第4話 地の底の悪魔(ルシファー)
秀海は四川盆地の北、廃棄された軍事用トンネルへと足を踏み入れていた。
その場所はかつて、対アメリカ戦略の要として秘密裏に建造された地下鉄道網の一部であり、今では反政府勢力の拠点とも噂される。
静寂。
コンクリートの壁に、時折“水の滴る音”だけが響く。
「空間内部、異常な熱源反応を検知」
脳内AIが警告を発する。その直後——
「よく来たな、機械の亡霊(ダミーネーター)」
低く、艶のある声がトンネル全体に反響する。
暗闇から一歩踏み出してきたのは、漆黒の戦闘服を纏い、右腕を義手のトンファーに変えた男だった。
彼の名は——ルシファー。
中国人民解放軍の元将校にして、世界規模のテロ組織「業火」の指導者。
その顔には“かつて機械兵に焼かれた痕”が残り、片眼に赤い義眼が光っていた。
「お前の存在は、俺にとって生き地獄だ」
ルシファーの義手トンファーが、地を打つように鳴る。
それは人間の技術と怒り、そして狂気が生んだ“打撃型兵器”。
圧倒的な重さと回転力を誇る『人間の復讐』の象徴だった。
秀海はトンファーバトンを握り直し、構えを低く取る。
「目的を問う。敵対する理由は何だ」
問いは形式的なものだったが、どこかに“理解したい”という感情が滲んでいた。
「理由?……お前たち機械に母を殺された。俺の家族は“正確な射線計算”の犠牲になった。人間性のカケラもねえ奴らにな!」
トンネルが震えた。ルシファーが地面を蹴り、超速の突進。
「喰らえッ、“人間の怒り”ッ!!」
義手のトンファーが空間を裂くように放たれる。
だが秀海もまた、反射的にバトンを水平に構えた。
衝突、そして反動。その音は銃声のようにトンネルに響き渡る。
「これは……ただの戦いじゃない……」
秀海は思った。相手の拳に、殺意以上の“悲しみ”が宿っていた。
ルシファーは叫ぶ。
「機械に魂などない。貴様が“心”を語ることが、何よりも人間を侮辱している!!」
その言葉が、秀海の中に沈殿していた“問い”を揺らがせた。
「……だとしても、俺は、それを知りたい」
再び、二人のバトンがぶつかり合う。
このトンネルの奥、闇のさらに奥で——
秀海は「機械としての限界」と、「人間性の始まり」に手を伸ばし始めていた。
(つづく)
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次回、「第三章:血と記憶と白蓮」では、ルシファーとの戦いの結末と、秀海の“記憶の断片”が明かされます。
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