって起こりうるものでありそれが一つのまとまりとして捉えられやすい。

だから俺は。


「それは本当か」

「はい」

「あり得ないな、人の心は一つの要因で壊れるほどやわじゃない、きっとユノ自身の考え方のせいもあったはずだ」

「そうでしょうか」

「そのはずだ、少なくとも壊れた時期がお前と隔絶した時と同じならな」


どうやら彼女は他に思い当たることもあったのか少し残念そうな顔をした。


「実は志乃が本格的に今のようになったのは高校に入ってからなんです。途中まではちゃんと学校に行ってたんですけど一年生の秋頃なんです

「秋頃?」

「はい」


そんな話をしていたとき『ゴーン、ゴーン』と時計の鐘がなった。

時間を見ると4時なっていた、つまり。


「あ、あのあなたはどちら様でしょうか」


この通り一般人は俺のこと忘れてしまう時間だユノの母親ということもあり少し期待をしていたがやはり駄目だったらしい。

話の途中でむず痒い部分もあるが今話しても自分の娘を知っている怪しい人間にしか見えないだろう。

なのでとりあえずは此処で一旦話を終わらせて置こう。

そうして俺は志乃の母親であろう人物の問に対して返事をせずに喫茶店を出て手を叩いた。

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