第10話 白馬の将、趙雲
赤壁の風が吹き抜ける軍営に、白銀の鎧をまとった一騎の将が姿を現す。
その男こそ――常勝の猛将、趙雲子龍。
「劉備玄徳殿の命により、新たに加わる者なり。異郷の女と聞いている」
美蘭の前に立つ趙雲は、端正な顔立ちと凛とした気配をまとい、言葉少なに彼女を見つめた。だが、その瞳には敵味方を問わず命を重んじる武人の誠実さが宿っていた。
翔太が一歩前に出て、趙雲に軽く頭を下げる。
「彼女は現代――未来から来た人間です。俺と同じように」
趙雲は一瞬、驚きの色を見せるも、すぐに微かに頷いた。
「ならば尚のこと、守るに値する者であろう」
その日から、趙雲は美蘭の護衛を務めるようになった。
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戦の準備が進む中、美蘭は傷病兵の手当てに奔走していた。薬草の調合、感染症への配慮――現代医療の知識を活かしながら、彼女は次第に兵士たちの信頼を得ていく。
翔太は、曹操軍の動向を探る密偵任務を任されていた。
命がけの任務の中で、彼はある噂を耳にする。
「荊州の山奥に、“帰還の門”と呼ばれる神の遺跡があるらしい。
時を越える力を持つという…」
その言葉を、美蘭に伝えるべきか否か、翔太は迷った。
一度話せば、彼女はきっと揺れる。
それでも、彼は夜、静かに告げた。
「戻れるかもしれない場所が、見つかった」
美蘭は長く黙した後、小さく答える。
「…ありがとう。でも、今はまだ…この時代にいたい」
翔太は胸の奥が軋むのを感じた。
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そして、戦の火蓋が切られた。
諸葛亮の天才的な策略、黄蓋の偽りの投降、そして火計――。
燃え上がる曹操軍の大船団の中で、翔太もまた情報兵として戦火を駆けた。
美蘭は、戦場に立ち込める煙の向こう、傷ついた趙雲を発見する。
「趙雲さん!」
倒れかける趙雲を、必死に引き起こし、治療を始める美蘭。
血に染まったその白鎧を見て、涙をこらえながら。
「私は、あなたたちを失いたくない…」
趙雲は微笑みながら、かすかに呟いた。
「未来に帰ることだけが、正しき選択ではない…我らが心に、居場所を見つければよい」
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赤壁の戦いは終わった。
勝利の後、劉備軍は次なる戦へ向けて進み始めていた。
だが、美蘭と翔太は、ついに“帰還の門”の地図を手に入れる。
神殿の扉は、時が満ちれば開かれるという。
現代に帰るのか。
この時代に残るのか。
二人は門の前に立ち、新たな選択を迫られる――。
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