生き残って

 どうやって? 下は犬で埋め尽くされている。

 そう思っていたが、ちょうど真下にスペースができていた。

 隙を見て、飛び降りる。

 猿は追ってこない。どうやら犬の群れが怖いようだ。

 俺が歩き始めると、犬たちは道を開けた。その道はあの娘に続いている。娘は犬に乗ったまま、こちらを向いてる。顔は不機嫌そうな、決まりが悪そうで、目も合わせてくれない。

「……用は済んだかな」

「あぁ、まぁな」

「じゃあ」

「ま、待ってくれ」

「……」

「色々、ごめん。そんで助けてくれて、ありがとうな」

 少女は僅かに口角を上げて、すぐに引き締めた。

「うん。じゃあね、お兄さん」

「なあ、お前が俺のこと、治療してくれたんだよな。これ、どうやったんだ? あと、この犬たち、なんでお前の言うことを聞くんだ?」

「あのさ……まずは――」

 そうあいつが言いかけたとき、慣れすぎた戦慄が身体を走った。

 我が軍の偵察用ドローンが、2人を睨んでいたのだ。

「おい、逃げるぞ」

 娘も状況を察したのか、乗っていた犬を軽く叩いた。犬は想像したよりずっと速く駆け出した。

「いいとこ、知ってる。ついてきて」

 迷ったのは一瞬だった。俺はドローンを撃ち落としてから、全速力で後を追った。

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人魚の子 雨笠 心音 @tyoudoiioyu

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