第5話「遠き日の思い出と今の事に感謝」

 日の高さからもう昼かな。

 時計も上手い具合に合ってるな。


 さて、昼めしにするか。

 リオル君、そろそろなんか食べてくれないかな。

 ダメならスープとか野菜ジュース、すりおろしりんごでも作るか。


 居間へ行くと、リオル君は起きてぼうっとしていた。

「ねえ、なんか食べれそう?」

 聞いてみるが、

「いらない」

「うーん、スープとジュースも無理?」

「……飲む」

「じゃあ持ってくるから」


 台所でスープを温めて、ミキサーで野菜ジュースを作って。

 

 居間に戻り、出しておいたちゃぶ台の上に置いた。

「ゆっくり飲んでね」

「うん」

 リオル君はスープを少しずつ口に入れていった。


 もしかして水分は取っても食べなければいいとでも思ってるのかも?

 それでもいずれはだが。

 うーん……そうだ。



 自分の部屋に行き、ダンボール箱の中を探した。


 よし、あった。

 昔の家庭用ゲーム機。

 興味持ってくれたらいいんだが。



 居間に行ってブラウン管テレビにセット。

 カセットの底に息を吹きかけ、本体にセット。

「動いてくれよ……」

 電源を入れると……点いた!


「……へ?」

 おお、リオル君が目を丸くしている。

「これね、魔法の遊戯具なんだ」

 そういう事にしておこう。


「へえ」

 うむ、また塩対応になりやがった。だがな。

「まあ、見ててよ」


 宇宙での戦いをイメージしたシューティングゲーム。

 シンプルだけど面白い。


 ……うむ、久しぶりすぎてすぐゲームオーバーになった。

 よし、もう一度。


 ……何度やってもすぐやられる。

 こんなはずじゃないのだが。

 

「おじさん、ちょっと貸して」 

「え、うん」

 リオル君にコントローラーを渡すと……。

 

 オイ、あっという間にクリアしていってるぞ。

 この子ほんとに異世界人か?


「……クス」

 あ、ちょっと笑ってくれた。

 けど飽きたのかコントローラーを置いて、元通りになった。


 うーん、あれでちょっと反応があるなら。

 漫画はたぶん字が違うだろから読めないだろし。

 

 ……


 ん? また視界の隅で何か光った?


 そっちを向くと、押入れが少し開いていてそこから小さな光が。

 何か入ってるのか?


 開けてみると……あっ?


 あったのは古いビデオデッキといくつかのビデオテープ。

 そのテープの背表紙には昔よく見てた、あの視聴率お化けバラエティ番組の名が。

 

 ……思い出した。

 祖父ちゃんがこれ録画しておいてくれてて、俺がこの家に帰ってきた時に見せてくれたな。

 家を取り壊す際に処分したはずなのにって、これもなんだろな。


 ビデオデッキをセットして、テープを入れて再生した。

 映るかな……映った!


 ああ、懐かしいなあ。


「リオル君、これ見てよ」

「……ん」

 ちょっと目線が行ってたので、そのままにして俺も見ることにした。



「アハハハ! 後ろ―! 後ろー!」

「ちょっとだけよって、アハハ」


 ああ、久しぶりに見たけどやっぱ……って自分がのめり込んでどうすんだ!


 慌ててリオル君を見ると、


「アハハハ!」

 大ウケしてた。

 やっぱあの方達は世代どころか、時空すらも超えるんだな。


「ああ、意味わかんないけど面白かった」

 リオル君は満足そうにしていた。

 そして腹を擦り、


「……なんかお腹空いちゃった」

「お? そうか、じゃあ何か作るよ」

「うん」

 よかった……。

 

 さてと、何を作ろうかな?

 



「美味しい、これなに?」 

 リオル君が茶碗の中を見ながら聞いてきた。

「お粥っていうんだよ」

 病み上がりだし胃に優しいものの方がいいかなって思った。

 作り方覚えといてよかったよ。


「え? ぼくが知ってるのと違う」

「あれ、そうなの? リオル君が知ってるお粥ってどんなの?」

「えっとね、固くなったパンをスープに入れたのだよ」

「ああ、そんなのもあるよね。これはお米っていうものをなんだけど、知らない?」

「知らない」

 やっぱ無いんだな。パンって事は麦はあるんだろうな。


 リオル君はその後、おかわりまでしてくれた。

 気に入ってくれたようでよかったよ。


「ごちそうさまでした」

 リオル君が手を合わせて言った。それは一緒なんだな。 


「……ねえ、おじさん」

「ん?」

「ぼく、ここにいてもいい?」

 リオル君がちょっと気まずそうに言った。


「いいよ。ずっといてくれたって」

「ありがと……あのおじさん達って、面白いよね」

「ん? ああそうだね」

「それとさ、見てたら生きたいって思えてきたんだ。なんかあのおじさん達が生きなさいって言ってるような気がしてさ」

「そうだったのか」


「あと……死にたいなんて言ってごめんなさい。あれこれしてくれてありがとう」

 ちょっと涙目になって言った。


「いえいえ。さてと、あのビデオまだあるから見る?」

「うん!」


 その後、二人で大笑いしながらビデオを見ていた。

 ミックスジュースを飲みながら。


 気がつくとリオル君が寝落ちしていた。

 ほんといい笑顔で。

 

 俺はリオル君を布団に寝かせた後、画面に映る皆さんに向けて言った。

 



 ……ありがとうございました。

 遠き日の思い出と、今日の事を。

 俺だけでどうにかできたかどうかでした。


 そうだ、もしこの世界で他の人に会ったら、皆さんの事知らせていきますね。


 あとお二方……まだまだお元気でいてくだいね。

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