ぼんやりのすすめ

三角海域

ぼんやりのすすめ

部屋の照明が故障し、いつもよりもぼんやりとした明かりの下で生活することになった。

うっすらと部屋を照らす光量。最初の内はホラー映画の照明みたいで落ち着かないなと思った。そんなことを最初に思ってしまったせいで、余計に落ち着かなくなってしまった悪循環である。


だが、「こんな部屋じゃ落ち着けない……」なんて思いつつもその中でしばらく暮らしていると、だんだんと気にならなくなってきた。

むしろ、いままでが明るすぎたんじゃないかと思えてくる。

なんでもかんでも強く照らすというのは見やすさとしてはいいのかもしれないが、別にそこまで見やすくなくたって困らないということにも気が付いた。



明るい方がいいと思っていたのはどうしてだろうと考える。そうすると、別に自分でそうだと思ったわけではなくて、そのほうがいいよねくらいの軽さで決めていたことに気が付く。そこに自分の意見というものは感じられない。



無意識に「そのほうがいいよ」と言われたことを「そうだよね」と受け止めていた。はっきりしていたほうがいいという思い込みがあった。ぼんやりとした明かりの下で暮らしていくなかで、大切なのははっきりと見えることよりも自分の中に在る感覚の輪郭を観察することだと気付いた。



物事はちょっとくらい見えにくいほうが案外大きな発見があったりする。


ちなみに、部屋の照明はなおったのだが、いまもぼんやりとした明かりに設定している。少しだけ見にくい。

ぼんやりとした照明のこの部屋は、僕の頭の中とリンクしている。

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ぼんやりのすすめ 三角海域 @sankakukaiiki

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