第2話
ー春。
君と出会った。
せわしなく行きかう人の中で、きみは春の陽気に誘われて気持ちよさそうに微睡んでいた。
それがあまりにも危なっかしくて目を離せないでいると、後ろから焦ったように走ってきたお兄さんが私に思い切りぶつかった。
あ、と周りにいた人たちが私の方に視線をやったけれど、朝のラッシュの時間帯、みんなバランスを崩して転んだ私の横を足早にすり抜けていく。
「大丈夫ですか?」
そんなことは当たり前だと思いながらも、ふととわたしは世界でひとりぼっちなんじゃないかと思った。立ち上がれずにいると、人混みから庇うように一つの手が差し伸べられた。
「ありがとうございます」
反射的に顔を上げると、そこに眠たそうにふんわりと笑うきみがいた。春は気持ちが良くてどうにもぼんやりしてしまいますね、なんて言って。
…それがなんだか、すてきだなあと思った。
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