021:青ゴブリン、また森へ(後編)

 ◇


 ども、ジンジュです。

 また、東の森のはたまで来た。ちょっとくもってきたな~。


 じゃあ大盾出して、森に入ろう!



 ……と思ったら、森の中から白いかたまりが飛び出してきた。


「……ッ、【受け流し】! …… ?? 」

「……カタカタ」


 こっちに来たから、咄嗟とっさに盾で受け流す。

 着地したそれをよく見たら……顔怖ッ !? そんでよく跳ねる骨だな!


《「スケルトンラビット」1体と交戦中です》

《抵抗に成功しました》

《従者「とがの」が抵抗に成功しました》


 森から飛んでった、緑色の光の玉をけた……【風の魔球ウインド・ボール】やなそれ!


 で、森から猫耳の男が1人、走ってくる。


「クロウ、【光の魔球ライト・ボール】頼む!」

「カァ!」

「サンキュー! ……よぉボーゼ、サッカーしようぜ? ボールそいつなァッ !! 」

「はぁ ?? そんなん蹴飛ばいたらケガするわ !! 」


 猫耳さんは誰かに指示出して、ボーゼに話しかけた……カラスや! 小ぶりな烏が、魔法使つことる !!

 逃げまどう骨っ子に、白い光の玉が直撃した。彼? はそのまま、カラカラ……って崩れ落ちた。


《戦闘を終了しました》



 手を合わせておこう。なむなむ……



 ◇


 はい、詰問きつもんがあります。


「何ですか今のは~ ?? 何で骨格標本が動いとんの ??? 」

「そらアレ標本ちゃうからな。“スケルトンラビット”って、れっきとした魔物モンスターや」


 俺の疑問に、ボーゼが答えた。


 スケルトンは“彷徨う亡者アンデッド”の一種。生き物としては1回お亡くなりになって、本来はバラバラの骨らしい。

 なのに不思議な力でまとまって、動いてる魔法生物だ。別に接着剤でいでるわけじゃない。


 もちろん、兎以外のスケルトンもいる。人型と狼は3人とも見たらしい。


「……しっかし珍しな、こんな真っ昼間から“彷徨う亡者”て。また変なんいとんか?」

「みてぇだな。倒すだけ倒して、そのまま捨ててくヤベーやつが」

「ランダムスタートの露出仮面か?」

「ハハハ、いたなそんなヤツ。初日から配信停止食らってたっけ? そいつかは知らねえけど……まあでも異人プレーヤーだろ、“効率重視”とやらの」


 ボーゼと猫耳さんが話しだした。仲いいな~、何つながりだろう?

 俺はもちろん、えすとも空気になってるからな。格ゲーで知り合った、とか?


 ……ど~でもいいけど。



 話の中身? ツッコんだら負けかと。何にも分からん……。


「……で、彼がうわさの新入りくん?」

「そうそう。 ……要らんこと言うなよ?」

「そりゃ当然だろ、信用ねえなぁ」


 ……こっち来るね。じゃあ丁寧な標準語そとづらモードで……


「“はった・むさし”だ。よろしく!」

「“ジンジュ”いいます。こちらこそよろしゅうお願いします」


 いか~ん、関西弁が漏れた。誠に遺憾。

 ……ダジャレは置いといて、だ。なんか妙に視線を感じる、遠くのほうから。

 んで、はったさんがボーゼを指しながら一言。


「話は色々聞いてるぜ、アイツから」

「……どこまで聞きました?」

某SNSヘックシュで某作家の裏アカに“ファンです!”ってDMした話までは」


 ……やったなぁ、そんなこと。そのせつは本当にすみませんでした!

 “若気わかげの至り”って言うの? 怖いわ~……。


 当然、おしかりを受けました。


「あなたは本アカウントの存在を、だれに聞きましたか。」


って。何で|夏目○石(そ・せき)なんだ……


 あ、健康面はご心配なく。『こ○ろ』? わけ分からん……。



 ……いや違う! よそ様に何バラしてんだよ !!


