第5話
ー冬。
鼻のてっぺんを真っ赤に染めて、マフラーに口をうずめて、きみは駅の改札口で私を待っていた。
「ごめんね、寒かったでしょう」
寒そうにふるふると震える彼に、私は慌てて歩み寄る。
外ではちらちらと雪が舞っていて、イルミネーションが輝く街に彩りを添えていた。
「平気平気」
ふふふ、と笑った彼はなんだか楽しそうで、私までふわりと頬が緩む。あの日引き攣った頬は、もう引き攣らずに笑みの形を作ってくれる。
「道ゆくひとが楽しそうで、なんだかわくわくしたんだ」
そう言って、くしゅん、とくしゃみをした彼の手を、私は慌てて握りしめる。彼の手は氷のように冷えきっていたけれど、彼はずっとにこにこと嬉しそうに笑っていた。
…それが、なんだかすきだなあと思った。
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