第6話「こんな感じだったのかな」

 翌朝。

「こんないい服貰っていいの?」

「いいよ。どうせもう着られないし」


 押入れに俺が子供の頃着ていた服があったのでリオル君に着せた。

 浴衣のままじゃあれだし。

 襤褸切れは洗って干してある。


 今日は村の方へ行くことにした。

 リオル君が食べ物や野菜の種がまだ残っていると言うので。


 そして案内された場所は、教会の隅。

 前は気づかなかったが、そこには人が通れる穴があって階段もあった。

 地下室のようだった。


「村の倉庫なんだ。皆でここにいたんだよ」

 ……こんな通気性悪いとこじゃあっという間にだよ。

 そんな事知らなかっただろうな。


 中に入ると石の壁で覆われた場所で、結構広い。

 生活していた跡もあり、小さい子が遊んでたであろう玩具もあった……。


 とりあえず種が入った袋を取り、畑に行ってみたがやはり殆ど荒れていた。


「ママやおばさん達が一度耕し直さなきゃって言ってたよ」

「そうか。じゃあそうするか」


 残っていたクワを持って、二人で耕し始めたが、

「ふう、やっぱ疲れるな……耕運機でもあればなあ。って待てよ、魔法でできないか?」

 アプリに聞いてみると風魔法と爆発魔法を合わせればできるって。

 俺は使えないからダメだな。

 ん? 身体能力増加魔法を使えば疲れるが速度は上がるだろうってか。


「今の俺だと効果は三時間か、よし」


 かけてみると力が沸き上がり、あっという間に50㎡程を耕せた。


「うわ、すごい!」

 リオル君が目を輝かせて言ってくれた。


「魔法でだけどね。この調子なら何日かかければ全部耕せるかな」

 俺達二人分だとそんなに要らないかもだが、他にも人がいたら交換とかできるかもな。


「おじさん、その魔法ぼくにもかけて」

「え、ちょっと待って」

 聞いてみると、リオル君はまだ幼いから反動がキツイか。


「そうなんだ。じゃあ魔法教えて」

 それはいいらしいが、リオル君に素質はあるのだろうか?

 いやお父さんやお祖父さんが魔法使いらしいから、あるかもな。

  

 とりあえず魔法陣を書いて確認したら……え?


「え、え?」

 手がずっと光っとる……今の時点で俺の何倍もの魔法力があるって事かよ。


「す、すごいね。あ、魔法の契約もしてみようか」


 リオル君は契約の呪文を唱えた途端、驚きの表情を浮かべてその場にしゃがみ込んだ。

「え? ど、どうしたの?」


「なんか息が荒くてよだれ垂らしてる音が聞こえた」

 ……おい精霊様、あんたショタコンなのか?


「けど最後に『全ての魔法の契約しました』って言ってた」


 なんだと?

 この子もしかして大魔法使いの素質があるって事か?


「それでどうやればいいの?」

「あ、うん。俺も初心者なもんでこれに聞いてみるよ」



「あれ?」

 リオル君の魔法は発動しているようだが、どれもあまり威力が無い。

 回復魔法も出来てるが、ちょっと効いたかなって程度だった。


 俺の伝え方が悪いのだろうか。

 あ、そうだ。


「リオル君、文字読めるよね?」

「うん。けどそれに出てるのは読めないよ」

「そうだろね。じゃあ」

 リオル君の知ってる言語で表示してくれって書いたら……ん?

 なんというか、日本語をそのままローマ字で書いたものが出てきた?

 これがこの世界の共通言語ですって?


「えと、これ読める?」

「あ、うん。ぼくの知ってる字だよ」

 そうなのか。それだったら俺も読めるから今後ずっとこれで表示してもらうか。


「俺の言い方が悪いのかもだから、一度これ読んでくれない?」

「うん」


 だが、やっぱり威力が……あ、そうか。

 単純に技量が足りないのかも?

 聞いてみたらそうだった。


「そうなんだ、じゃあいっぱい練習すればいいよね」

「そうだね。よし、俺も頑張ろう」


 日が暮れかけているので、今日はもう終わりにしようとなった。

 ふう、疲れた。

 てかドロドロだな、先に風呂入ろ。


「お風呂って何?」

「え、体洗うところだけど、知らないの?」

 よく分からないみたいなので聞いたら、どうやら普段は川や井戸の水で体を洗ってるようだ。

「ま、ちょっと驚くかもだけど入ろうか」



「うわあ、お湯が出てきた!」

 シャワーを浴びて、


「うわ、泡がいっぱい」

 どうやら石鹸は無いようで、まれに香草を塗っているって聞いた。

 どこかで材料見つけたら作ってみよう。


「お湯に入るって贅沢だね。気持ちいい」


 そうだよな、ガスなんてないんだろし。

 魔法でできそうな気もするが。


「ああ、さっぱりした。さあごはんにしようか」

「うん、ぼく手伝う」




 そして二人で作ったのは、

「うわあ、これすごく美味しい」

「オムライスっていうんだよ。黄色いのは鶏の卵」

 自分では殆ど作らんから不安だったが、上手くいってよかった。


「へええ、卵って食べられるんだ」

「けどあんまり無いから、今度からは特別な日にね」

「うん」




「く、天才か?」

 食べ終わった後、対戦型ゲームしたらボロ負けした。

「おじさん弱いね」

「うう……もう一回」

「うん」


 その後何度やっても負け……もう遅いのでとなって、お開きとした。


「ふう、よく寝てるな」

 ほんといい寝顔だな。

 昨日が嘘みたいだ。


 ……もし結婚できてて子供がいたら、こんな感じだったのかな。

 って、誰が結婚してくれるんだだったけどな。

 全然ダメだったんだから。


 さ、寝よう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る