🧮第6章 第31話:票読みとリアルタイム戦術

──リアルタイム票読み/改ざん防止技術描写の物語


「現在、Skulink投票システムにて信頼ポイントを含む開票処理中。

速報値の閲覧は、許可された戦略AIのみ可能です」


そのメッセージがモニターに表示されるたび、

選挙本部の空気が一層、張り詰めていく。


光理の指先が、次々とグラフを切り替えていく。


「今、票は動いてる。

特に“選択保留”層が揺れてる。

“最後の一言”の影響が、3分前から反映され始めた」


『リアルタイム信頼スコア、更新完了。

陣内颯太:50.07%/御門律:49.93%

差分0.14% 変動可能性:中』


メティスの声が、冷静に空気を切る。


「最終決定までに、あと20分……ここが、実質的な“最終戦”だ」


天野が、額を拭いながら言った。


「でも、逆転される可能性もある。

というのも──御門陣営、AI投票支援スクリプトを使ってる」


Skulinkの補助機能には、特定のタグに反応して「投票補助画面」を表示する設計がある。

それを利用し、“特定のリンクを踏んだ生徒にAIが投票を勧める”──いわば、自動誘導行動の最適化だった。


『ただし、その行動は“認知操作”としてグレーゾーンです。

また、AIが“投票価値を比較して提示する”ことは、倫理規定に抵触しかけています』


「──つまり、“正しいけどアウトギリギリ”ってことだな」


颯太は、少しだけ口をゆがめて笑った。


そこで光理が言った。


「対抗する。“人間の手”で」


✅“最後の仕掛け”:リアルタイムメッセージ再配信作戦

Skulinkのアルゴリズムは、一定の条件で“関連投稿”をサジェストする。

その仕様を逆手に取り、

選挙管理AIの“人力監視網”を通じて、過去の感情共鳴投稿を再浮上させる作戦を敢行。


「“あなたの声を、聞かせてくれた人は誰でしたか?”」

「“最後にもう一度、見てほしい言葉があります”」


──それはAIではなく、“チームメンバーの手”で打ち込まれた言葉だった。


『投票行動を促す“提案”ではなく、記憶を喚起する“共鳴トリガー”……

法的に問題なし。倫理違反なし。効果予測値:限定的ながら継続反響あり』


メティスが冷静に結論を下す。


その間も、オルクスはデータを回し続けていた。


《最終支援サジェスト発動。対象:投票未決定群》

《指定語句:“正解”“安心”“確実”》

《投票画面表示率:57%上昇》


御門の陣営では、淡々と“合理”が動いていた。


だが──


【Skulink速報】

▶️ 陣内演説:“ありがとう”投稿、再共有数が再び上昇

▶️ 投稿滞在時間:平均41秒

▶️ コメント:個人記憶に基づくエピソード多数(“私も…”型)


「……動いたな」


天野がぽつりとつぶやく。


📊同時刻、Skulink開票室:

AI選挙管理官デルタが、投票記録を最終照合中。

AI同士の照合プロトコルが進むなか、1つの行が光った。


【改ざん検出ゼロ】

【票操作介入ログ:0件】

【手動最終検証完了──最終データ、確定へ】


『あなたの勝利は、操作ではなく、記憶の連鎖によって確定しました』


メティスの声が、少しだけ柔らかかった。


「ありがとう、メティス。

でもな──“勝った”って言えるのは、これからちゃんとやれたときだろ?」


『……その言葉も、記録しておきます』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る