第3話 7体の魔術人形
幼い頃から、危ないと言われ入ることのなかった離れの古びた倉庫。
古びていて今にも崩れそうな見た目から本当に危ないと思い入らなかった。
ラキの祖父のシチロウは、古びた鍵を差し込み扉を開いた。鈍い音が響く。
薄暗い倉庫内には、埃被った壺や書物などが置かれていた。ラキは、近くにある壺に触れた。
「あれ?」
手がすり抜けて壺に触れない。他のものにも触ってみるが同じ現象が起こる。
シチロウが、蝋燭に火をつけ扉を閉めた。
「これは、ご先祖様が施した幻術だ。余程の術者じゃないと見抜けないと思うぞ」
「幻術!? じゃあ、爺ちゃんの才能は幻術ってこと?」
「いーや。わたしにはそんな才はない。わしらの才は、家系的な能力だから決まっている。その能力は、受け継ぐ者が現れたら喪失する。つまり、今のわしは少し魔術が使えるただの爺さんじゃよ。」
「受け継ぐって……」
シチロウは、こっちだと言いラキを倉庫の奥へ促した。奥には、バカでかい本棚が並んでいる。本棚は、幻術ではないようだ。シチロウは、ささっと本を抜き取り入れ込んだ。すると大きな音を立てながら本棚が動いた。シチロウは、スタスタとその先に進んだ。ラキもその後を付いていく。
「わしの能力は、お前の母さんナナコが受け継いだ。そして、お前が生まれその能力はお前に受け継がれた」
「俺!? でも、俺何にもできないよ?」
「お前が、小さい時に封じたからだ。それでも、封じきれずに溢れてしまっておるがな」
「もしかして、運か……」
「そうだ。わしら一族は幸運を魔術とする一族だ」
「まじかよ! すげーレア枠だぜ。だって、幸運って最強の魔術じゃん」
幸運の魔術は、都市伝説。想像上の魔術と言われている。なぜなら、最強すぎる魔術だからだ。
「そうだ。自分より格上の相手だとしても勝つことができる。死さえも防ぐこともできるだろう。ただ、デメリットがある」
「デメリット?」
「幸運の魔術師は、マイナスな思考はしていけない」
「マイナス??」
「格上の魔術師に挑むとしよう。もし、勝てない未来を考えてしまったら魔術は発動しない」
「つまり、悲しんだりネガティブな事を考えた時点で負ける」
「最悪、死ぬ。その葛藤からこの才を手放したいがために子を産む者も居たし人と関わらぬように森の奥に住むにしたのじゃ」
「だから、こんな山奥に家立ってるんだな。俺生まれた時から既にぽつんと一軒だったじゃん」
「わしは、この才に抗うために封術の研究をした。ナナコが生きている間には完成しなかったがラキにはその術を完成しお前の幸運を封じることが出来た……本当は、このまま封じたまま時を過ごしてほしいと思っていたんじゃがお前には、才能なしという窮屈な思いをさせてしまったが幸運な魔術の才が分かればお前はこの国の魔術研究所に連れて行かれ戦争の道具となっていたかもしれなかったから」
シチロウは、俯いた。才能がないと言われ続けていた孫を不憫に感じていた。でも、一人娘が残した孫を失いたくはなかったのだ。
「そっか。俺のために思ってくれたんだろう。あんがと。そのおかげで俺は今も普通に過ごせてるわけだし! でも、その言い方だと封印を解かないといけなくなったんだろ?」
「その通りじゃ。その理由を話す前にこの魔術人形を見てほしい」
シチロウは、朱色の扉を開いた。そこには、古びた棺桶のようなものが中央に置かれているだだっ広い部屋が現れた。
「ひっ棺桶!?」
シチロウは、その棺桶のふたを開いた。するとそこには、金色のおかっぱ髪少し長い髪は三つ編みにしている。関節を見ると球体になっている。胸には、クローバーの大きなネックレスが付けてある。
「球体関節ってかなり古い魔術人形じゃないのか?」
「そうじゃ。この魔術人形は、魔術人形を最初に作りだした人形師キョウゴク兄妹が創り出し最強の7体の人形。第七人形のルリラズリだ」
「ルリラズリ? ちょっと待ってくれ。爺ちゃん。俺頭いっぱいになってきた」
「何故、お前を呼んだのか。封印を解くことになったのか。ルリと合わせたのか。まだ理解できんよな。少しばかり昔話を聞いてくれないか」
シチロウは、語りだした。
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