第6話 ルリラズリ

「これが、今までの歴史じゃ」


「なるほどな……。でこの子がその最強の魔術人形ってことなんだな」


『はい。その通りです』


「うぉ喋った!!!!」

ラキは、仰け反った。棺桶で眠っていたルリラズリはゆっくりと起き上がった。虹色の大きな瞳が見開いている。


「って目覚めたってことは……」


『はい。他の兄姉たちが目を覚ましたみたいですね』


「ってことは、戦争が始まるって事かよ?」


「その可能性は高い。今はどの国も発展しているから大戦争になるかもしれんのじゃ」


「大戦争!?」


「コンゴウを所持しているシーバ国は武術にさらに磨きをかけ肉体強化の術に優れた国となった。前回の戦いで負けておるから闘志を燃やしておるじゃろう。コンゴウの手によって大被害を受けたモルガン・スファレライト・シャリンを所持している氷の都シマキリ国は誰も寄せ付けない豪雪で覆われた都市と発展した。機械に発展した国サトミ国のランショウセキは行方不明だが、近代的な武器をい所有していると言う。そして、魔術の才に優れた者たちが集まるキサミヤ帝国は、7体の人形のうち最強の魔術剣士であるランギョクが居る。どの国も自分の国の平和を守るために戦うだろうと言うのがソウメイからの情報じゃ」


ソウメイ・サエグサは、ラキの父親である。ナナコの死後、5歳のラキを祖父に預け世界の情勢を知るために旅に出た。ソウメイは、婿養子だ。炎の魔術が使える。


「父さん!? 生きてたの?」


「ああ。ソウメイは、各国の情報探るための旅をしている」


「そうだったのか!」


「あいつは、元々幸運体質だから上手くやっているだろう」


「元気ならそれで良いや。で、爺ちゃん俺は何をすればよいの?」


「……先も話したが、わしらの幸運術は受け継がれていく。つまり、今はラキが幸運の術を使用することが出来ルリラズリの術者ということになるんじゃ」


「俺が!? この子の主ってこと?」


『そうです』


ルリラズリがにこりと笑った。


「このまま行けば、かつてない程の被害を被るだろう。それは防いでほしい。幸運の魔術は最強の能力ではあるが……」


「ネガティブな事考えたら使えなくなっちゃうんだっけ? だったら、俺すげー向いてる魔術だよな。良いよ。爺ちゃん。俺にしか出来ない事なんだろ? だったら、俺がその喧嘩止めてやるよ!」


「すまん……。では、すぐにでもその封を解いてやろう」

シチロウが、呪文を唱えた。すると、ラキの身体が輝きすっと消えた。


「おおお。なんか、力が湧いてくる気がする!」


『マスター。そのまま僕のこのクローバーの宝石に触れてもらえませんか?』


「おう!」


ラキは、クローバーのネックレスに触れた。すると頭の中にルリラズリの声が響いた。


ーラキ・サエグサ。僕は、もう7人兄姉の争いを見たくはありません。僕たち兄姉の平和も僕は望みます。僕の力になってくれますか?


「おう! 世界もお前らも全員面倒見てやる!」


ーありがとう。では、僕と契約をしましょう。僕の事はルリと呼んでください


四葉のクローバーの紋章がラキの中へ入っていく。そのままラキは意識を失った。


◇◇

3時間後

ラキが、目を覚ますと心配そうにルリが顔をのぞき込んでいた。

「うわぁあ。びっくりした」


『すいません。マスター』


「てか、ルリ。お前その服……。てか、女の子!?」


ルリは、セーラー服に短パンを履いている。フリルがたっぷり付いている。


「目が覚めたか。この服は、ナナコが作った服の一つだ。ルリに選ばせたらこれが良いと言ってな」


「そう言えば、母さん縫物上手かったような……」


『とても着心地が良いですよ。あと、性別は秘密です』


「……」


『そう言えば、この小さな機械が何回も音を鳴らしていました』


ルリは、スマホをラキに渡した。10件ほど同じ寮生のタスクから電話がかかっている。


「ちょっと、かけなおすわ」

ラキが、電話をかけるとすぐにタスクが出た。


「ラッキー! やっとかかった」


「おう。どうしたんだ?」


「大変だったんだよ! ほら。ラッキーが仲良くしてる生徒会長のヒムロ。あの人が暴動起こして魔法学園が吹っ飛んだんだ。


「はぁ? 魔法学園が吹っ飛んだ!?」


ラキが声をあげるとシチロウがすぐさまテレビの電源を付けた。

そこには、半壊した魔法学園の校舎が映し出された。ルリは、テレビを不思議そうに見ている。


「まじかよ……」


「ああ。休日で校舎内は数名の教員しかいなかったからけが人は居ない。俺も寮で過ごしてたんだけどいきなりどーんって大きな音がして窓見たら学校が壊れててさ……。寮生は、みんな実家に帰るように通達来て俺も荷物まとめて電車待ちだよ。まじ、ラッキー付いてるよ。避難する人だかりで電車満員でいつになるやら……」


