第10話 エピローグ

 ……ああ、実に楽しかった。

 愚かな男が破滅に向かう様も、清らかな乙女が堕ちていく様も、まさに極上の戯曲でした。

 何度見ても飽きることがありません。いや、むしろ飽きるどころか、味わい深くなるばかりです。

 しかし純粋な魂というものは、どうしてこうも甘美なのでしょう。

 無垢であればあるほど、踏みにじる喜びがある。

 清らかであればあるほど、汚していく悦びがある。

 私が手に入れた彼女の魂は 実に素晴らしかった。

 絶望に染まりきった涙の味。

 純潔だった者が穢れに気付き、耐えきれず叫ぶ声。

 救いを求めても届かぬ祈りの絶望。

 何もかもが、たまらなく美しい。

 さて……そろそろ、次の獲物を探すとしましょうか。

 清純な乙女の魂は、どの時代にも存在するものです。

 彼女たちは、どんなに時代が変わろうと、この世界のどこかにいるものです。

 清らかで、けがれを知らず、愚かなまでに美しい魂。

 己の無垢さに気付きもしないまま、私の手のひらに転がり落ちる存在。

 ひょっとして、あなた方はそんな魂の持ち主の居場所を知っているのではありませんか? それとも……。

 ひょっとしてあなた自身がそうなのでしょうか?

 ……ふふ。

 さて、次はどの時代を旅しましょうか……。

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メフィスト・ワルツ ウゴ @wentgoing

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