第4話 歌う少女と街の影




 喧騒と混沌が渦巻く街。人々が行き交い、物と情報が飛び交う中、私は相棒のミルと共に商売をしていた。情報戦が鍵を握るこの街では、顧客や取引先の情報を集めることが日常であり、時には黒い手段に頼ることもあった。


 そんなある日、知り合いのお見舞いで訪れた病院で、窓辺に佇む少女を見つけた。ボロボロの服に身を包み、か細い声で歌を口ずさむ彼女。その歌声は、街の喧騒を忘れさせるほど美しかった。


「彼女は身寄りがなく、重い病を抱えています」と看護師が教えてくれた。私はふと、取引先の夫人が探していた「孫」の話を思い出した。ミルにメモを託し、夫人に伝えるよう頼んだ。


 数カ月後、夫人の息子夫婦が事故で亡くなったという話を耳にしたが、少女に関する進展はなかった。そんな中、ミルが盲目で片足のない少女に心を寄せていると聞いた。誇り高く生きるこの街の人々の中で、彼の想いが報われることはないだろうと、私はどこか寂しさを感じた。


 再び病院を訪れると、少女は以前よりも衰弱していた。看護師に訪問者がいなかったか尋ねたが、誰も来ていないという。私は少女に話しかけた。「夫人とは会っていないの?」


「おばあちゃん……?」少女は目を見開き、咳き込みながら血を吐き出した。その瞬間、私は背筋が凍るような感覚に襲われた。


 そして、ふと気づいた。ミルが私の背後で何かを呟いている。


「しまった、ミルを信用しすぎた……」


 その言葉が口をついた瞬間、私は自分の胸に広がる痛みと、喉を伝う血の味を感じた。





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