第17話「二度と会えないと思っていた者に会えた」

 ハルスさんもまた異世界転移者で、日本から来たって……けど。 


「ああ、私は父がアメリカ人で母が日本人のハーフでして、生まれも育ちも日本なんですよ」

 察して言ってくれた。

 それじゃ見た感じじゃ分からないわ。


「しかしもう二度と会えないと思っていた同郷の方に会えるなんて、人生分からないものですね」

 ハルスさんが嬉しそうに言った。

「それは俺もですよ。まだ来て三ヶ月程ですが」

「私は二十年です」

「うわ、大先輩ですね」

「ええ。あ、よければもう敬語やめませんか? 同年代でしょうから」

「あれ、ハルスさんって何歳ですか?」

 たしかに同年代に見えるけど、

「四十八歳ですよ」

「あ、俺の方が二つ上だ。けど気にせず」

「ああ。そうさせてもらうよ」


 その後、向こうでの事やこの世界での事を話しながら飲んでいた。


「へえ、こっちへ来て最初に会ったのがズイフウさんだったんだ」

「そうだよ。空見たらドラゴンやペガサスが飛んでるし、絶対違う世界だって思ってた時に声をかけてくれたんだ。あいつは当時十歳だった」

「そこから世話になった?」

「ああ。異世界から来たって言っても疑わず、自分が育った孤児院に案内してくれてそこで働かせてもらう事になったよ。しかしあの時は可愛らしい子供だったのに、どんどん成長していって終いには軍師格だもんな。ほんと我が事のように嬉しかったよ」

「息子さん、いや年の離れた弟って感じ?」

「そうだな。あいつが十三歳の時に統一軍にスカウトされてからは補佐役として部下に徹してたが、二人だけの時は元のままで話してたよ」

「軍師格だったのって、ハルスがいろいろ教えたからじゃないのか?」

「多少は役に立ったかもだが、殆どズイフウ自身の力だよ……ほんと大臣やればよかったのに、孤児院で戦災孤児の面倒見たいって。俺もそうしようかと思ったら英雄王様に命じられてこの辺りの領主にされたんだ」


「やっぱ英雄王様はちゃんと見てたんだな」

「そう思って嬉しくなって、あいつの分まで頑張ろうと引き受けたが……」

「疫病か。英雄王様もズイフウさんも無念だったろな」

「ああ……あのガキ、俺より先に結婚するのはいいが俺より先に逝くなよ……っとすまない」

 ハルスが潤んだ目を擦って言った。


「いやいや。そうだ、俺も微力ながら手伝うよ。特典もあるし」

「特典? 何それ?」

 ハルスが首を傾げた。

「え、ハルスは特典とか貰ってないの?」

「誰に?」

 また首を傾げる。

「……ああ、二十年前だったな。その頃じゃあまりなかったかもだから知らんか。あのな」



「へえ、今はそんなに異世界転移や転生ものの小説や漫画があるんだ」

「そうだよ。テンプレだと駄女神が出て来てお詫びに特典をだったりだわ」

「そうか。俺がこっち来る前にそういった小説は読んでたが、あれは後付けの力だったな。俺は魔法使えるようになったんでやはり後付けかな」

「俺も使えるよ。なんか魔法使いってよりゲームだと神官系だが」

「俺もってか一応正式な神官の資格も持ってる。けどやっぱあの小説みたく剣を使いたかったなあ」

「それ、どんな話だ? なんか知ってるのっぽいが」

「えっとな、ツンデレ魔法使いとそれの使い魔にされた少年の話だよ。あれ続き読みたかったな……」

 そう言ってハルスは項垂れたが、ああ。


「それうちに全巻あるぞ。今度貸そうか?」

「え? ぜ、ぜひ貸して! うううう」

 今度は泣き出しやがった。


「そこまでなるか」

「そりゃそうだよ。もう永遠にと思ってたのに、続きが読めるなんてって思ったらな」

「そうか。じゃあ全部読んだ後でまた飲みながら語……うう」

「なんで正秀も泣くんだよ?」

「い、いや。俺こんなふうに飲んで話したことなかったんだよ。だから嬉しくなってさ」

「お子さん達も言ってたが、そんなふうに見えないのだがなあ」

「その子供達のおかげだよ」

「なるほどな。さ、互いに嬉しいことあったんだから、今日はとことん飲もう!」

「おお!」




 翌朝、朝食の席では頭を抱えながらだった。

「うう、飲み過ぎた」

「久しぶりだよ、こんなに飲んだの」

 夜明け前まで飲んで話してたもんな。


「今日は二人共ゆっくりしたら?」

「だよね」

 カンナちゃんとライラがそう言ってくれた。

「ああ。そうだ、昨夜話してたんだけどライラとリオル君さえよければカンナちゃんと一緒に勉強しないか?」


「え、いいのー?」

「ええ。二人がいずれどんな道を歩むにしても、基礎が必要でしょうから」

 ハルスも続けて言った。


「うん、魔法使えるって分かったら勉強したくなったしー」

 ライラが笑みを浮かべて言い、

「そうか。リオル君はどうする? 他にも同年代の子供もいるって」

「うん、したい」

 リオル君も頷いた。

「きゅー」

「ココもしたいって」


「ええ。では手配しておきます」




 早速カンナちゃんと一緒に家庭教師の授業を受けることになった。

 俺達は後ろで見学させてもらっている。


「なあ、リオル君は元々それなりの教育を受けていたのか? あの歳で読み書きができる子は相当の家柄か、運よく周りに学のある者がいたかだぞ」

 どうやらこの世界の識字率は低いらしい。

 ライラはズイフウさんに習っていたからだろう、読み書きはできていた。


「お祖父さんとお父さんが魔法使いだって言ってたぞ」

「ああ、それなら分かる。しかしそれを抜きにしてもリオル君は頭がいいし、内に秘めた力も強いな」

「そうか。魔法全部契約できたから、いずれは大魔法使いになるかもな」

「……待て、今なんて言った?」

 ハルスが驚きの表情になって聞いてきた。


「え? いや大魔法使い」

「その前」

「魔法全部契約できた……え、もしかしてそれはあり得ないとか?」

「そうだよ。そんな使い手は統一軍にもいなかったぞ」

 な、なんだって?


「ほぼ全てならナンバー1の使い手で大賢者と呼ばれる女性がいるが、彼女も『自分でも契約できない呪文はあったよ』と言ってたからな」

「……じゃあ、何なんだ?」

「分からんが、とんでもない才を秘めているという事だな」

「そうか。まあリオル君がなんであっても、俺にとっては可愛い子供だよ」

「いいなあ、俺も養子貰おうと思った事あったけどさ、やはり自信持てなかったよ」

「そんな事ないと思うんだがなあ」


「あの、お話されるなら外へ出ていただけますか?」

 家庭教師さんがこっちを睨んできた。


 ……ごめんなさい。

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