第十話 デジレ・テレジア

「魔王様、準備が整いました」


「よくやったわ」


 魔獣が喋っている。今の私にはそれが理解できる。

 あと少し、もう少しで私たちの悲願。

 願いを叶える宝珠が起動できる。


「魔王様。人間です。人間の聖女がここに向かっています!」


 まだ居たの?

 肝心な時に居ないのに、もう遅すぎる。


「私は聖女デジレ・テレジア! あなたを救いに来たわ!」


 これは、なに?


「私はアンの意志を引き継いでここに居るの。

 あなたがしてきたこと、後悔も全て知ってる。

 だからもう終わりにするわ」


 ねぇねぇねぇちょっとまって。

 それでなに?


「私が死んであなたが聖女デジレ・テレジアになるの?」


「そう! 私があなたを救ってあげる! それが望みなんでしょう?」


 冗談じゃないわよぉ!!!


「私がデジレ・テレジアよ!

 あなたなにもわかってない!」


「そう。なら・・・」


「コードを使うな!

 何も知らないじゃない。

 あなたどこまで私なのよ」


「だから私があなたを引き継ぐの。

 私は聖女なんだからコード使っても問題ないでしょ。

 じゃあ死んで」


 こんな。

 こんな終わりなの。

 これが私がしてきた事なの。

 こんな理不尽あっていいはずがない。


 こんなこと、してはいけない。

 コードなんて使ってはいけなかったんだ。

 ・・・ごめんなさい。アン。

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