第13話:終わった後の、その世界(後)
「保波っ!!」
「……お母様?」
「術が成功したのね!」
……さて、どうするか。
蘇生したのは良いが別人格でした、とかだったら確実に疎まれるだろうし、そもそも今の自分の状況すらおぼつかない。前の住人らしい人物の記憶を引っ張り出してそれなりに糊塗してしのげるかもしれんが、それやったらバレた際の激怒が想定できるし……。
「保波っ、今が何年何月何日かわかるっ!?」
「……わかりません」
うん、ここは正直に答えよう。嘘ついて下手に状況が悪化するよりも正直に、かつ聞かれないことを言わなければ、それなりになんとかなろうて。
「うーん、そうよね。保波が寝ていたのは術が開始する前からだから、だいたい今は、元号暦で
「……うん?」
……あれ、やばくね?
「か、かえいにねん、ですか」
嘉永2年ってことは、黒船襲来まであと何年だ!? ……六年だったか五年だったか、あるいは七年だったか、多分その辺だろ。とはいえ、都なんだから、明治維新でむちゃくちゃな立場にはならんと信じたいが、ええい今のうちに大東亜戦争に備えねば。……って、今女だからそれも難しいか、どうしよう……。
「ええ。それがどうかしたの?」
「……江戸湾の浦賀沖ってどうなってますか!?」
「……えど?」
「はい!」
「……江戸って、どこのことなの?」
「えっ」
「えっ」
……うん?
「……お母様、ここって都、ですよね?」
江戸知らないってことは、さすがに無いと思うが、っていうか、もう東京、ってわけでもないし、ちょっとまて、したらどうなるんだ、一体……。
「ええ、そうよ。……保波、疲れてるならまだ寝ていた方がいいわ。子守歌歌ったげるから、もっかい寝なさい」
「は、はーい……」
……と、とりあえず確かにもう日も暮れているし、明日考えるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます