埒外の殺人
@richigisyanokodakusan
第1話
「おーい。大丈夫か?」
「ゆっくりでいいからな。」
「もし大丈夫なら俺が書いたこれ、読んでくれ。」
「もしかしたら、これから知る真実は受け入れ難い内容かもしれない。少しずつでいいから、最後まで読んでくれ。俺は君の味方だ。」
【自己紹介】
とりあえず俺を信じて読み進めてくれて、ありがとう。まず、何から書こうか考えた。照れくさいけど、やっぱり自己紹介はしないとな。この文章を書いている俺、俺の名前はカイト。
【2年前】
「暖かな春の日差しに包まれ、校内の桜も皆さんを歓迎するかのように満開の季節を迎えました。本日はご入学おめでとうございます。」
そんな校長の式辞で俺達の高校生活は始まったんだ。
俺達は同じ公立中学校に通い、同じ高校を受験して、皆めでたく合格した。まあ、学力的には中の下の高校ってとこかな。俺なんかは上の高校を狙える頭はなかったから、狙い通りって感じ。ユウトはもっと上を狙えたと思うんだけど・・・。あっ、ユウトってのは俺の小学校からの親友な。
ユウト、
あとは、小6の時に転校してきて、それから一緒のソウ。本名は大村奏。中学1年から一緒の学校になったケンタ、北川健太郎。で、俺とユウトと小1から一緒のカレン、宮下花恋。これがいつも一緒にいるメンバー。簡単に紹介すると、ソウは俺達の中ではリーダー的存在で、ケンタはツッコミ役、カレンは不思議ちゃん天然キャラって感じ。
ここからが本題なんだけど。今、俺達は高校2年がもうすぐ終わる2月。その約1か月前。ふと、これまでの高校生活の思い出を振り返ってみたんだ。そしたら、その
【違和感のある記憶①入学式】
入学式が終わったあと、俺達は校内にある桜の木の下に集まって写真を撮ったんだ。
「きれ~い。」
「完全満開だな。」
「なんだよ、完全満開って。」
「えっ!あれ見て。」
「なになに?」
「これは幸運の桜だな。この花弁、俺達みたいだ。」
「ああ。そうだね。」
「私、これ持って帰ろ。」
「四つ葉のクローバーかよ。」
「じゃあ、皆集まって。写真撮るよ。」
こんな会話があって、カレンはその花弁を持って帰ったんだけど。この思い出を思い出そうとした時、ところどころ、どうしても思い出せない部分があって。満開の桜はなんとなく覚えてるんだけど、肝心の集合写真を撮った記憶が消えてるんだ。
【違和感のある記憶②高1夏休みの出来事】
高1の夏休みに皆で海に遊びに行った思い出なんだけど。少し遠い海水浴場に行こうってなって、うちの車に乗って行くことになった。その前の年に両親が新しく買った新車で、両親と兄弟3人、あと祖父ちゃん祖母ちゃんが乗れるようにミニバンにしたんだ。その車に皆乗って海に行ったと思うんだけど、なんか車の中での記憶が消えてる部分があって。運転してたのはうちの父親で、俺が助手席だったんだけど。後ろに乗ってるはずの、あいつらの記憶が一切ないんだ。2列目、3列目を振り返って話したりしたと思うんだけどな。不思議で父親に聞いても、俺しか乗ってなかったって言うんだ。でも海水浴場で皆で遊んだ記憶は残ってて。父親は、「現地集合だったんじゃなかったっけ?」って、父親も記憶が曖昧らしい。
【違和感のある記憶③修学旅行】
高2の秋に行った修学旅行の行きの新幹線の中の話で。学校でその車両は貸し切りだったし、3列のシートを回転させて6席にして、いつものメンバーでトランプをしたんだ。やっぱり大富豪だろって誰かが言って、大富豪をすることになった。でもトランプを捨てる場が無くて、誰かのカバンを真ん中に置いて、そこにトランプを出していくことにした。これも不思議で、トランプを配ったり、自分の手札のトランプの映像の記憶はあるけど、メンバーの記憶はあったり、なかったり。途切れ途切れで。トランプやったのは確実。俺がど貧民になることが多かったから、何回もトランプをくって、配った記憶がはっきりあるし。ちゃんと全員に同じ枚数配って、毎回、「ジョーカー」とか「2」を大富豪に渡してたから。全然、貧民から抜け出せなかった。
他にも記憶が曖昧なところは、この2年間でまだあるけど、特に気になるのはこんなところ。あと不思議なのが、中学2年生のときの、俺、ユウト、ソウ、ケンタ、カレンの集合写真はあるのに、中学3年生以降の集合写真が無い。あるのは、いつものメンバーのうちの2名ずつや3名ずつといった全員では無い写真ばかり。集合写真も撮ってるはずなのに。
ここまで違和感を書き出したけど、俺の頭では謎が解けそうになかった。それで俺は、このことをユウトに相談したんだ。ユウトとマクドナルドに行って、書き出した違和感を説明したのが高2の冬休み。
【高2の冬休み】
「・・・ということなんだ。どう?ユウトの記憶も同じ?消えてる部分がある?」
「たしかに。過去を振り返ってなかったから気づかなかった。まずは入学式だけど、ここは俺もほぼ同じかな。カレンが桜の花弁持って帰ってたな。カイトと見てる角度が違うだけで、記憶の違いは無いと思う。でも変なのは次なんだ。」
「えっ?」
「海に行った車の記憶なんだけど。俺の記憶では全員、車に乗って海に行ってるんだ。ぎゅうぎゅうで狭かった記憶がある。」
「えっ?ええっ?どういうこと?」
「今の段階では俺もわからない。ただ、俺達の記憶が一部削除、もしくは書き換えられてるってことは間違いないと思う。」
「??意味が・・・わかりません。」
「俺もそんなことがあるなんて信じられないけど、誰かが都合の悪い部分を消そうとしているのかも。」
「俺の頭ではついていけん。」
「まあ、あくまで俺の仮説だから。あと修学旅行の記憶は俺もだいたい同じかな。あのさ、カイトと俺で記憶が違う車の件、他のやつにも聞けないかな?」
「じゃあ、グループラインで聞いてみるか。」
「いや、俺の仮説が正しいとすると、グループラインはダメだ。それぞれ別々に聞こう。」
それから俺達は「海に行った日の車の記憶」を他のメンバーのソウ・ケンタ・カレンにそれぞれ聞いてみた。その結果が次の通り。
ソウの証言「うーん、なんか記憶が曖昧だけど。ユウトって乗ってたっけ?」
ケンタの証言「えっ!なんで今さらそんな事を?皆いたじゃん。席全部埋まってたし。」
カレンの証言「海行った日?車の中?どうだったっけ?忘れちゃったかも。ソウいたっけ?」
マクドナルドで謎を推理しだしてから1時間が経ち、セットのポテトも食べ終え、ドリンクも飲み終わってしまった。そのまま席を使い続けるのも気まずいので「追加でドリンク2つ買ってくるわ。何にする?」と言って席を立った。まあ、本当は、他のメンバーの証言を聞いた途端、ユウトが持っていたノートに色々書き出して。邪魔しちゃ悪いし、俺は考えてるフリしかできなかったから。で、新しいドリンクをトレーに乗せて席に戻った時だった。
「カイト、違和感の正体がわかったぜ。あと、おそらく犯人もな。」
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