020:青ゴブリン、また森へ(前編)

 ◇


 アインツに、昼が~来た~。

 ……てなわけで、ジンジュです。コンニチハ!


 リアルで昼飯食って、戻って来ました。で、またまた混みあう中央広場です。もはや見慣れた光景だ……

 ま~、昨日よりはだいぶマシだけど。



『【夏の風物詩「スライムの大移動」情報】

 スライムの大群がアインツ公国に接近中です』


 んで、またログアウト中に通知来てる。

 知らん……何それ……私、気になります……。



 とりあえず、まずは女神像シトリーさまに手を合わせて……なむなむ。


 で、次は~……ボーゼ・えすとと合流しなきゃ。友達フレ欄友達欄……。

 もうログインしてるよな~。え~と、どこだ……噴水の反対側 !!


 うわ~面倒めんどくさ! ぐるっと回ってかなアカン。

 仕方しゃあないな~……


「待たせたな~」

「おーっす、俺も今来たとこ」

「俺はリアル100日前」

「「早過ぎ~……」」


 イケメンえすとっきゅーと、すぐボケるボーゼ。 ……それサービス始まる前。



 まあ、ネタは置いといて。


「で~、今日はどこ行くん?」

「また南大門から東の森かな。レティらひろて」

「「りょーかーい」」



 じゃあ、早速行こ~。



 ◇


 まずはオレーキーさんの武具屋へ。復活した大盾を受け取った。


「頑張れよ!」

「はい! あざ~っす !! 」


 そこから、また30分ほど小走りして、検問の順番待ち。その間に軽く昼飯。

 携帯食料レーション・レーズン味、うま……。


 あと、とがのさんにスキルを追加。


《従者「とがの」が〈下剋上〉を取得しました。残りSPスキル・ポイント:2 》


 んで、検問クリアして、南大門から街を出た。


「「「こんにちは~」」」

「こんにちは、気をつけてね」


 ど~でもいいけど、門番のおっちゃん全員、前とは別の人やった。 ……たぶん。


「……【闇の破魔矢ダーク・アロー3連トリプル】……フッ、ちょろいぜ」

「……【跳弾バウンド】! ……やったあ! 当たったよリッくん !! 」

「すごいよマーちゃん! 弓道やってた !? 」

「……かきーんッ! 【ホームラン】!! 」

「「「口で言うな……」」」


 そして今日も、南の平原は大盛況だいせいきょう。野生の小兎ミニラビットたちが、ガンガン狩られていく。

 そんな平原に出て、左に曲がる前。2人が右向いて、なんか遠くのほうを見ようとしてる。


「……何しとん?」

「“スライムょる”らしいから、つい……な」

「んなすぐ見えんけどさー……つい、な」

「何ですかそれは……?」


 思わず質問を重ねちゃった。東へ歩きながらしゃべる。


「なんかこの世界、スライムの一大繁殖地があるみたいさー」

「そうそう、西にある“ラ・ボスケ魔導国・出水いづみの森”ってとこやねんけど」


 何かで“見た”名前やな~。

 ……あっ。


「……その国、さっきの『基礎魔法学概説』の表紙にあった?」

「それそれー。森人エルフの国らしいから、いっぺんノリノリで行ってん。ほなエラい顔でにらまれてさー」

「何で? ておもたら俺やった。森人と獣人ビースター、仲悪いらしい。ファンタジーあるある」

「へぇ~……なあるあるやな~」

「せやなー。人種問題はいつも面倒だ……」


 “ファンフリ”さあ、変なとこ生々しいんやめてもろて……いや待て、スライムの話 !!


「……で~、スライムの大発生が何やっけ?」

「あーせやった。その繁殖地がパンクするぐらい、スライムって増えるみたいで。毎年夏になったら、半分ぐらいがそこ出て移動するんやて」


 あれぇ? その話どこかで……?


「……もしかして、動物図鑑に書いとった~?」

「「せやな」」


 2人とも即うなずいた。で、えすとが一言。


「お前でも一発では覚えれんかー…」

「あれパッと覚えれるヤツ、おったら凄いわ~」

「同感やな……」



 ◇


 とか言ってるうちに、あの茶色い小兎に噛まれたあたりに来た。あれから3日つらしい。

 実感はない。日本時間リアルだと、まだ昨日のことだし。


 ……とか思とったら、とがのさん達3羽が駆け寄ってきた。今度は無事そうで何より。


「ふすふす」

「ぷぴ!」


 口元に緑……コイツいっつも草食ってんな ???


 そんな彼女の後ろから、別の小兎が1羽、ぴょこぴょこ寄ってきた。レベル4のオスらしい。

 全身、冬場の青空みたいな色の毛並み。


「……変な色やの、ハ○゛タコぉ !? 」


 対するとがのさんは、左後ろ足を前に上げてから、一気に後ろに振り上げた。


「ふんす !! 」

「ぷぴぃ !? 」


 抱きつこうとした空色の子の鼻先に、その足が直撃した。

 痛そう……なだけじゃない。人間で言ったら、目潰しらったようなもんだ。

 彼は脇目も振らず、ぴょこぴょこ走り去った。


「「「えげつな~……」」」

「ふんす!」


 足癖悪すぎて、反応に困る。

 バンドのドラマーかよ……いや知らんけど。



 ◇


 特に邪魔が入らないまま、東の森のはたまで来た。ちょっとくもってきたな~。

 ほな大盾出して~。森入ろ……と思ったら、


《抵抗に失敗しました》

《抵抗に成功しました》

《従者「とがの」が抵抗に失敗しました》

《「とがの」が抵抗に成功しました》


 また通知。んで、“誰?”って思う間もなく、森の中から、白い塊が飛び出してきた。


「……ッ、【受け流し】! …… ?? 」


 こっち来たから、咄嗟とっさに盾で受け流した。

 着地したそれをよく見たら……何かの骨が、動いてる ???


「……カタカタ」


 大きさはレティシアぐらい。お、こっち向いt……顔怖ッ !? 何その、ごっつい前歯……あっ跳ねた。

 森から飛んでった、緑色の光の玉を避けた……【風の魔球ウインド・ボール】だなそれ!



《「スケルトンラビット」1体と交戦中です》



――――――――――――――――――――

(後編)に続く ▶️▶️▶️


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る