声だけがしない

 これは、いつも見ている夢だと思う

 蹴り倒した美咲を見下しているからだ


 陽光が水面を照らす湘南の海も

 潮でベトついた美咲の髪の感触も

 懐かしい潮の薫りも


 鮮明に思い出せるのに


 倒れた美咲を見下ろす

 彼女の切れ長の目がゆっくり開く

 濡れて怯えたような

 それとも同情しているかのような

 あいつと同じ目だ

「     」

 何かを言っているが

 声だけはどうしても聞こえない

 ブーーンと五月蝿い換気扇の音だけが、耳の奥で響いている


 俺は拳を振り上げた

 また同じことを繰り返している

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最初に忘れるのは、声 あきかん @Gomibako

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