第4話
ー秋。
暑さが和らいでくると、みんな少しほっとしたような、寂しそうな顔をする。
それはきみも同じなのか、あんなにへんにょりしていたのに、夏が終わっちゃったねと寂しそうに眉を下げた。
「珍しいね、読書なんて」
カフェのテラス席で、おもむろに難しそうな本を取り出した彼に、私は意外だと首を傾げる。
「読書の秋だからね」
季節限定のお芋のモンブランとやらを嬉しそうに口に運びながら、彼はそれっぽく本に目を落としてみせる。けれど、ページをめくる手が少しも動かないのを見て、私は思わずくすりと笑った。久しぶりに動かした表情筋が少しだけ引き攣った。
「今、笑った?」
「笑ってないよ」
私の笑い声に、不満そうに顔を上げた彼に、私は涼しい顔で首を振る。
絶対笑った、笑ってないよ、笑った、まあちょっとだけ。
くすくすと笑う私たちの間を、紅葉がひとひら、風に揺られて通り抜けていった。
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