第55話 縁は廻る
辛い記憶を持ち続け、自分に拒絶されながらも、願いのために耐え忍んだ妖怪である初花は、初花に全てを明かされて暴走した。
「辛いことばかり私に押し付けたアンタが、どうして先に勝五朗様の腕にいるん!? ずっと尽くしてきた私じゃないのはなんでなん? はよう消え去りや! そしたら私は完全にこの体に入れるんや!」
頭を掻きむしる妖怪に、初花は語りかけた。
「大丈夫、私はちゃんとあんたを受け入れるよ。安心してや。生まれ変わった勝五朗様は、私の代わりにあんたが愛してあげて。でも、その子はあんたと勝五朗様の子や。一応、私の子でもあるんやから。苦しめるのは許さんよ。ちゃんと自分の体に戻ってきぃや」
初花の口が動いたことを、翠雨は見逃さなかった。
翔悟の体から妖怪が抜けると、今度は翔悟の体が傾いた。すぐに翠雨は手を伸ばした。ギリギリの所で滑り込んで頭は地面に当たらなかった。翔悟は目を開く。
「翠雨、ああ翠雨だ。こんな顔だったなぁ。ごめんね翠雨、僕は君の顔を一度忘れたんだ。頭も角と牙が生えちゃった」
翔悟の涙と共に胸ポケットからコンパクトミラーが滑った。翠雨は八重の言葉を思い出す。
――大事な人も持っていることでしょう。
確信した。この鏡が翠雨の持つ物と対の八咫鏡だ。
翔悟を地面に横たえる。対の八咫鏡を合わせ鏡になるように並べて翔悟を写す。
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