第6話 京阪神クライシス

 御堂筋線・梅田駅、午前7時22分。


 満員電車の中に、成田三郎はいた。昨日まで戦場にいたはずの男が、今はスーツ姿で吊り革を握っている。額には冷や汗、背中には“量子装甲”の制御ユニット。


「なんで俺、普通に出勤しとるねん……」


 ——否、これは“擬態モード”。

 量子スーツは、周囲の目をごまかす“現実干渉フィールド”を備えていた。


 しかし、その静寂は、突如破られた。


 ゴオオオオオッッ!!!


 地下鉄トンネルを何かが貫いた。赤い閃光。車両が揺れる。悲鳴。

 三郎の脳内に、情報が直接流れ込む。


> 『接近信号:時間兵士“センゴク”……出現位置・四つ橋線交差点、即応願います』


 「センゴク……戦国……まさか、また過去からか!」


 三郎は車両を蹴り飛ばして、ホームに飛び出した。  そこに立っていたのは、異様な姿の戦士。金の兜、火縄銃に似た量子銃。そして背中には——


「……六角形の盾?」


 ——六角館の騎士(ロッカクのきし)。


 彼らは、時空戦争の初期に存在した“因果秩序維持機関”。

 平安時代から数百年、京都の“六角堂”に拠点を置き、“未来を監視する者たち”として暗躍していた。


「汝こそ、“時空の破れ”の核——成田三郎か」


 「いや、俺ただの派遣で——って聞いてないか」


 戦闘開始。

 量子火縄銃から放たれる干渉弾を、三郎は瞬間移動でかわす。六角形の盾が空中で回転し、時間遅延フィールドを形成する。攻撃が通らない。


「めっちゃ強いやんけ!」


 苦戦する三郎。しかしその時、通信が入る。


> 『こちら台湾支部、“杏花シンファが援護に向かっています。間もなく転送到着』



 ——杏花。夢洲で一度だけ出会った女性。

 あの夜、共にスーツの秘密を探り、未来の運命について語ったあの人。


 時間ゲートが開く。


「久しぶりね、成田さん。助けに来たわ」


 彼女のスーツは、紅蓮色。

 その背中には、謎の文字——“妄界式Ⅳ型”。


「まさか……君も、量子適応体?」


「ううん。私は“妄想兵”。あなたの想像が、私を強くするの」


 ——その瞬間、三郎の中にあった“戦わねば”という妄想が現実になる。

 杏花の剣が炎をまとう。六角館の騎士が防壁ごと焼かれる。


 「妄想で、現実を上書きした……!?お前、チートか!!」


 戦闘は終わり、騎士は崩れ去る。


 しかし、残された盾が、自動でメッセージを投影する。


> 『ルシファーが“六角館の書”を探している。場所は——京都・六角堂。そこに“未来を選ぶ鍵”がある』




 次なる戦場は、京都。


 ルシファーの野望が、いま加速する。


---


次章予告:

洛中決戦らくちゅうけっせん

時空装置の原型“六角館の書”を巡り、三郎とルシファーが直接対決!?

一方、杏花の正体に秘められた、ある“消された未来”とは——?

そして、あの“秀吉的存在”がついに登場!?



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