第十二話 外へ

 二人は一時的に元に、ここに来たばかりの頃に戻った。

 でもしばらくするとここでの記憶が蘇り、私を憎むようになった。


 私はもう耐えられない。

 あの二人を消すことも。

 そして会った頃の優しい笑顔に戻るのも。

 これが私のしてきた事なんだ。


 ここは世界の最果て。

 コードに書き換えられて外に捨てられた世界の更に外側。

 中には多分戻れない。


 透明な草原が急に霧に覆われる。


 そうかこの先が外なんだ。

 この先には何があるんだろう。

 でも、私にはそんな冒険心はない。


「お? お出迎えか?」


「誰!?」


「誰ときたか。俺はユリウス。ここでも名が通っているのか?」


 ユリウス!?

 でも全然似てない。

 多分ただの名前被りだ。


「知らない。私の知ってる人とは違う」


「へぇ」


「来ないで! 私に近づかないで! 私にはコードがあるんだから!」


 近づいてくる。

 どうしよう。どうしよう。

 私はもうコードを使いたくない。

 もうあんな事起きて欲しくない。


「来ないでって言ってるでしょ! お願いこないで! こないでよぉ!」


 私。私。使えない。


 ポンと肩をたたかれた。


「ああ、悪い。本当に無関係なのか。ここのチーターのお出迎えかと思ってよ」


 ちーたー? 


「コードを知ってるって事は会ったことがあるんじゃないか?」


「異世界オジサマの事?」


「多分そいつだ。アンタは被害者か」


「私は被害者じゃない」


「へぇ。流石ここまでくる奴は違うな。名前を聞いても?」


 私は、もうデジレ・テレジアは私の名前じゃない。


「そうか。外は危険だぞ。名前ぐらいは決めておけ。それとここはもうなくなる」


 え?


「俺はチーター狩りだからな」


 彼は行ってしまった。

 ここが無くなるって。


 


 私は外へ向かう。霧が晴れ小高い丘へ。

 違う。ここから窪んでいる。盆地だ。


 え? ナニコレ。


 振り返るとそこには稲光を放つ黒雲が固まっている。


 今私はここから出てきたの?


 それが破裂する。


 轟音と共に全てが空の彼方へと消え去る。


 ここは本当に仮初の世界だったんだ。


「おお!? 本当に出てこれたのか」


 外から来た方のユリウスだ。


「当てがないなら一緒に来ないか。コードが使えるなら歓迎だ。

 チートの被害者でも生存できるんなら保護しても構わんぞ。

 その経験は活かせるからな」


 そっか。

 私が居た世界はもうないのか。

 なら、


「私はデジレ・テレジア。コード使いよ。」

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