第25話「見守っていく」
「美味しい!」
「うわあ、また食べられるなんて」
スグル君とコノミちゃんが美味しそうに米を口に入れ、
「お米っていろんな料理になるんだよ」
リオルも食べながら言い、
「わたしオムライスがいいな。ハルスおじさんの知恵で養鶏場もできつつあるし」
カンナちゃんは前にハルスと作ったオムライスがお気に入りのようだった。
「さ、あんたが一番活躍したんだから遠慮すんなよー」
「うん、きゅー」
ココはライラに勧められてたくさん食べていた。
「種籾分けてもらったし、うちでも作れるな」
「ああ。いずれは大豆も見つけて味噌や醤油、納豆に豆腐も作りたいな」
ハルスも種籾の袋を見ながら言った。
「聞いてみたらやはり出会いの中でってだから、どこかにあるのは間違いないんだろうけどな」
「米みたいにほんと一部で供物とでしか作られてないのかもな」
「だったら説得するの大変だろな。スグル君かリナさん、他の英雄が言えばあるいはだけど」
「それは最終手段だな。俺達でなんとかしよう」
「よーし、お祝いにいっちょやってみっかー!」
ん? ライラがなんかするみたいだが。
見てるとライラの手が光り出し、
「そりゃー!」
その手を上にあげた途端、光の塊が空高く上がっていき……。
パアーン!
音を立てて空一面に広がった。
ってもしかして、花火?
「よっしゃあ! テレビで見たあれ、上手くいったー!」
そうだったのかって、見ただけで再現するなんて。
気がつけば皆拍手してた。
「すげー! 魔法ってあんなこともできたんだー!」
スグル君は大はしゃぎで、
「うわあ、あれってお姉さんはできないの?」
「……できないよ。あの子凄すぎ」
コノミちゃんとリナさんが話してるのが聞こえた。
というか世界一の使い手がそう言うなんて。
「ああ、打ち上げ花火もまた見れるとは……ありがとうライラちゃん」
ハルスが横で泣いていた。
お? ゴリアンさんがライラに話しかけてるぞ?
――――――
「なあ、ちょいといいか?」
「うん、何ー?」
「いきなりで悪いがな、おっかさんの名前教えてもらえねえか?」
「ん? ママはマイラっていうんだけど」
「やはりか。あんた瓜二つだし、もしかしてだったぜ」
「え? おじさん、もしかしてママの知り合い?」
「ああいや、マイラさんは俺が昔いた町の食堂の看板娘でな、ちょいと話した事あるってくらいだよ」
ゴリアンが頭を掻きながら言う。
「え、そうだったんだー! あーしママが昔どうしてたか知らないんだよねー! だからちょっとでも知ってる人に会えて嬉しいー!」
ライラが笑みを浮かべて飛び跳ねた。
「え? もしかしてマイラさんはもう?」
「……うん。あーしが三歳の時に反乱軍にね。けど今はパパやリオルにココがいるし、妹当然のカンナもいるしね」
今度は暗い顔になって言う。
「そうか。その頃だと俺はもう他所へ行ってたからなあ」
ゴリアンも目を覆って言った。
「けどね、もし会えるならほんとのパパにも会ってみたいな」
「ん? ああ、あんたも養女だったんだな。しかしその様子だと」
ゴリアンが顔を上げて聞く。
「誰なのかも知らないよ」
「……そうか。けど何も聞いてねえ、いや聞いてても三歳じゃ覚えてねえか」
「うん。けどね、最近思い出したんだ。ママが『いつか一緒にパパに会おうね』って言ってたのを」
「え?」
「あーしね、一時はパパが酷い奴でママとあーしを捨てたんじゃないかって思ってたけど……そうだったらそんな事言わないもんね、きっと何か事情があったんだって思ったんだ」
「そうか……あ?」
「ん? どったの?」
「いやなんでもねえ。ああ、もしこの先それっぽい人見かけたら言うよ」
「ありがと。そうだ、知ってる限りでいいからママの事教えて」
「いいぜ」
その後、ゴリアンは自分が知る限りの事を話した。
「うわあ、ママってほんとアイドルだったんだねー!」
「ああ。おっと、俺ばっか話し過ぎたな。ほら、皆も話したがってるぜ」
見るとライラと同年代だろう男女何人かが来ていた。
「あ、そだねー。んじゃありがと、また話そうねー!」
「ああ」
ゴリアンはその場を離れた。
「アニキ、さっき話してた事ってちょいとボヤかしてやしたでしょ?」
ズーネが話しかけた。
「……分かるか?」
「へい、時々ライラさんから目を逸らしてやしたから」
「そうか。俺もヤキが回ったな……ああ、マイラはたしかに食堂で働いてたが、時々娼婦やってたんだよ」
「そうでやしたか。おっかさんがそんな事してたってのはキツイかもですね。あ、もしかしてアニキも客として?」
「まあな。しかしマイラはほんとエネルギーに満ち溢れてるって感じで、まさにアイドルだったわ。そんで俺も本気になって口説いたんだがなあ」
「フラれたんでやすか?」
「ああ。顔洗って出直せって言われた。そりゃあんときの俺はただのチンピラだったからなあ……いったいどんな奴が射止めたんだろな」
「いや客の誰かの、もしかするとアニキのお子さんかもですぜ」
ズーネが言うが、
「んなわけねえだろ。あの子はどこも俺に似てねえだろが」
「まあそうでやすが……」
「さ、この話はおしめえにして、飲もうか」
「あ、へい」
……まさかな。
あの子の左手の甲にあった小さな三日月の痣。
あれ、魔法使いだったおふくろにもあったな。
祖母ちゃんにもあったみてえで、なんか代々魔法使いになる女の子に出てくるって言ってたな。
おふくろの子は俺だけだし、もしかすると一代飛び越えて……。
いや、偶然同じ形した痣ってだけかもしれねえし、父親が遠い親戚の誰かなのかもしれねえ。
……なあ、ほんとに俺の子なのか?
俺をずっと待っててくれたのか?
……なんにせよ、すまねえ。
あの時にいなくて、守れなくてよ。
なあ、あの子が誰の子かはともかくよ。
見守るくらいはさせてくれな、いいだろ?
そう思い、亡き彼女に献杯した。
――――――
「そうか、ゴリアンさんとそんな話してたのか」
ライラから話を聞いた。
「うん、ママの話いっぱい聞けたよー。あとパパ探してくれるって」
「そうか。もし見つかったら挨拶させてもらおうか」
「うん、あーしにはパパが二人いるんだって自慢したいわー」
……ゴリアンさんじゃないのか?
それとも名乗らないだけなのか?
いつかその事を聞いてみるか。
そして翌日。
「じゃあ、また遊びに来てね」
「うん。いろいろありがとう」
俺達はスグル君達に見送られ、町を後にした。
ゴリアンさんとズーネさんは町に住んで稲作の指導をするって。
時々はうちも教わりに行く事になった。
――――――
「お姉ちゃん、リオルって勇者だよね?」
スグルがリナに尋ねる。
「やっぱり分かるのね、流石あの二人の子供。けど勇者がいるという事は、巨悪も現れるという事だよ」
「その時はリオルや僕達でやっつけてやるよ」
「うん……」
リナは出来るなら自分や生き残った仲間達でと思ったが、スグル達ならもしかすると、その巨悪すらも……。
だから、子供達を信じて見守ろうと思った。
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