第9話 回想②

橘は、相変わらず病院内を歩きまわっていた。歩くことに集中していたのであるが、ふと、掲示板を見てみる。そこには、病院スタッフが描いたのか、絵がある。絵と言っても、患者を楽しませるような絵だ。絵はドラえもんであった。しかし、お世辞にもうまいとは言えない。この絵は、自分のことを、どういう存在だと思っているのであろうか。と、ふと橘は思ったのであった。ぱっと見は、ドラえもんに見えるが、明らかに女性バージョンののように描かれている。

「ドラえもんって男だよな…」橘は言った。

引き続き廊下を歩いていると、太っており、帽子をかぶった中年男性がいる。こちらに近寄ってきたのであった。

「初めまして!!大沢義信と申します!今日から入院してきました。よろしくお願いします!!」と、挨拶してきて、手を差し出し、握手を求めてきた。

橘は「よろしくお願いします」と言って、握手に応じたのであった。なんとなくであるが、大沢に好印象を持ったのである。昔、入院中に言われたのであった。握手は武器などを何も持っておらず、友好を示していると。だから、橘は、大沢と握手したのであった。

大沢は「僕はこの入院で、友達10人作ろうかと思うんですよ」

「そうですか、頑張ってくださいね」と橘は言った。

そう言って、大沢はコーラを買いに自動販売機へと向かっていったのであった。大沢が戻ってくると

「大沢さんは何の病気なんですか?」と橘は聞いた。すると、大沢は

「統合失調症ですね。統合失調症ってわけわかんないですよね」と言ってきた。

「僕も統合失調症ですよ」と橘は言った。

そうして、大沢としばらく雑談したのであった。それ以降、大沢と話したり、廊下を歩いたりして時間をつぶすことが増えたのであった。

ある日、病室で横になっていると会話が聞こえてきたのであった。

「この、ゲームのオチって知ってる?」

「知ってるよ、このゲームは別次元、つまりパラレルワールドってことなんだって」という会話が聞こえてきたのであった。橘は感じ取った。ゲーム…パラレルワールド…。そうか!そういうことか!前に、ネット動画で見た、シミュレーション仮説というものを思い出していた。つまり、そういうことだ。この世界は、何者かによって作られた、ゲーム、漫画、映画、ドラマなどど同じ…”仮想空間”であるといことだ。ある低次元の存在が高次元の存在を認識することができるか否か。それは、不可能ということである。つまり、高次元の存在は神のような存在ということだ。これは、アニメ、漫画でいうと作者にあたり、映画であれば監督ということであろう。

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