第10話 機械都市サトミ国1

機械都市サトミ国は、頑丈な鉄の城壁で囲まれた国だ。工場からは、朝早くから煙が出ている。この国には、モノづくりの才能が優れている者が多く住んでいる。才能ある者たちは、起業し会社を作る。サトミ国の子会社みたいな扱いにはなるらしい。近年では、デジタル系にも手を出しており世界的な有名ゲーム会社サトミンもこの国の何処かに存在する企業だそうだ。


ーサトミ国入国審査場にて


「ラキ・サエグサ君とルリ・サエグサさんっすね。兄妹?」


「従妹です。身分証は、学生証で良いですか?」


「身分証は、要らないですよ」


「要らないって大丈夫なんですか?」


「ええ。国内あらゆる場所に監視カメラありますしうちとしては生産が追い付いていないので猫の手も借りたいぐらいなんっすよね」


「分かりました。出来れば、2人一緒の仕事が良いんですけど」


「承知っす。今、手が足りないのが部品工場なんでお二人にはそこで作業してもらうっす。けど、住み込みでってよほどお金に困ってるんすか? 若い人で住み込みって中々ないんすよね」


「俺、魔法学園の生徒でルリも来年入学予定だったんですけど、3カ月過ぎても復旧の目途が立っていないので暇だしお小遣い稼ぐかってなったんです」

サトミ国に入る前に必死に考えた理由をスラスラと答えるラキ。


「あああ。それは、大変でしたね。まぁ、妹さんもうちで出したばかりの新商品虹色カラコンをゲットするぐらい熱狂的なサトミ国ファンと見たっす! じゃあ、とりあえず1カ月更新にするっすね。部屋は、この建物を5階503号室っす。今日は仕事ないんでこの書類を読んでおいてくださいっす。注意点っす。契約期間内にサトミ国から出る事だけはNGっす」


「分かりました」


ラキとルリは、鍵を受け取ると部屋へと向かっていった。


『ラキ。入国は簡単でしたね』


「ああ。噂通りで助かったよ。注意事項を読んでおこう」


〇業務内容

・モミジ工場で、部品の仕分け作業又は組み立て作業

・1日8時間程度(1時間休憩)の週2日以上5日以内の勤務。

※部屋内に設置してあるパソコンから勤務可能日に丸を付け本日中に提出をお願いします

・日給10000円

・居住区で提供される食費、家賃は無料。※居住区以外での購入品は実費となります。

・契約期間内は、サトミ国から出ることは出来ません。出国したい場合は、離職願いの手続きをお願いします。


「まとめるとこんな感じか。その他もろもろ注意点とか書いてあるけどまぁそこまで気にしなくても良いな」


『しかし、全て無料ってすごいですね』


「ああ。それぐらい儲かってるんだろうな。で、兄貴は見つけられそうか?」


『この国に居ることは気配で分かりますが何処に居るかまでは……それに気になることがあるんですよね』


「ん?ここで話しても大丈夫な感じか? あらゆるところに監視カメラがって話だったけど……」


『先ほど、確認しましたが部屋内には何もしかけられてません。部屋から一歩でも出ればカメラだらけですね』


「まじか……」


『ええ。この国の王様の名前が、ヒバリ・ミサト』


「それがどうした?」


『ランショウ兄のマスターは、サトミ家の人なんです。昔は、そのサトミ家の人が王位を継いでいたのですが……』


「それは、少し気になるな……。もしかして俺みたいに独り身だったとか!」


『それはないです。サトミさんは、ラキと違ってめちゃくちゃイケメンでしたもん。子だくさんだったのでもしかしたら親戚が継いだとかかもしれませんね』


ルリは、ラキの言葉をバッサリと切った。


「ルリもう少し包んだ言葉にして」


『善処しますが難しいかもしれません』


「……さて、とりあえず、兄貴さん探す前にこの国で働いて色々探っていくぞー!!」


ー翌日

ラキとルリは、紅葉色の作業服を着こみ担当マネージャーに連れられて部品工場へ行った。


「こちらが、この部門のリーダーのプラネさんです」


漆黒の長い髪に、細い赤い瞳の女性がめんどくさそうに立ち上がった。


「どうも……」


「よろしくお願いします」


「プラネさんは、この部門を10年されているベテランさんです。仕事内容は、プラネさんに聞いてください。じゃあ、私は他の方の案内がありますので」

マネージャーは、そそくさとその場を後にした。


「私、プラネ。あなたの名前……」


「ラキです」

『ルリです』


「ラッキーとルリちゃんね……」


「俺、ラキですけど……」


「……ラッキーの方が合ってると思う」


「そうですか……」


「仕事……何日入る予定?」


「とりあえず、週3日から始めようかと思います」


「分かった……」

プラネは、ルリをじっと見つめた。


『どうかされましたか?』


プラネは、ルリの目の前まで顔を近づけた。


「それ、新作の虹色カラコン……大変だったのよね……付けてる子初めて見た……でも……あれ……ン……」

プラネは、早口でボソボソと話している。


「プラネさん。どうしたんですか!」


「ごめん……私、サトミの製品好きで……つい……」


「そうなんですね。しっ仕事教えてください!」


「あ……。うん。この部門は、流れて来る部品を全て仕分けしていく作業……このボタンを押すと部品が流れて来るから部品をどんどん後ろの箱に仕分け行く。不備があるやつは、この赤い箱に入れる。休憩したかったらこの停止ボタンを押せは止まる」


『これ、休憩しすぎたら部品沢山堪りませんか?』


「大丈夫……。この部門は20班ぐらいある。全員さぼればヤバいけどそれはないと思う……私、話すの苦手だからすぐ一緒に組む人移動願い出しちゃうから嬉しい」

プラネは、無表情のままそう答えた。これが、嬉しい顔なのかと思うぐらい一ミリも表情が変わらない。


「最初は、慣れが大事だから……流れて来る部品は5種類。1時間ごとに休憩取りながらで大丈夫。ラッキーは歪な部品を赤い箱に入れる。ルリちゃんは、この四角の部品、その他は私が仕分けるからそれで行こう」


「俺が、1番簡単そうな作業で良いんですか?」


「うん……。ラッキーは、不器用そうだから……。それに慣れてきたら、ラッキーには貯まった箱を隣の部門に運ぶ作業をしてほしい」


「分かりました」


こうして、サトミ国での労働が始まった。


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