第2話 一人で寂しいなら友を作ればいい

 俺の人生は10歳以降から波乱だった。

 遊んでいて熱中症でぶっ倒れたら、まさかの知らない場所でした!!とか、本当に笑えなかった。それから2年間、俺は幼いながらも一人で暮らした……、訳じゃない。

 俺には友人がいた。最高なね。


 ーーー

 ーー

 ー


 転生したその日から一週間、俺は森の中で生活基盤を作った。水は湖から、寝所は洞窟を見つけた。食料は野草とキノコだ。この時初めて自分が貧乏な事に感謝した。何と言ったって、村にいてお腹が空いた時はそこら中の野草をかき集めて茹でて食べたりしていたのだから。空腹には慣れていたし、生活方式もそこまで変化はない。何も問題ないはずだった……のだが。


 ーー寂しさのあまり一日中泣いたのだ。


 流石に予想外だった。万年ぼっちの俺が!?寂しさのあまりに泣いた!?そりゃあ、ビックリですわ。たかが10歳という訳だ。家族から離れてしまい、心細い中のぼっちだ。泣いても許されるはず。許されるよな…?

 しかし予想外だったのは、その寂しさが1ヶ月経っても拭えなかった事にある。

「寂しい…。」

 転生から1ヶ月、未だ寂しさに震えていた俺はそう口走った。驚きのあまり口元を押さえ、泣きそうなくらいに歪んだ視界を何とかしなければと拭った。

「家族の代わりはいねぇし、そもそもここ俺以外人いないし…。」

 人の声も痕跡もない。あるのは動物の糞と自分の糞、後は木々だけ。

「せめて、友達でもいればなぁ…。」

 そしたら寂しさとか無くなるかもしれない。このあまりにブルーな気持ちが、もっと明るくなるかもしれない。

 ーん?友達?俺は友達を作る…!?

 何という事だろう!!友達を作れば良いのだ!見落としていた!バカか俺は!

「よし!友達を作ろう!」

 何バカな事をほざいているんだ、と思うだろう。しかし、友達を作る以外に道はない。このままだと寂しさでウサギみたいに死んでしまう。

 思い立てば即行動する。マジでこういうところを誰か評価してくれ。すぐ行動できて凄いね、とかさ。いや、俺以外ここにはいないけど…。


 ⚪︎


 静かな森の中を歩く。木々のざわめきがあるだけだ。俺の土を踏み締める音が、やけに大きく聞こえる。

 まず、友達を作るには材料がいる。

 少し太い木の枝を何本か拾い、それから鋭い石で木に巻き付く蔓を断ち切った。小さな小石を拾い、ポケットに突っ込む。咲いている青い花を摘み、うさぎの皮袋で作った水筒に水を汲んだ。

「これでよし。」

 俺はもう飛び跳ねて空飛べそうなくらいテンションが上がっていた。というかスキップしていて、滅茶苦茶高く跳ねていた。だって、だってもうすぐ望まぬぼっち生活とお別れなんだ。少しくらいテンション上がったっていいでしょ。


 俺は洞窟に戻ると、すぐ作業を開始した。

 枝を切り、蔓を巻きつけ、顔を彫る。丁寧にやらなければ、不細工になってしまい、友人に嫌われるかもしれない。何でお前はこんなに俺を不細工に作ったんだよ‼︎とか言われたら、心が折れてしまいそうだ。いや、多分言わないけど。

 つるで手足を作り、先には細い枝をくくりつけた。青の花を擦り潰し、水を少し掛けて液を作る。所謂絵の具的なやつだが、ソイツを拾ってきた小石に塗りつけて着色する。そして、着色した小石を彫られた目の部分に嵌め込んだ。

「ジャストフィットっ!気持ちいいぜ。」

 まあ、それなりにお化粧してやる。髪の毛は3本だ。

「で、できた‼︎」

 愛らしい、木で出来た友人の完成だ。それなりの出来に感動する。

 これが俺の友達か〜‼︎可愛いなぁ!とか思うレベルだ。完成度が満足すぎる。

「名前何にしようか。」

 うーむ、ここが重要なのである。元の場所に戻れる保証が無い以上、コイツと一生を添い遂げる可能性さえある。後、普通に愛着が湧いている。

 取り敢えず俺は、思いつくかぎりの名前を書き出した。

「デクとかどうかな?いや、バカにしてんのかって言われそう。じゃあ、ショツとかどう?いやいや、言いずらい…(略)これもダメ(略)あれはどうか、うんダメ(略)」

 まあ何個も案を出したが、結局ネーミングセンスがないので絶望。

「友達、友達だろ…?うーむ…。」

 友達、フレンド、フレンド?フレンド!?

「フレンでいっか。」

 安直すぎるというツッコミはなしだ。俺もそう思うから。でも、1番マシだった。

 この日、俺の新たな友人の名前はフレンになった。


 ⚪︎


 俺のスキル【渡り人】とは一体何なのか。何度も転生を繰り返し、気がついた。


 10歳の夏。俺はある日突然別の場所に飛ばされてしまい、サバイバルしながらも何とか街にたどり着いた。そして気がついたのだ。

「何、魔術って。」

 この世界は魔術によって発展していた。


 12歳の夏。俺は立ちくらみと眩暈がして道にしゃがみ込んだ。そして目を開ければ知らない場所にいた。目の前の壁には新聞が貼られており、俺はそれを覗き込んだ。

「何だよ、魔王って。」

 この世界は魔王によって支配されていた。


 14歳の夏。俺は立ちくらみと眩暈がした後、目を開けた。真っ暗な世界で、多くの街灯が街を照らしている。時計を見れば午前11時。

「は?夜かよ。」

 この世界は昼がなかった。


 そして16歳夏。俺はガゼと別れた後、立ちくらみと眩暈がして目を閉じた。それからもう一度開けると、だだっ広い草原が続いていた。

「あぁ、転生したのか。」

 そう、俺はこの日、4回目の転生を経験した。


 俺、ラルクのスキル【渡り人】とは何なのか。俺はずっと考え続けた。そして、ある結論に至った。

「俺のスキルって、もしかして2年ごとに異世界に転生する?」

 なんて面白いスキルなんだろう!俺は14歳で自分のスキルを理解した。

 しかし、真にそのスキルの効果を理解することはやはり出来なかったのだ。本当はもっとグチャグチャで、意味わからなくて、そしてとてもエゲツない事に巻き込まれているともいざ知らず。


 4回目の転生に心躍る俺のカバンの中から、フレンがひょっこりと顔を出していた。


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