梅酒と告白大会


 ごはんを食べ終わって、お皿を片づけて、歯を磨いて。

 みんなで八畳の和室に布団を並べて敷いた。お泊まり会の本番、って感じ!


 そのとき、優美がトートバッグから、小さなガラスのボトルとアクリルのスタッキングカップを取り出した。


「はいっ。我が家では、梅酒は“酒じゃない”判定でーす!飲みたい人〜?」


「はーい♡」「はい!」「のむのむっ!」


 三人、息ぴったりに手があがった。

 笑い声と一緒に、さっそくコップに注がれた梅酒をミネラルウォーターで割って、乾杯っぽくコツンと合わせる。

 ちびちび飲んでたら、なんだか頬があったかくなって、気分もふわっと軽くなってきた。


しばらくのち……。




「ねえ杏。あのさ、ルナマートで買ってたアレって、まだ残ってる?」


 愛実が、いかにも何気ないふうに尋ねる。


「なっ!?ちょ、それ聞く!?いきなりすぎでしょ!」


「「「知りたーい♡♡♡」」」


 とりあえず三人揃って言う。

 優美と珠樹は愛実に感心していた。「さすが愛実……」「躊躇ないわ……」


「……はぁ。まあ、いっか。言っちゃおう。……2回買って、もう残ってませーん」


「うっわ……!まじ!?」


 と、珠樹。なぜか隣の愛実と肩寄せあって、二人でほっぺを赤らめてる。


「ねえ杏〜、いつごろから気持ちよくなった?」


 意外にも優美がそんな事を聞いてくるもんだから、杏は驚いた。


「えっ、それがさ。……実は最初っから、わりと」


「きゃああ!!」「エッチ~!」


 珠樹と愛実が小声でキャーキャー騒いでるのを、杏はちょっと照れ笑いしながら受け流した。


「流れだと、優美は?って返したくなるよね、あはは」


「実は、わたしもそうだったんだよね」


「「うそでしょー!?!?」」


「ちょっとちょっと、優美、それって……付き合ってる相手がいるってこと!?」


「夏の、恋……なの?」


 優美はぽすんと布団に倒れ込んで、天井を見上げたまま、ぽつりとつぶやく。


「……神崎翔太と付き合ってる」


「「「ええええええええええっ!?!?!?!?!?」」」


 びっくりしすぎた三人、がばっと優美のとこに移動して、並んで仰向けに寝転がる。


「なにそれどういう流れ!?えっ、神崎ってあの神崎!?」


「うん。幼馴染なのは知ってるでしょ?ただの腐れ縁って思ってたんだけど……。たぶん、杏と神崎のアレがきっかけだったのかも」


「ってことは……嫉妬的なやつ?でも優美、ぜんっぜんそんなそぶりなかったし〜!」


「まあ、翔太はね。ずっと弟みたいな存在だったんだけどさ。でも、あの件があってから、やっとあいつ、自分と向き合うようになって……。夏のあいだに、なんか……ぐらっと気持ちが傾いちゃった感じ」


「優美ってば、ダメンズじゃなかったよね?」


「失礼なー!翔太はね、ちょっとアホだけどダメじゃない!むしろ……根っこはめっちゃ優しくて、いいヤツ……なの!」


「わ〜、なんかもう、めっちゃ乙女モードじゃん優美!」


「えっと、じゃ、愛実と珠樹は?……生娘さんだよね?」


 なぜか恐る恐る聞いた杏に、二人は顔を見合わせた。


「へっへっへ〜。わたしたちも、実は……処女じゃ、ありませーん♡」


「ねっ♡」


 次の瞬間、珠樹が愛実の肩をくいっと抱いて頬っぺたにキスをした。


「ご報告しまーす!わたしたちもこの夏、晴れてカップルになりました~💛」


「「ちょっっっっっっっと待って!?!?」」


 今度悲鳴を上げるのは杏と優美。


「え、ふたりって、そういう……そういうアレだったの!?」

「前から?突然?どーなってるのー?」



 意外な展開のパジャマパーティなのだった。






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