第11話 機械都市サトミ国2
サトミ国で働いて3週間が経過した。
休みの合間を見つけては、2人で国内を歩き回ったが一向に手掛かりは掴めなかった。図書館で、ランショウは、この国の守り神的存在という事だけが分かった。工場内、何処かにランショウの手がかりを探そうとしたが新人の二人が行き来できるのは自分の部門と部品を運ぶ隣の部門だけだった。
「ルリちゃん上手だね……仕訳」
ルリは、不良品と部品2品を仕分けるほどの達人になりスピードが遅いラキはひたすら部品を運ぶ係をしていた。工場内での私語は厳禁のため隣部門に部品を送る際も
「部品。運びました。確認印お願いします」
しか話せない。休憩時間は、食事を済ませると皆眠るかゲームをしている。
お金は貯まるが、情報を得ることができない。このままでは、1カ月が過ぎてしまう。ラキは、少し焦りを感じていた。
「ねぇ……明日休みだよね……。夜ご飯一緒に食べない?」
そんなある日、プラネが昼休憩の時に話しかけてきた。
「えっ?」
仕事の内容は、話すがそれ以外の会話はないためラキは驚いた。
「私の部門で3週間も続いた子初めてだから……お祝い」
『プラネさん良いですね! どこ行きます? 僕、歯車亭好きですよ』
「歯車亭美味しいもんね……私の行きつけがあるの……良かったら……」
「ありがとうございます!」
ラキたちが話しているとマネージャーがやってきた。
「更新手続きの書類を持ってきたのですがプラネさんがお食事に誘うなんて珍しいですね」
ー更新手続きの書類ってデータ送信じゃなかったか?てか、タイミング良すぎじゃね?
とラキは思ったが四隅にある監視カメラでなんとなく察した。おそらく、休憩時間は常に見張っているのだろ。
「はい……。私の班、いつも人異動しちゃうから嬉しくって……」
「そうなんですね! それは、良い事です。じゃあプラネさんもお仕事更新されますか?」
「この子たちが、一緒……なら」
「良いですよ。プラネさんが、今年までかなっておっしゃったときはどうしようか悩みましたが良かったです。お二人も続けられますよね?」
「そうですね」
俺は、スマホを取り出し魔法学園の案内通知を開いてみた。何も通知がない
「学園からも何も通知ないですしこのまま1カ月更新したいです」
「ありがとうございます。学園が早く復興すると良いですね」
「はい」
マネージャーは、嬉しそうにその場を後にした。
午後の部開始のブザーがなった。ラキ達は午後の仕事に向かった。
午後の仕事が終わると3人は、着替えを済ませ工場を後にした。
『どこのお店行くんですか!』
「付いてきて」
プラネに連れられるままに二人は繁華街へ向かった。
「ここに、俺たち大丈夫ですか!」
「大丈夫。保護者居れば入れる」
鮮やかなネオンの看板にルリは嬉しそうに跳ねている。
『ここ、大人同伴じゃないと入れないから嬉しいです』
「……フフ。ここは、監視カメラとか離れられる箇所……」
「そうなんですか」
『こういう場所もないと……みんな疲れちゃうから……』
なるほど。繁華街は、普段見ない顔の大人たちが沢山いる。
「繁華街入るには……予約制で2カ月に1回しか入れないの……」
「そんな貴重な時間にありがとうございます!」
『君たちのこと待っていたし……』
「待ってた?」
プラネは、古風な居酒屋に入った。ラキとルリも続く。
「いらっしゃいませー。お!プラネちゃん。久しぶり」
「奥の座敷良いかしら?」
「良いですよ。今日は座敷貸し切りなんで大丈夫です」
「ありがとう……」
プラネに続いて店の奥の座敷にラキとルリは入っていった。
座敷は、掘りごたつになっていた。
すぐさま、沢山の食事が運ばれてきた。ある程度食事を終えるとプラネが掘りごたつに潜った。
「プラネさん!?」
「付いてきて」
プラネが、掘りごたつに手をかざすと緑に輝く歯車の紋章が姿を現した。
そのまま、吸い込まれるようにプラネが掘りごたつに入っていったのでラキとルリも続いた。その先は、大きな扉が姿を現した。また、プラネさんが手をかざした。歯車の紋章が姿を現す。鈍い大きな音と共に扉が開く。
『会いたかったよ。我が妹よ~』
薄ピンク色は、ポニーテルに。白衣を着こんだ長身の痩せ男がルリに抱き着こうとした。ルリは、右手に力を込めてグーパンチを繰り出した。
『うっ』
男は、腹にクリーンヒットした倒れ込む。
「ちょっルリさん」
『大丈夫です。力緩めましたから』
『この痛みはルリの気持が籠っているのでしょう。嬉しいです』
「もしかして、兄貴さん?」
『ええ。そうです。愚兄です』
『愚兄なんてひどいじゃないか! そう私は、麗しいルリの兄ランショウセキだ。初めまして。ルリのマスター君』
ランショウセキの周囲にはウザったいぐらいのバラのエフェクトが飛んでいる。
「ルリが、苦手な理由がなんとなくわかったわ」
『でしょ~』
「ってことは、プラネさんがランショウセキさんのマスター?」
「そうよ。宜しくね、しっかし、ルリちゃん可愛すぎるwwwwまじ天使!!」
「プラネさんキャラ変わってません?」
「こっちが素なのよ。あと、名前も偽名だしこの髪もカツラなのよね~」
そういうと、プラネさんは、バサッと長い髪を床に投げた。すると、ピンクゴールド色の髪が姿を現した。長い髪を団子にしている。
「本名は、ハンズフラネット・サトミって言うの。でも、プラネで良いわ。このニックネーム気に入ってるから」
