ダイヤモンド

　吉北くんが、軽快に身体を縦に乗る。

　佐場くんのリードを見つめる。インコース、高め。

　ワンステップ、振りかぶる。

「あっ」

　しまった、失投。ど真ん中だ。

　吉北くんが振るバットが、いやにゆっくりと見えた。

　ガッキーンッ！　って、高い高い音が鳴って、吉北くんが走り出す。

　ワンバウンドの球を、姫田くんが拾う。二塁送球。

「ノーアウト一塁……。あっ、姫田。場所交代なー。次、オレ守るから」

「うぃー」

　姫田くんが打席に立つ。ぼうしからはみ出たおかっぱ頭が、ふわっと揺れた。

　リードは、アウトコース低め。

　ワンステップ、振りかぶる。土を踏みしめると、力が伝わる気がする。ボールが、手から離れた。

　見逃し。

「ワンストライクね」

　けたっと姫田くんが笑った。

　また、構え直す。

　食えないよなあ、姫田くんて