第14話:明くる晨の晴天に、真を索めて行き行けば(前)

  うーむ。

  ……状況を整理すると、どうやらここは史実世界ではないらしい。よって、賀栄かえい(文字を教えてもらった)二年というのも、別段幕末云々ではないらしい。そもそも長ケ暦漆參陸年とは16進数だから、10進数に直すと1846年だが、この当時にすでに西暦が浸透しているのはなんぼなんでもあり得ないとすると、恐らく皇紀的なものもあるのだろう。とはいえ、普通使うのは元号であり、長ケ暦というのは陰陽師的な存在くらいしか使わないらしい。あー、あの人ら確か本職は天文学者にしてカレンダー作成者だからな、うん。こっちの世界では魔法使えっけど。

  で、皇紀の1846年と言えば、源平合戦が一段落付いた頃合いであろうと思われるが、そもそも史実世界とは全然関係が無いらしく、最近合戦がないかとか遷都令があったかとか聞いてみたら「?」な表情をされた。と、いうか、そもそもなんだが……。

「どうしたの? 保波。なんか様子が変よ?」

「え、ええ。……少し、自分でも違和感を感じていますが、地図と歴史書を持ってきてもらえますか?」

「あらあらまあまあ、保波もそんな年頃なのね! ……わかったわ、ちょっと待ってなさい」

「は、はい」

  ……歴史学は、異世界でも応用が利くことを証明してやろうじゃないの!

  ……って、息巻いたはいいんだけどさ……。

  ……この世界は、どうやら本朝の歴史がかなりチャンポンしているけど、それでもそもそも魔法が使える上に天皇家とはつまり、世界で一番長い現存王朝だからその魔法の威力も極めて高い、的な、まあ、言ってしまえば、うん、……この世界では、血統が周囲に認知されていて、それが長ければ長いほど、威力が高い魔法が使えたり高等な術式を組めたりするらしい。つまりは、天皇家的存在は魔法的にはめっちゃ強い、というか、元いた世界よりも明確に、つまりは、抑止力になってるらしい。さらには、神々との距離も現代社会に比べて極めて近く、つまりは俺屍ごっこやAIRごっこ、あるいは比叡山炎上ごっこなどもできるらしい。どういう環境だ、それは。

  で、おれの立場はどんなものなのかというと……。

「助かるわぁ、いつか学問をやりたいって言い出すと信じてた甲斐があったわね!」

「は、はあ……」

  参ったな、現状を確認したかっただけなんだけど。

  ……えーと、おれの環境なんだが。

  母親がなんか若い、というかKey的な、秋子さんだったり早苗さんだったり、晴子さんだったり(まあ、晴子さんと観鈴ちんの関係は養子だが、それは気にするな!)、つまりは、めちゃくちゃ若く見える。さすがにおれがロリロリしいようじょだからか、きちんと親子には見える、とは思うんだけど。

  そして、おれが転生した家の環境は、どうやら北面の武士的な、而して階級的には高下駄的な地下人ではなく殿上人ちっくな、まあ上達部ほどではないけども、的なレベルらしい。何でも親父殿は宮殿護衛隊の最終兵器なんだとか。

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