第26話「皆いつかは巣立っていくが……」
その後、ハカタ町や都の町から少ないが移住者も来てくれた。
あとわずかに生き残っていた地方の人達も集まって来て、村が徐々に再建されていった。
リオルに言わせると元より凄くなっちゃっただそうだが。
そして二年が過ぎ、実りの時期。
「今年も豊作だな」
田畑には稲や野菜がたんと実っていた。
「うん、そうだね」
「人もいっぱい来たねー、村長さん」
リオルとライラも田畑を見ながら言う。
「はは、俺はリオルをと思ったんだがなあ」
このテンオウ村唯一の生き残りだし、どうやらお祖父さんがひいおじいさんの跡を継いで村長となっていて、いずれはお父さんがだったらしいし。
「父さんの方がいいよ。だってぼくはなれないんだから」
リオルが頭を振って言った。
「えー? あんたが跡継がなかったら誰が継ぐのよー?」
「お姉ちゃんが継いだらいいでしょ」
「あーしがそんな柄だと思うのかー?」
「お兄ちゃん、なんでなれないって思ってるの?」
ココが首を傾げて聞くと、リオルは顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「あ、分かった。あんたカンナが好きなんでしょー」
ライラがニヤつきながら言う。
「う、違うって」
バレバレだってば。
それにどうやら、カンナちゃんも。
最初はショタコンかと思ったが。
「まあ、あんたまだ十二歳だし、結婚できるのはあと三年先だよ」
カンナちゃんは十五歳になり、この前成人の儀式をした。
あの時はハルスが号泣していたなあ。
「う~」
おお、更に真っ赤にしてるわ。
「あー、あーしにも誰かいないかなー?」
ライラがそう言ってるが、結構言い寄られてるだろ?
「ねえ、どんな人がいいの?」
ココが気になったのか聞いたら、
「んー、そうだねー。美少年」
「あ、そうなんだ。父さんみたいな人って言うのかなって」
「パパみたいな人が他にいるかー。あー、もういっそココでいいかなー」
今のココは人間の少年そのものの姿。
神竜族は早くて七、八歳くらいで人型にもなれるって、そういえばご両親も幽霊とはいえそうだったな。
「ボク彼女いるし、お姉ちゃんは好きだけどお姉ちゃんだもん」
「ギャアー! いつの間にー!?」
ほんといつの間にだよ? と思ってたら、
「村長、お祭りの準備ができましたよ」
長い髪の女性が声をかけてきた。
「ええ、分かりました。すぐ行きます」
「はい。では」
女性は村の方へ歩いていった。
「アキコさん、元気になってよかったね」
リオルがその後ろ姿を見て言った。
アキコさんは二月前に家の前で倒れていた女性。
住んでいた村の人達がやはり疫病で全滅したので他でと思って旅に出て、やっとこの村に辿り着いたが、旅の疲れからか体調を崩してしまった。
幸いにも疫病ではなかったので家にあった薬と充分な栄養、休息で治った。
その後はこの村に住み、時々うちに来てくれて掃除や洗濯、たまに食事の支度もしてくれる。
そこまでしなくてもいいって言ってるんだが、させてくれって凄んでくるし子供達が喜ぶもんだからそのままお世話になってしまっている。
「さ、早く行こうよー」
「ハルスおじさんとカンナお姉ちゃんも来てるよ」
ライラとココが言ってきたので、皆で村へ向かった。
収穫祭が始まった。
まず亡くなった先住民の皆さんに向けて、感謝の祈りを捧げた。
そして乾杯し、後は歌や踊りを披露してくれる人に拍手を送ったりしながら飲んで話したりだった。
「私達は村長さん一家のおかげでこうして生きてられますよ」
村の人達がそう言ってくれるが、
「いえいえ、皆さんのお力あってですよ」
俺はさほどの事はしてないからな。
「何を仰いますか。大魔王を制してくれたじゃないですか」
「それは子供達がですよ」
一年前、村に大魔王を名乗る奴がやって来た。
聞いてもないのに自分からベラベラ喋ってくれた。
魔界から来たが勇者が邪魔だから真っ先に始末しに来たって。
そいつ曰くリオルこそが勇者だと。
驚きはしたがあれからスグル君と修行して上級魔法ができるようになっただけでなく、剣術も短期間でかなりの腕になっていたから、やはりかと思った。
そしてライラ、ココ、ちょうど来ていたスグル君やコノミちゃん、カンナちゃんとも力を合わせ、あっさり勝ってしまった。
俺とハルスはただ見ていただけだった。
ちょうど駆け付けたリナさんや元統一軍主力メンバーも「そんなバカな?」と呆然としていた。
後で聞いたが、あいつは相当強かったらしく決死の覚悟でやってきたのにだったらしいと、世界最強メンバーがそう言う程だった。
「倒したのはお子さん達ですけど、改心させたのは村長さんじゃないですか」
いや、あいつが泣きべそかいてたんで可哀想になって話を聞いたら、どうもあいつ魔界では誰にも相手にされなかったらしく、ここで一旗あげればと思ったらしい。
それで俺とハルスで身の上話をして、最後は飲み会となった。
「まあ、彼は元々根はいい奴で、どっかでああなったってだけなんでしょうね」
「物凄く感謝していたと聞いてますがね。あ、その彼から届いたお茶と豆も出しましょう」
彼はその後、東の方で魔族を集めて新たな村を作っていたのだが、その際に偶然大豆と茶葉を見つけたんだよな。
そのおかげで緑茶も飲めるし、豆腐に味噌に醬油も作れるようになった。
なんというか、彼が来なかったら見つけられたとしてもいつになっていたかだよ。
その後俺はチビチビ飲みながら皆を見ていた。
お、リオルがカンナちゃんと何か話してるな。
皆も微笑ましく、いやハルスだけは複雑な表情だな。
いずれはハカタ町に行くのだろうな。
ココは小さい子達と遊んであげてるみたいだ。
ほんと面倒見がいいな。
やはり大地を守る竜神様としてかな。
あ、ライラが若い男に言い寄られてる。
だが相手にしてないな。
けど、いつかは誰かと……。
「そうだな、いつまでも一緒にはいられないな」
巣立っていくのは嬉しいが、寂しさもあるだろな。
……その時はまた一人か。
訪ねては来てくれるだろうけど。
「どうかされましたか?」
アキコさんが話しかけてきた。
「いえ、子供達が巣立って行く時を想像してしまって」
「そうでしたか。もし私も結婚して子供がいたらそう思っていたのかもです」
そう言いながら俺の横に座った。
「いや、まだこれからでしょ?」
「私、これでも四十歳ですよ」
「え?」
嘘だろおい、もっと若いと思ってた。
「もたもたしてたら戦乱や疫病でどんどん人がいなくなってで、ずっと一人でした」
アキコさんが寂しそうに言う。
「……そうでしたか。俺はただヘタレなだけでしたから」
「そう思い込んでいたから、村長さんを好きになっていた人にも気づかなかったのかもですよ」
「そうだったら悪いことしたし、勿体無かったかな」
「ええ、今も気づいてないのですから」
「え?」
アキコさんの頬が赤くなっていた……。
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