第14話「もしかして……?」

 しばらくして、金色と白が混じった髪でたぶん俺と同年代だろう男性がやって来た。

 この人は弥生時代風じゃなくてゲームの神官のローブっぽい服だ。


「おお、ライラさんですね。私はこの町の町長をしていますハルスといいます」

 町長さんだったのか。


「あ、正秀といいます。こっちの子はリオルで、竜はココです。私はこの子達の保護者代わりです」

 俺も名乗ると、 

「そうでしたか……どうやら良い方に保護されたようで、安堵しました」

 町長さんは胸を撫でおろした。


「いえ。あの。ライラを知っているということは、やはり巫女姫様が?」

「そうです。カンナ様はライラさんを案じておられて、助けに行ってほしいと……申し訳ございませんでした、あの時に一緒に引き取れなくて」

 町長さんはそう言って深々と頭を下げた。


「あの、何か不都合があったのですか?」

「はい。元々はカンナ様だけでなく全ての人をと思ったのですが、用意した食料や物資ではカンナ様一人だけ買い取るのが精一杯だったのです。かと言って力ずくで救出しようにも兵力が足りなくて、それで止む無くでした」

「カンナさんはそこまで高値だった?」

「はい、疫病のせいで魔法の使い手がかなり減ったので初級クラスでも重宝されるのです。あと捕まっていた人の中には魔法の素質がある者が他にもいて、ライラさんなどはカンナ様の十倍以上の魔法力を持っていたので、価値も十倍以上でした」


「え、あーしってそんな値段だったんだ。それならもうちょい大事にしろよなー」

 奴隷商人がライラに魔法力があるのが分かってたのは相当な使い手か魔法のアイテムを持ってたって事だろう。

 そうも出ていたしな。


「その後兵力が揃ったので奴隷商人の館に攻め込み、奴らを討ち果たして人々を救出したのですが、ライラさんはもう逃げ出した後でした……」

 なるほど、追手が来なかったのはそれもあってだったのか。


「うわー、もうちょっといればだったのかー。でもそれじゃパパやリオルにココと会えなかったしー」

 そうだな。俺も娘ができなかったわ。


「その後も探させてはいたのですが、見つからないままでした……けどこうして来てくださったのがありがたいです」


「あーしはカンナを助けにって思ってたんだけど、すっごく大事にされてたからよかったよ。けどなんであの子はあんなに崇められてんのー?」


「……どうやらカンナ様の素性はご存知ないようですね」

「え?」


「あの、カンナさんはもしかして名のある方の血筋だとかですか?」

 この流れだとそうだろうが聞いてみた。


「そうです。カンナ様の父上、神官ズイフウ様は英雄王様率いる統一軍の幹部で、参謀格の一人でもあったのです」


「え、えええー!?」

 ライラは文字通り飛び上がった。


「その様子だとほんとに知らなかったみたいだな」

「う、うん、本人もただの神官だとしか言ってなかったよー」


「そうでしょうな。あの方は本来なら統一王国の大臣だったのに、そんなの嫌だと言って育った孤児院に帰りましたからね」

 町長さんがしかめっ面で言ったが、


「あれ、町長さんはズイフウ様の事をよく知っているのですか?」

「私はズイフウ様の補佐役でしたので」

「うわ、凄いじゃないですか」

「いえいえ、歳は私の方が一回り以上も上なのに、全く歯が立ちませんでしたよ」


「ねえ、あのお姉ちゃんはなんでライラお姉ちゃんの事知らないって言ったの?」

 リオル君が尋ねる。

「おおそうでした。正直ライラさんと会えれば元に戻るのではと思っていましたが」


「え? 何かあったのですか?」

「はい、まずカンナ様はこの町の巫女姫様としてお迎えしたのです。英雄神官ズイフウ様の娘というのも既に知れ渡っています」


「こんな時世ですから、カンナさんの存在は心の拠り所となりますよね」

 英雄の娘が皆を助けに来たというだけでも違うかもな。


「はい。最初は戸惑っておられましたが、だんだんと自信がつかれたようで。回復魔法は元から使えていたので、それで人々の役に立てると喜んでおられました」

「あの子優しい子だからねー」


「ですが、一月程前から時折癇癪を起こすようになったのです。お諫めしようにもいつの間にか魔法力が上がっていて、上級攻撃魔法も使いこなす程になっていて……町の者もたまに当たられる事があります」


「ライラが見つからないからではなくてですよね……うーん、どうにか会って話せたらいいんだけどなあ」


「きゅーきゅー」

「え? ココのママもそんな時があったって?」


「そうなのか? それでどうやって収まったんだ?」

 なんか手掛かりになるかもと思ったが、


「きゅー」

「えーと、お魚いっぱい食べてだって」

 ……いやまあ、カルシウム不足でイライラしてたってのはあるかもだが。


 ん? 待てよ……いやどうだろ?

「パパ、なんか分かったの?」

 ライラが聞いてきた。

「確実にじゃないが……ちょっと」

 俺はある事を耳打ちして聞いた。

「あー、それね。うん、カンナはまだなかったよ」

「じゃあ、もしかしてそれで戸惑ってんじゃないか?」

「かもしんないね。知らない訳じゃないけど実際に自分がだったらね。あーしや他の子は孤児院にいたシスターが対応してくれたよ」


「あの、何の話を?」

 町長さんが首を傾げて言う。

「ねえ、カンナには女性の付き人っていないのー?」

 ライラが町長さんの方を向いて尋ねた。

「え? いや世話係は女性ですが、それが?」

「その人達ってカンナに物申せる程じゃないでしょ?」

「ええ、まだそこまでは。誰か一人くらいは友達になってもらえたらと同年代ばかり選びましたが」

「そっか。ねえ、この町って女性の医者とかシスターとかいないのー?」

「え? シスター兼医者の婆さんがいますが」

「じゃあさ、後でその人連れて来れない?」

「ええ。使いを出しますが……はっ? か、カンナ様は何か重い病、まさか疫病?」

 町長さんが真っ青な顔になって言うと、


「あのさー、町長さんってもしかして女の子の事知らないの~?」

 ライラは額に青筋立ててそう言った。


「え? ……あ、まさか」

 町長さんも思い当たったようだが、

「そうかどうかはまだ。とにかくここはライラに任せてください」

「え、ええ」


「えと、なんだろ?」

「きゅー?」

 ああ、君達には……いつ教えたらいいんだろ?

 世の親はどうしてるんだろなあ?


 って俺も親から教わってなんかないし、今は知らんが俺が学生の時にそんな授業あった記憶無いわ。


 ほんとどうしてんだろな? 


 そこから見てる神様、教えて。

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