「……よぉボーゼ、マ○棒に竹串刺してええ?」

「やめろ! 色んな意味でやめろぉ !! 」


 凶悪なボケに、沈黙が広がる……ことはなかった。


「は? 配信停止 !? 」

ウソ、何で !? 」


とか何とか、周りから聞こえてる。だから勝手に撮んな、ってあれほど……


「じっちゃんが言ってた単語ヤツだ。何で知ってんの、“○ラ棒”……?」

「ネットで見たことあって、なんか忘れられなかったんです。知りとうなかった……」


 忘れたいけど忘れられん……てこと、ありますよね~?



 閑話休題。



 ふと見たら、足元で小兎と、小ぶりな烏が一礼してた。とがのさんと……え~と?


「お、そうだ。こっちは“クロウ”ってんだ」

「カァ」

「そうなんすか。 ……よろしくね~」


 かわいい……さらば“丁寧な標準語”……

 “とにかく小さいのはかわいい”、古代から変わらない真理だって。


 ん? □゛キブリ ?? 今は忘れなさい……


「ふす、ふんす!」

「あ~すまんすまん。 ……この子は“とがの”いいます」

「“とがの”……?」


 ……ですよね~。


「京都の地名から取りました。『鳥獣戯画』のお寺がある所です」

「……あぁー、兎とカエルのやつか!」


 知ってる人でよかった~。次からは「気分で付けた」って言おうかな……?


「ふんす!」

「あッ !? 」


 左の膝裏ひざうらを蹴られた。やめておこう……



 ◇


「ってなわけで、今だけお化け退治業者ゴーストバスターズやってんだけどよ、数が多くてな。おめえらもどうだ?」

「……もしかして、幽霊とか出ます?」

「お、出るぜ。興味あっか?」


 どうも、質問に質問で返す無礼者です。お互い様、ヨシ!

 あと、今にも


「「げえ……」」


とか言いそうな友達2人は無視します。仲間は捨てるものDA


「げえ、よりによって趣味悪いん同士が」

「はーおうち帰りたーい!」

「……聞こえてんぞ ?? 」

「お前らさ~、“そんなホンマのこと言うたらアカン”て日本語分かる ??? 」

「「 認 め る な 否 定 し ろ 」」


 ま、ネタはその辺にして。森のお化け退治、やります。


 じゃPTパーティー組もうか、ってところで、問題が1つ。

 1PTの定員は7名です。ここには4人と4匹、合わせて8名おります。

 ……はい、枠が足らぬ。こんなときどうすれば……?


「てってれぇ! “レイドPT” !! 」

「……何ですか今のは~ ?? 」


 せっかちボーゼ、ネタの効果音も端折はしょりがち……そんな話ど~でもいいな。

 枠が足りない? なら増やせ。


 ……ってな理屈で、1段上の枠組み「レイドPT」の出番です。

 基本は“複数PTの同盟”って感じらしい。やから定員は8~25名。ただ、リーダーが許可したら、ソロの人も入れるらしい。


 ちなみに、レイドで足りなかったら、現地の役場に届け出て「ギルド」。

 それでも足りなかったら、国の許可取って「ユニオン」なんだって。


 ……そこまで行ったら、手続きとか面倒くさそう。“冒険者組合シーカーズ・ユニオン”の偉大さよ。


 さらに余談。ギルド~ユニオン級の違法な団体は「クラン」て言うそうで。

 暗殺クランとか邪教徒クランとか、色々あるらしい。



 くわばらくわばら……



《レイドPT「お化けとは何か!? その答えを求め文字数」が結成されました》


 ……あんまり人のこと言えないけど、それにしてもボーゼの名付けネーミングセンスは酷い。ネタでも見切れるの早すぎる。

 ガチやったら引く……


 友達やからこそ、どついてでも止めなアカン時は、あると思います。

 ……まあ、今回はそこまでじゃないし、何より対案がない。だから黙ります。ドーモ、○ホウナノダ!



 ところで、何か忘れてるような……?



「……あっせや! さっきの骨兎、【鑑定】さしてもろてええっすか?」

「別にいいけどよ…… ?? 」

「「安定のマイペース」」


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