第十一話 夢現

「起きて。デジレ・テレジア」


 まだ眠い。どうしてこんな早起きするの。


「もう。貴族も王族も解体されてただのデジレ・テレジアになったんだからしっかりする」


「え? 何それ」


「魔王と魔獣が居なくなってみんな平民に戻ったの。これからは全て平等で自由よ」


「あなたが勝ち取ったんじゃない聖女デジレ・テレジア」


「アン!? どうしてあなたが聖女でしょう!?」


「まだ寝ぼけてるの。そんなにぼんやりしてるとユリウスを取っちゃうわよ」


「ユリウスもいるの?」


「そうよ。私たちが勝ち取った未来じゃない」


「魔王は、魔王のデジレ・テレジアはどうなったの?」


「何それ。じゃああなたは誰なのよ」


 私、私は、


「そんなにここが嫌だった? 私と一緒の部屋」


「そんなことない。ずっと、ずっと会いたかった。アンに謝りたかった」


「何を?」


「私があなたにコードを使った事、あれは本当にしてはいけなかったの」


「許さない」


 え?


「ここはコードを書き換えられた人間の行きつく先よ。天国だとでも思った?」


「あなたも自分にコードを使った。そして人間でなくなった。

 じゃあどうすればいいと思う?」


「答えは簡単。あなたがデジレ・テレジアではなくなったから

 あなたが使ったコードの結果も変わったの。

 そしてもう一人のデジレ・テレジアが生まれた。聖女としてね。

 私は聖女ではなくなった」


「わかる? 私が生きたまま地獄を味わっているということが。

 みんなが待ってるわデジレ・テレジア。

 あなたの人生をここで書き換えるためにね」


 私は逃げ出した。

 ここはどこ?

 未来ではないの?

 コードの使われた先ってなに?


 あれは人間を書き換えるんじゃなくて、

 取り替えていたの?


 目を覚ます前の聖女の私の行動を思い出す。

 あんなの許せるわけがない。

 あんなの絶対に許せない。

 じゃあここに居る人間がコードの使用者を見つけたら?


「見つけたわデジレ」


 ヒッ!


「「もう死んで!」」


 私とアンの声がハモる。

 そして私のコードが発動した。

 アンが消える。

 そして・・・


「デジレ? ここはどこ? 私どうなったの?」


「アン。元に戻ったの?」


「戻ってない。戻るわけがない。俺達がそうなるようそう仕向けたんだよお前が」


 この声はユリウス。


「アンを殺したなデジレ。お前を最後まで信じていたアンを!」


「来ないで! 私にはコードが・・・」


 コードが、ある。

 ユリウスにも一度コードを使えば

 もとに。


「お願い戻って」

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