第2話 きたごりらくん。



 庭に、クソでかいゴリラがやってきた。


 茶色い毛並みはふもっふしていて、どことなく神秘的な雰囲気を纏っている。父はぼそりと呟いた。


「北ゴリラかな〜」


 北ゴリラが何かは知らない。でも、なんとなく「これはただのゴリラではない」と思った。


 最初は警戒していたけれど、ご飯をおすそ分けすると、ゴリラは静かに受け取った。何か優雅で、威厳がある。それでいて、どこか親しみやすい。


 試しにもう少し近づいてみた。すると、きたごりらくんは——身振り手振りで話しかけてきた。


 ——会話ができる。


 私はゴリラにたくさんのことを聞いた。どこから来たのか、なぜここにいるのか。ゴリラはゆっくりと仕草で答えてくれる。


 どうやら、「自分は5〜6歳で、人間に興味がある」ということを伝えたかったらしい。

 私が合ってる?と聞くと、ゴリラはそれに頷いた。


 そして、ふと顔を上げた。


「これからも、人間を見ていたい」


 そんなニュアンスの動きをした。その瞬間、私は思った。


 このゴリラはただのゴリラではなく、「何かを見届ける存在」なのかもしれない——。

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