第9話 そして旅に出る3

ラキとルリは、ジョーミヤ町に着いた。シチロウの家からジョーミヤ町までは2時間ほどの距離がある。車の運転免許を持っていない。そもそも、車すらないので話し合った結果移動速度をあげる魔術を習得することにした。そのおかげで、2時間の道のりをわずか30分で駆け抜けることが出来た。


「おや? ラキ君とルリちゃんおでかけかい? よく、ここまで徒歩で来たね」

マエダ商店の女将さんが声をかけた。


「学校、休みになったから爺ちゃんに修行させられてたんだ」


「あら。そうなの。 ルリちゃん麩菓子いる?」


『はい! 頂きます!』


月に1回生活品を配達してくれるマエダ商店の女将さんにはすぐルリの存在がばれてしまった。その歳、シチロウが「ソウメイの妹の娘さんだ。治安がわるくなってきたからここに疎開させてきたんじゃ」と説明するとすんなり理解してくれた。球体人形は関節さえ見せなければ人形とは分からないだろう。本来は、食事も別にしなくても良いらしいがルリはこの世界の食べ物に夢中である。ソウメイが、金色の髪をしているため疑いもされなかった。ラキは、母親譲りの黒髪である。


「ルリちゃんじゃん。 てか、そのカラコンまじ羨ましい~。お母さん、あたしも虹色の方欲しい~」


店の奥から、女将さんの娘のサクラが出てきた。商業系の大学に通っている。愛されキャラでこの町のアイドル的存在である。


「あんた、この間ピンクが良いって言うから買ってあげたでしょ。欲しいなら、店手伝いな」


サトミ国の開発商品、カラーコンタクト。色々な色が出ていて最近虹色のカラコンが発売されたそうだ。そのおかげかルリは全くもって怪しまれていない。


「ええええ。店出るのだるいから配達ぐらいな行っても良いけどぉ」


「そう? じゃあ、ヤマダさん家とノダさん家にこれ配達してちょうだい」


「おっけー。てか、ラキって本当ラッキーだったよね。あたしなんてあの日偶々遊びにってて電車乗れなくてまじ最悪だったもん」


「大変でしたね」


「で、2人はどっか行くの?」


「サトミ国にバイトしに行こうかなと」


「まじ!? 羨ましい~あたしも行きたい~」


サトミ国へ行くための理由を探していた時に、偶々サトミ国のバイトを見つけたのだ。工場の仕事らしい。


「あんたは、家の仕事しなさい。でも、今、物騒よ、2人で大丈夫なの?」


「はい。爺ちゃんの修行も飽きてきたし学校も戻れないのでお金稼ごうかなって」


「そうなのね。気を付けて行ってらっしゃい」

女将さんと別れると二人は電車に乗った。あの事件から、3カ月が過ぎていた。

帝国は、沈黙を貫いているが帝国が所有する軍や施設などの襲撃事件は起きていた。

武装組織の名前は【ブルーム】才能特化の考えを廃止し自分の行きたい道を進むべきだという思想の持主の集団だ。若者を中心にこの思想に賛同する者が多く組織は大きくなっているそうだ。ブルームは、現在の世界をまとめている帝国に対しこの考えを撤廃するように声明を出したが帝国をこの生命に対し何も言わなかった。そのため、武力行使が始まったのだ。そして、シーバ国もまた自分の国が中心となるために虎視眈々と狙っているのではないかという噂まで出ている。サトミ国は、モノづくりに特化した国でそんな情勢を気にも留めないで新作ゲームや新作のアイテム発表している。


『マスター……ラキ。予定だと、4時間後にサト国到着予定ですね』


ルリは、正体を隠すためにマスター呼びを止めるようにラキに言われたがまだ慣れないらしい。


「そうだな。交代で眠るか」


『私は、大丈夫ですよ。ラキは、力温存のため休んでください』


「分かった。何かあったら、すぐに起こしてくれ」


『分かりました』


ルリは、静かに窓の風景を見た。たった数百年でここまで進化した世界に見とれてしまう。特に、電子機器には驚かされた。この機器を生み出したサトミ国に行くのが楽しみにさえ思えていた。正直、兄には会いたくないが今度こそ、本当の平和を目にして眠りにつきたい。

平和とは、一体なんなんだろうか。世界が平和がもちろん良い。でも、自分の国だけが平和も平和だ。1日平和に過ごせればそれも平和だ。自分たちを作り出し父は何を求めて自分たちを創ったのだろうか。ラキの寝息が聞こえてくる。まぁ、この時間が今一番の平和なのだろうとルリは思った。

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