第2話

「うそだろ?犯人って?俺達の中に犯人がいるのか?」

「犯人というか、そいつだけ俺達とは違う記憶、景色を見てるってこと。たぶん、何かを知ってると思う。」

そして、ユウトは順番に説明してくれた。

「まずは最初の違和感、入学式の桜の話。ここでポイントなのは、『幸運の桜』と、たぶんケンタが言った『四つ葉のクローバーかよ。』っていう言葉。高校の桜の木ってどんなだったか覚えてるか?」

「どんなって、ソメイヨシノっていうの?普通の桜だよ。」

「そう。八重桜と言われる桜の種類とは違い、一般的な桜の花は花弁の数がなんだ。」

「ああ、そうだよな。だから誰かが『俺達みたい』って言ったんだよ。俺、ユウト、ソウ、ケンタ、カレン。5人がいつも一緒にいるって意味で。」

「でも、それだと『幸運の桜』と『四つ葉のクローバー』という言葉に違和感がある。」

「まあ、そう言われればって感じかな。」

「カイト、四つ葉のクローバーってなんで幸運って言われてるんだっけ?」

「そりゃ、普通は三つ葉のクローバーなのに、稀に四つ葉のがあるからだろ?」

「そうだ。じゃあ、5枚の花弁の桜の花は四つ葉のクローバーと言えるかな?」

「・・・」

「仮にこう考えれば辻褄が合う。その花の花弁はだった。」

「えっ??でもそれだと、5人だから『俺達みたい』ってのに矛盾しないか?」

「そう。だから、俺達は5人じゃなかったんだ。6人目の仲間がいたんだよ。」

「はあ?」

「俺も信じられないけど、もしも俺が想像してる、そんな力があるとしたら全ての矛盾はなくなる。6人目を消した『削除する力』があれば。」

「じゃあ、海に行った日のことも?」

「ああ、全て説明できるよ。ミニバンにはカイトの親父さんと俺達6人が乗っていた。ただし、6人目の映り込む記憶は全て削除された。これで皆の証言がバラバラなのも説明できる。カイトは助手席に座ってたんだよな?」

「うん、そう。」

「カイトは俺達と話する時、後部座席に向かって振り向いたんだ。そうすると自然と6人目が視界に入ってしまう。6人目の映り込む映像記憶が全て削除された結果、運転席の親父さんしか記憶に残らなかった。」

「じゃあ、他のやつは?」

「まず俺は、あの時カイトの真後ろの席にいた。おそらく6人目は3列目の俺の真後ろにいたんだろう。俺からはその他全員を6人目が入り込むこと無く見れたんだと思う。俺の記憶と他のやつの証言も当てはめてみると車の座席はこうだった。」

そう言うと、ユウトはノートに書いた簡易的な座席表を俺に見せる。運転席に父、助手席にカイト、2列目に左からユウト、ケンタ、カレン。3列目に左から⑥、ソウと書かれていた。

「大富豪は?」

「その記憶が決定的なんだ。6人目が確実にいたと証明している。」

「どこが?」

「まず俺達は3列のシートを回転させて6人席を作ったんだよな?」

「そうそう。トランプしやすいようにね。」

「で、トランプを捨てる場が無いから誰かのカバンを真ん中に置いて、そこに出していった。でも、仮に5人だったら、そんな事をするか?」

「あ!わかった。どちらか片側3席のうち、真ん中は座らずに、そこを捨て場にするかも。」

「そうなんだ。このとき、この6席は全て座っていた。だからカバンを使わないといけなかった。」

「たしかに。でもちょっと確証には少し弱いかも。」

「俺が確信したのはそこじゃない。カイトはトランプを何回も配ったんだろ?」

「負けまくったからね。」

「その時、トランプは『全員に同じ枚数』配ったんだよな?」

「そうだよ。インチキとかしてないよ。今更、文句かよ。」

「ちがうよ。ポイントは『同じ枚数』ってとこだ。でも、それだとおかしいんだ。トランプ一組は13✕4の52枚。5人に配っても、同じ枚数にはならない。ジョーカーを3枚入れれば割り切れるけど、普通3枚も入れないし、市販のトランプにジョーカー3枚は入ってない。あり得るパターンはジョーカー2枚を入れ、6人に配った時なんだ。」

「ユウト。お前、天才か!本当だ。絶対に6人目いるじゃん。で、犯人は誰なんだよ。」

ユウトは時間が経って水滴のついたドリンクカップを手に持つ。そして、ストローで一口飲み、喋り続けた喉を潤した。

「証言に違和感のある、明らかに俺達と違う記憶を持つアイツが犯人さ。」

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