ずたずたの身体と心。
「Aの部屋でお客さん待ってる!早くして!」
事務所内で行き交う声達。
就職した私は忙しい毎日を送ってた。
最初は沢山覚える事があってやりがいも感じていた。
ただ、きつく見える顔のせいか新人へのやっかみか言ってもいないことを言ったと言われ店長からは毛嫌いされた。
「男に媚びるような話し方やめた方がいいよ〜」
と、話し方についても指摘された。
話し方がゆっくりで語尾が伸びてしまう。
それがどうやら気に入らないらしい。
でもそれは昔からで別に媚びるためにやっている訳ではない。
話し方も矯正させられ、休憩もほぼない、13時間労働。
私は疲弊しきっていた。
入社して2ヶ月でストレスで毎日お酒を飲みながらご飯を食べまくっていたせいで6キロ体重が増えた。
でもストレスからか免疫が下がり溶連菌にかかったことで何も食べられなくなりそこで体重ががくんと落ちた。
そんなことを2年続けた。
今まで学生時代は1度もかからなかったコロナに3回、溶連菌は2回、インフルエンザも2回かかった。
手足口病にもかかった。
その時は休ませてももらえなかった。
忙しくてトイレに行く暇もなかった為、膀胱炎は慢性化して今も治らない。
最早病院に行かなくても自力で治せるようになった。
そんな状態でもう疲れきってしまい、またリストカットをしてしまった。
ほんの気の迷いだった。
そんな時、友達に初めて本気で怒られた。
お互いの家を行き来するくらい仲の良い友達、ななちゃん。
その日も泊まりの日恒例で一緒にお風呂に入っていた。
「ねえ。」
という珍しいななちゃんの低い声。
「どうしたの?」
「またやったでしょ。」
腕を指差して、傷増えてると思ったんだよね、と怒った顔をされる。
「切ってスッキリするなら止めないけど、○○ちゃんを心配する人が、○○ちゃんが死ぬ事で悲しむ人がちゃんといることを忘れないで。」
そう言って真剣な顔をしているななちゃん。
私は泣いてしまった。
人生で初めて私のことをここまで心配してくれる人に会ったなと、幸せだなと、心から思った。
「そんなにさ、仕事しんどいなら辞めちゃいなよ。別に選ばなかったら仕事なんて腐るほどあるよ。」
その言葉に私はすごく後押しされた。
そこからの私の行動は早かった。
メンタルも限界をきていたし、仕事を即辞めるには診断書を取るのが早いと思い今まで避け続けていた精神科への受診を決めた。
何故避けていたかと言うと、これも幼い頃少し癇癪を起こすと精神科に連れて行くと祖母と母に脅し文句のように言われていたからだった。
それと、これで行ってみて何も無かった時ただの怠惰な健常者の烙印をおされてしまうのが怖かったからだ。
それで何年も自分の精神状態に違和感を覚えながらも生きてきた。
かなり勇気のいることだった。
緊張しながら予約を取って受診をした結果、私は適応障害とパーソナリティ障害との診断が出た。
病名がついて心がすごく楽になった気がした。
そこから休職をしてから仕事は辞めた。
数時間毎に起きてしまうことも薬を飲んでいくにつれて段々となくなった。
人混みには未だに耐えきれずトイレで吐いてしまうこともある。
でも、昔より格段に生きやすくなった。
リストカットももうしないように上からカランコエというお花のタトゥーを入れた。
花言葉は『あなたを守る』
少しだけ強くなれた気がする。
今も綺麗な状態のまま、私の腕で咲いている。
診断されてから良かったこともある。
父親に人生で初めて頼ってみた。
働けなくなった今、金銭面が苦しいから助けてくれないかなという下心しかない連絡だった。
今まで何もしてくれなかったんだから今回くらいは助けてよ、と。
物心着く前に出て行った父親、私の事を捨てた父親、そんなイメージしかなかったけれど母には頼れないし傷病手当にも限界があった。
ハナから期待はしていなかった。
けれど思いの外、父はすぐに休みを取って2時間かけて会いに来てくれ、全然食べられなくなっていた私をご飯に連れ出し、食料を買ってくれた後分厚い封筒を渡してくれた。
有難いと思うと同時に罪悪感、なんだろうなとも思ってしまった。
それから父は私を頻繁に飲みに誘っては色々な話をした。
そこで私は今まで誤解していた事や、父の弱さを知ることが出来た。
義両親と一緒に住み、一緒に仕事をし、母からは依存され、逃げ場がなくなってしまったんだと思う。
何かに逃げたくて、結果ギャンブルに逃げた。
傍から見たらどうしようもない人間だと思う。
でも、良くも悪くも私はこの人と似ている。
昔のことを100%許せるかと言われればそれは無理かもしれない。
私を心配してくれるその行動から、眼差しから、この人のことを知っていきたいとは思ってしまった。
紫。 @violet_0824
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