9日目

突然の事でごめんなさい。僕はこの荒廃した日本で、やらなければならない事が出来ました。


なので、ここでお別れです。


ノエルさん。今まで一緒にいてくれて、ありがとうございました。無事にここから脱出している事を、心から願っています。


              阿達あだち てるより


……



今回はろくに、この世界を旅する事は出来なかった。それが唯一の後悔。初めて会った現地民に過度に干渉し過ぎるのは、私の悪い癖だって…分かってるんだけどなぁ。


「やられたよ…まさかこの私が、出し抜かれちゃうとはね。」


もしも運良く、ここに再度訪れる機会があったら…ちゃんとこの世界を巡ろう。そしてこの修羅場から逃げやがった少年を1発ぶん殴ろう…月明かりを眺めながら、そう固く誓った。


「……ふっ。来たかい?」


物音が聞こえて、リビングに置かれた少年からの手紙(これが本当の、『ダイニングメッセージ』?)を破り捨てる。


「先に言っとくけど…生存をかなぐり捨てて、ヤケクソになった私はかなり強いから、覚悟してね。」


「先輩…邪魔する……な、らァ…Kill!!!!」


「なーんだ…少しは喋れんじゃん。後遺症…残してあげる。」


私は出し惜しみなしの全力を持って、黄色のローブを羽織る黒髪の女性に、肉薄する———!!!


………


……



微睡の中…声が聞こえた。


【おや、こんにちはノエル。今回も無様に死んだみたいですね。】


「いやいやいや!?!?!?瀕死に近い傷は負わせたよ!?クソゥ朝にさえならなければ…後、数の暴力とかがキツくて…」


【絶大な力を持っていても尚、負けるなんて…それでも『原初の魔物』ですか?】


反論の1つでも言ってやろうかと思ったが、何も言い返せなくて、私は俯く。


【さて、今回の世界…『雨ノ残骸世界(上)』は楽しめましたか?まあ、その表情を見るにお察しですけど。聞くくらいはしてあげますよ。】


「大好きな日本は既に滅んでるわ、黒幕ヤベエわで、最悪な世界だったよ!?ゾンビ程度にボロクソに負けるし…(上)?」


【おっとそこは、お気になさらず…おや。ルーレットの針が止まりました。次にノエルが行く世界は…『精霊の森』みたいです。】


「精霊……」


母様と私達を切り離した…うーん。嫌なイメージしかないんだけど。


【大戦中でも『精霊の森』の中は、ある事件を除けば、かなり平和でしたし…前回とは違って、ゆっくり観光が出来そうですね。】


「?…観光って。君は別に行かないし、関係ないんじゃないの?」


そう言うと、心なしか気分を害したような口調で、ルーレットの女神はこう答えた。


【何を言ってるのですかノエル…これから先、ずっと、私も共に同行するんですよ?案内役兼解説役として…お仕事の依頼をされたので。】



………はい?



———雨ノ残骸世界(上)…完。

『精霊の森』へ続く。


























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る