「でも、なんでツバキが……」


「俺にも分からん。お前なら何か知ってると思ったんだが……」


「いや、俺は何も……」


「そっか。ヒムロと仲良かった人たちとか尋問されてるらしいからラッキーは本当に良かったよ。わりぃ。実家から電話だ! もしかしたら迎え来てくれるかも。学校から連絡あるまで休校らしいぜ。じゃあな」


「ああ。ありがとう」


「もう、戦争が始まっているのか……」


『いえ。これは、兄姉がやった感じではありませんね。兄姉なら、この建物周辺を全て壊してしまうでしょう。ですが、この威力。凄い力ですね』


「……シラヌイか……」

ラキは、ヒムロに連絡をした。出ないだろう……。だが何故こんな事をしたのか。

頼む。出てくれ……。


「ラキか?」


出た!!


「ツバキ。どういうことだ! あれをやったのはツバキなのか?」


「そうだよ。どうもこうも……。ずっと思っていたんだ。才能重視の世の中に不満を思っていた。やりたいこともできない。そんな僕の考えと意気投合する方を見つけってね。この世界を変えてやろうと思ったんだ。良かったら、ラキも一緒にどうだい?」


「何言ってるんだ! もしかしたら、人が死んでいたかもしれないんだぞ!」


「誰も居ない日を選んだし、威力も弱めたよ? それで死んでしまったら仕方ないことじゃないかな?」


「仕方ないことなんてない!」


「いや、仕方ないことばかりじゃないか。魔術の才能があるから好きな事も仕方なく諦めなといけない。仕方ない事だらけの世の中じゃないか」


「それでも! 誰かを悲しませることはおかしい」


「そうかな? 僕たち一緒の考えだと思っていたけど違うみたいだね……」


そう言うと、ツバキは通話を切った。


「おい! ツバキ!! 切れちまった。爺ちゃん。俺すぐに学園に戻る」


「それは止めておけ」


「なんで!」


「ラキ。お前は、そのツバキという少年に勝つ未来は見えているのか?」


その言葉を聞いてラキは静止した。ツバキは、学園内で1番強い魔術師だ。

卒業後は、帝国魔術団に入段も決まっている。


「……そもそも、まだ魔術の使い方も分かっておらんだろ」


その通りだ。ラキは、魔術の構造は学んでいても使い方は学んでいない。


「わりぃ。爺ちゃん。俺、ツバキには勝てないわ。でも、ツバキを止めたい」


シチロウは、ラキの頭を撫でると立ち上がった。


「まずは、ラキの魔術の適性を見てみるかの」


「適正って、なんか機械でやるやつだろ? そんなもんうちにあるの?」


「ほれ」


シチロウは、古びた魔力適正機をラキの前に持ってきた。


「ここに、手を置くだけだ」


ラキが、手のマークの所に手をかざすとクローバーの紋章が手の甲に浮かび上がった。

「うちの家紋だ。元は、ルリの紋章なんだがな」


すると、鈍い音を立てながら機械から紙が出てきた。


「これ、古代文字じゃんか。俺苦手なんだけど……」


「ふむふむ……。これは……」


『すごいです! マスター!』


「何が凄いの!?」


シチロウは、紙を見せた。


「さっぱり分からん……」


「まず、この突き抜けてるのが幸運の魔力値だ。それに加えて光と火の魔力値が半々ずつ。つまり、これは光炎の魔術を取得できる」


「確か……魔術って1人1属性が基本だったよな」


『そうです。だから、凄いんです。まさに、ラッキーです』


「鍛錬次第ではかけ合わせの魔術を習得できるのぉ」


『ツバキさんもおそらく2属性持ちですね』


「ツバキは、確か風属性って言ってたけど……」


『風と雷の属性持ちと思います』


「なんで分かるんだ!」


『僕たちの瞳には、魔術探知の宝石が埋め込まれているんです』


「テレビを通して探知したってことか」


『その通りです。魔術を使って間もなければ探知可能です』


「って、ことは俺も探知されちまうじゃん」


「その通りだ。だから、その溢れ出てる能力を制御する魔法を学ぼうかの?」


シチロウが、満面の笑みで逃げようとするラキを捕まえた。


「わしは、呪術の才能がある。見てみろ。すこーしだがわしの才能も受け継いでいるみたいだし制御術ぐらい学べるだろ?」


『マスター!! 僕は光魔術を伸ばしてみてはいかがでしょうか? 光の魔法の超上級魔法で創造を取得できます! この創造の魔法でアイテムを創って僕をカスタムしてください!』


この日から、数カ月間地獄の修行が始まる事をラキは予感した。

修行の話は、また追々……。


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