最終話「また家族になろうな」

 幾年月が過ぎたある日。


 俺達は家の縁側でくつろいでいた。


「ふう……」

「あなた、どうしたの?」

「いや、あっという間だったなあと思ってな」

「ええ、そうですね。いろいろありましたね」



 あの半年後、俺はアキコと結婚した。

 しかしまさか惚れられているなんて夢にも思わなかったわ。


 というか俺もあれだよな。

 それに気づいた途端、だんだんと……だったもんな。

 こんなのでいいのかと悩みもしたわ。

 子供達は「早く母さんと呼びたいな」って待ってたみたいだったが。


 村の人達も集まって盛大に結婚式をした。

 ハルスは「裏切り者めえ」と冗談交じりに言ってくれたなあ。


 その後しばらくは五人暮らしだったが。



 リオルは十七になった時にカンナちゃんと結婚してハカタ町へ行った。

 それと同時にハルスから町長の座を譲られた。

 巫女姫様の婿で勇者でもあるからと。


 やがて俺達にとっての初孫もできた。

 ああ、孫を抱ける日が来るなんてと二人で号泣してしまった。

 ついでにハルスも号泣していた。 


 リオルもカンナちゃんも苦笑いしてたな、ごめん。


 そして二人は力を合わせて町を治め、更に栄えさせている。

 



 ココもその数年後、付き合っていた彼女と結ばれた。

 彼女はなんと神竜族族長の一人娘。聞いた時はほんと驚いたわ。

 

 神竜族って元々は島の中央部にいたらしいが、感染拡大防止の為にいくつかの部族に分かれ、島全体に散らばっていたがそれでも大多数がだったそうだ……。

 彼女は両親と一緒に方々の様子を見ていて、ココがいた森に来た際に出会ってだったって。

 それなら言ってくれ。


 あと疫病が収まったのと二人の結婚を機に、残った神竜族を中央部に集めて里を再建しようとなったそうだ。

 二人の結婚前に族長さんと会って話したら、ココは全てが申し分ない婿だがそれ故に「お前に娘はやらん!」ができなかったと冗談交じりに言ってたなあ。

 ああ、それできなかったのは俺もだわ。



 ライラの相手は……歳が五歳下なのはいい。

 驚いたのは彼が日本人だった事だ。


 俺達が結婚してしばらくした頃、彼が異世界転移してきた。

 聞けばほんと彼は幸薄い子だった。

 ネグレクトされていて高校にも行けなかったって。

 就職もできなくてバイトしていたが、要領悪かったみたいで長続きしなくて……。

 もう何もかも嫌になって川に飛び込んだら、この家の前にいたってところだ。


 彼も最初の頃は死にたかったのにだったが、皆で話したりしているうちにだんだんと生きる気力を持ってくれた。

 一番話してたのはライラだったな。

 だから彼は惹かれたんだろな。


 今は近所に家を建ててそこに住んでいる。

 そしてライラと彼が俺の跡を継ぎ、二人で村長になった。

 彼はものを知らなかっただけで、ちゃんと教えたらあっという間になんでもできるようになったんだから。




「……ふう、ひ孫の顔も見れたな」

「ええ。親になれただけでもありがたいのに、孫やひ孫もなんて」

「そうだよな、俺達ほんと幸せ者だわ」

「ふふふ。さ、そろそろ皆が来ますよ」


 俺は今日で百歳になる。

 この世界に来てから五十年。

 ほんと長生きしてるなあ。


 ただ、ハルスやゴリアンさんにズーネさんはまだ分からなくもないが、スグル君やコノミちゃんまでが俺より先になんて……。


「皆さんの分まで、ね」

 アキコが出会った頃と変わらぬ笑みを浮かべて言ってくれた。

「ああ分かった。さてと、祝われようかな」




 そして皆が来て、誕生日は大いに盛り上がった。 


 ああ、皆ありがとうな。

 ここへ来なかったら孤独死してただろな。

 こんないい家族に恵まれて幸せだよ。


――――――


 あれ、ここどこだ?

 真っ白で何もない。

 部屋にいたはずなのに。


 ……ああ、そうか。


「ええ。ここは現世とあの世の狭間です」

 いつの間にかそこに桃色の髪の若い女性がいた。


「お気づきでしょうけど、長い人生お疲れ様でした」

 たぶん女神様がそう言って頭を下げた。


 やはり俺は死んだのだな。


「あ、いえ。あの」

「なぜあの世界に送ったかですか?」

「ええ」

 理由はもういいかと思ったが、聞けるなら聞きたいし。 


「それはですね、正秀さんにお子さん達を守ってほしかったからです。もし皆さんが途中で倒れていたり道を見失っていたら、あの世界は滅びていたかもしれないですから」

「え、そこまで……いやリオルは勇者だしココは神竜、ライラはなんか勝手な肩書き名乗ってたな」

「魔法聖女ですね。天界でもそれいいなとなって、正式な肩書として認定されましたよ」

 女神様が笑みを浮かべて言った。


「はは、そうなんですね。しかし今更ですが、私でよかったのですか?」

「はい、正秀さんでないとでした。こちらも今更ですが、勝手に送り込んだ事をお詫び申し上げます」

 女神様がまた頭を下げた。

「あ、いえいえ。おかげでいい人生を送れましたからいいですよ」

「そう言っていただけるとです。さて、正秀さんにここに来てもらったのはですが、お礼を差し上げたいと思いまして」

「え、もう充分ですよ」

 これ以上何かなんて申し訳ないくらいだ。


「そう言わずに。正秀さんはそれだけの事をしてくださったのですから」

「そうですか……それで何をです?」

「はい。転生するか天国へ行くか、好きな道を選べる権利です。転生の場合はご希望があればその通りにしますよ」


 え?


「あの、それっていいんですか?」

「はい。本来は選べませんが、お礼ですから」

「それなら……」


 ……充分幸せだったけど心残りが一つだけあった、それは。


「あの、また同じ両親の元に生まれて、また妻や子供達と出会えるようにってのはできます?」


 父さん母さんに孫の顔を見せられなかったことだ。


「できますよ。ではそれでよろしいですか?」

「はい、お願いします」

「分かりました。あと記憶はそのままにもできますけど、どうします? 無くても今の思いは潜在意識として引き継げますけど」


「え、そうですね……はい、無しで」

 来たばかりの頃は転生無双にしてくれればとも思ったけど、もういいや。

 思いさえあればそれで。


「分かりました。それでは、新たな人生でも幸あらん事を」

 女神様が手をかざすと、体が浮き上がるような感覚に包まれた。


 しかし女神様、よく似てたな……いやもしかするとかな?




「……ほんとにありがと、正秀。おかげでもスグルも充分に生きて、こうなったわよ」




 その後は紫色に輝く道を飛び続けていたが、遠くに白い光が見えてきた。

 

 ああ、あれがそうなのかな?


 さてと、今度は最初から子供達をになるのかな。

 大変だろうけどしっかりやらないとな。

 ああ、その前にもっと立派な人間になっておくか。


 親孝行もたくさんしたいな。

 父さん母さんはもう先にいるんだろな。

 待っててね。

 



 そして皆、また家族になろうな。

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異世界転移して家族ができた 仁志隆生 @ryuseienbu

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