死んでやれ

あいつは何で自爆したのか。新聞を見たとき、分からなかった。最後まで足掻けよ。生きろよ。と、記憶の中のあいつを罵倒した。

 でも、今なら分かるよ。もうどうしようもなくなったとき、そんでもって愛している人に会いたくて会いたくてたまらないとき、その人に誇れる様な最後を迎えたいよな。

「分かるよ!」

 俺は眼前に迫った猿に向かってライフルを構えた。

 その時だった。

「あー! あのお兄さん!!」

 は?

 声のした方を見るとあの銀髪娘だった。

「は? いや、は?」

「『は?』じゃないよ! めっちゃ痛かったんだからね!」

 いや、痛いで済むレベルじゃなかった。断じて。

 だが、猿の相手で返事どころではない。俺は玉を無駄にしないよう、眉間に撃ち込んでいく。

「ねぇ聞いてる? まず謝るとかないの?」

 うるせぇ。声がデカい。

 ん?

 ていうか何で会話できている? さっきまで犬の鳴き声で自分の声すら聞き取りづらかったのに。

 猿たちを威嚇しながら、目線をしたに向けると、犬たちは『おすわり』していた。しかも、娘の方を向いて。

「おい、ガキ! 助けろ」

「はぁ!?」

「なんでもいい、どうにかしろ」

 自分でも情けない。さっきまで、死んでやるとか思ってたのに。

「あ、もうムリ。ほんとにムリ。帰ります」

 頭の中のどこかにいた自分が俺を冷笑する。

 そりゃそうだ。

 だが腹の熱い部分が死を受け入れきれていなかった。

「おい!」

 やつの声が遠退くのに比例して、また唸り声が大きくなってきた。

 まさか、こいつ、犬を操っているのか?

「ごめん、俺が悪かった」

 返事がない。

「殺してごめん!! 済まなかった」

 俺は声を張り上げた。と同時に、何かが溢れてきた。何か、ずっと溜め込んできた何か。

「殺したかったわけじゃない。ただ、俺は帰りたかったんだ。頼む。もうしないとか、言えないけど、でも。お前らのせいだとか、もう言わないから!」

 

「……分かった。降りてきて」

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