第16話「え、えええ!?」
町長さんはカンナちゃんを俺の養女にと言ってきた。
「いやあの、なぜですか?」
そりゃ本人が望むならそうしてもいいが、そうでもなさそうだし。
「いえ、既にライラさんを養女にされているようですので姉妹二人、いえリオル君もココ君もいますから四人姉弟として……あと、やはり親がいた方がと思いまして」
「町長さんが親代わりじゃダメなのですか?」
「いや、私はどうも親になりきれない男ですので」
そんな事なさそうだがなあ。
「ってあの、もし養女にしたとしてもですよ、巫女姫様がいなくなってもいいのですか?」
「それは痛手ですが、カンナ様の幸せこそ大事です」
「お姉ちゃーん、わたし追い出されちゃうー」
「おーよしよし、酷いねー」
「へ?」
いつの間にかライラとカンナちゃんが部屋から出て来ていた。
「ああ、話聞いてたんだ」
「うん。わたしはここにいたいのに……やっぱ皆に八つ当たりしたから」
カンナちゃんが俯きがちに言う。
「い、いや違いますよ。できればずっといてほしいですが、それでよろしいのですか?」
町長さんが慌てて言うと、
「うん。チヤホヤされるからじゃなく、皆の役に立てるから。それにお姉ちゃんとはいつでも会えるから、一緒に暮らせなくてもいい」
今度は笑みを浮かべて言うカンナちゃんだった。
「どうするって聞いたら速攻でそう言ったよー。あーしは逆に悩んだのにー」
「お姉ちゃん、パパが欲しいって言ってたことあったから、ここに住まないと思ったよ」
「ちょっとは引き止めろー」
「言っても断ってたくせに」
「うー、そうだけどさー」
「はは。それじゃたまに行き来するようにしようか。今度からは瞬間移動魔法で来れるしな」
「うん!」
ライラが笑みを浮かべた。
「ハルスさん、ごめんなさい。後で皆にも謝る」
カンナちゃんが深々と頭を下げる。
「ええ……しかし最初はその、なんというか」
「のう、呼ばれて来たのに誰も出迎えんとはなんじゃい?」
いつの間にか杖をついたご年配のシスターが来ていた。
「あ、すみません。実は」
「おばーさん、カンナを診てあげて」
ライラがシスターに言うと、
「はいはい、大方の予想はついてますよ。まったくこの町長は、だからアタシをカンナ様付きにしろと言うたのに」
「いや、シスターは町の人達の診察や相談事で忙しいと思って」
「弟子もいるからそんくらい任せて来れるわい。ささ、部屋で診ますから」
そう言ってシスターは二人と一緒に部屋に入っていった。
しばらくして、
「アタシも付き人になったからな。カンナ様のご指名だから文句は言わせないでな」
シスターが町長さんに杖をかざして言った。
「ええ。あの、どうかよしなに。私ではどうする事も」
「それは分かるが気づくぐらいできたじゃろが。何も言ってこんからもう突撃したろうかと思うとったのじゃぞ」
「面目次第もございません……」
町長さんも大変だな……。
「ごめんなさい、どうしたらいいか不安だったのもあって、ついイライラして」
「うんうん。さ、この話はここまでにしよー」
ライラがカンナちゃんを抱きしめながら言った。
「うん。あの、今日は皆さん泊まっていってほしいです。お姉ちゃんともっと話したいから」
カンナちゃんもライラを抱き返しながら言う。
「いいよ。リオル君もココもいい?」
「うん」
「きゅー」
「正秀殿、それなら夕食後に一杯やりながら話しませんか?」
町長さん、いやハルスさんが誘ってきた。
「ええ、ではこの子達が寝た後で」
「おじさん、ぼく達の事は気にせず行ってきたら?」
リオル君が俺の手を引いて言ってくれたが、そういう訳にはいかないよ。
「あの、わたしの部屋の隣って書庫なの。面白い本いっぱいあるから、もしよかったらどれでも読んでいいよ」
カンナちゃんがそう言ってくれたので、そうさせてもらう事になった。
「しかしある所にはあるんだねー。孤児院や村には本なんて殆ど無かったのに」
「ハルスさんが集めてたんだって。未来に残したいからって」
先の事まで考えてたんだな、ハルスさんは。
そして皆で話ながら夕食を取り、その後はそれぞれ分かれてとなった。
「改めてありがとうございました。では」
ハルスさんと乾杯して、グラスの酒に口をつけたが……お?
「美味いですね。これってもしかして麦の酒ですか?」
ビールに近い味だし。
「ええ、ビールとほぼ同じものです」
あ、ビールはあるんだな。
「けどほぼって事は本物とは違うのですね」
「ええ。試行錯誤してやっとここまでになりました」
「え、これハルスさんが作ったのですか?」
「そうですよ。こっちにもあったのですが、知ってるビールとは違ったので」
へ? どういう事だ?
「単刀直入に聞きますが、正秀殿は異世界の日本から来られた人ですよね?」
ハルスさんがズバリと言った。
「は、はい。あの、そういうのって分かるものなのですか?」
「いいえ。普通は分かりませんよ」
「え、では何故?」
「それは私も異世界から、日本から来た者だからですよ」
ハルスさんがそう言……、
え、えええ!?
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