「分かりました。俺たちの事最初から分かってたんですか?」
「ええ。最初に会ったときにルリちゃんの瞳見て分かったの。うちってカラコンに識別番号つけてるんだけどそれが見えなかったから。この瞳はうちで作った物じゃないって。ランショウから、兄妹の特徴やらも聞いていたからね。ビビッと来たわけ」
「ルリは気付いていたのか?」
『はい。私の瞳は、魔力探知も出来ますがラキが習得した魔力探知によってプラネさんの本名が表示されていましたから』
「その手があった!!」
ラキは、魔力探知を使った。すると、プラネの頭上にハンズプラネット・サトミと表示されている。
「使わなくて正解よ。魔術使用したらすぐに感知ブザーがなるわ。しかし、その術面白いね! 私も欲しい! 魔術構造教えてもらえる?」
「いやぁ~それがかくかくしかじかで……」
ラキは、自分が習得した経緯を話した。
「幸運かぁ~噂に聞いてたけどすごい能力よね。正直、非科学的すぎるけど……」
「そうなんですよね」
『で、私たちに会いに来たってことは何か頼りたいことがあるのだろう?』
「はい。実は……」
ラキが、話そうとするとすぐさまルリが口を挟んだ。
『幸運を使い創造の魔術を習得したいんです。ラキが、創造を取得したらこのサトミ国が不幸になるかもしれないって言うので』
ルリさん。それより重要な事があるでしょとラキは突っ込みたかったがすぐさまランショウセキが反応した。
『返答は、NOだ。ルリ、まだ諦めてなかったのですか!』
ルリは、舌打ちをした。
「え? 良いんじゃないの? 別にこの国が不幸にはならないでしょ?」
『私が、不幸になります。ハンズ。ルリは、ムッキムキのボディを欲しがっているのです』
「それは、NOね。私も不幸になる」
「だそうです。ルリさん」
『うわぁーーーん。僕もういじけちゃいますからね』
ルリは、部屋の片隅で体育ず割をしている。
『ル……ルリ!! それなら、お兄ちゃんがロケットパンチぐらいなら作ってあげますからね。ね』
『……うん……ありがとう。お兄ちゃん』
『うっルリのために、すぐ作りますね!』
ランショウセキは、スキップしながら設計図を書き始めた。
ルリは、上手く行ったぞと言わんばかりの顔をしている。
「さて、で本題は何なの?」
ラキは、世界の情勢とシマキリ国へ行くための武装をしたいと伝えた。
「なるほどね……。実はさ……ランショウが目覚めたのって20年前なのよ。私が10歳の時だった」
「20年!? 確か、ルリたちは一気に目覚めるはずじゃ……」
「ええ。そのはずなんだけどなぜか分からないの。もしかしたら、人形たちを目覚めさせることが出来る他の手立てがあるのかもしれない。正直、平和の基準なんて曖昧でしょ。私は、身分を隠してこの地下で暮らしているけど別に不満は持っていないし仕事もあって衣食住にも困っていない。毎日平和だなって思うもの。でも、毎日同じ作業させてこれもこの国が貧しいからだ。平和じゃないって思ったら平和じゃないじゃない」
「確かに、そうですね……。俺は、親友を止めたいんです。だから、お二人の力をお借りしたいです」
「良いわよ。シマキリ国に入国するための武装……いや、乗り物ならすぐ作れるわ。ただし、こちらも条件があるの」
ー条件……。一体何が……
プラネは、パソコンのデータを見せた。
「部品の納品リストですか?」
「そうよ。ここ数年工場で仕分ける部品が以前と変わったの。で分析したところどうやら上層部はこれを作っているみたいなの」
プラネが。表示した画像には、戦車や銃器などの戦闘武器が並んでいる。
「これは……」
「まるで、戦争を始めようって感じでしょ。そして、このリストを見て」
「これは……従業員のリストですか??」
大量の名前が並んでいるがその先に、休職の文字が並んでいる。
「この休職になっている職員を調べたら居住地に居ないの。それで、気になって内部データに侵入しまくったらどうやら城の地下に幽閉して戦闘員として教育していることが分かったのよ」
「これじゃあ……」
「戦争を始めるわね。確実に……。本当に何を考えているのかしら……」
「心当たりがあるんですか?」
「今の国王のヒバリ・ミサト。あの子、私の兄なの」
「兄!? でも、苗字が違いますよね?」
「ええ。兄は、ランショウセキを動かすことが出来なかったの。で、私は動かすこととができた。その結果、王位を継がせず親戚の家に養子に出したのよ」
「そのお兄さんが、何故今王位を……」
「私が、甘かったのよね。兄に、お前は、モノづくりに専念すれば良い。俺が、経済を回すって。それまで、兄と仲良くなくて。両親は死んでいたし唯一の家族だったから縁を切りたくなくてそれを了承したの。そしたら、翌日に私は死んだって民に報告してね。精巧に作られた私の人形を出して葬式されたわよ。私がいくら言っても偽物とか言われて国を追い出されたの。それから、どうにかしてこの国にプラネとして潜り込んで昔使っていた研究所を思い出してここに潜んでるわけ」
「そんなことがあったんですね。で、俺にしてほしい事って」
「私は、この国の女王に戻りたいの。この国は、兵器を作るための国じゃないの。みんなが楽しむことができるモノを開発する国なの。だから、それを手伝ってほしい」
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