014:青ゴブリン、兎を従える(?)

 おっす、オラジンジュ。

 友達と3人、軽率に森に入ったら、どっと疲れたぞ!


 1対1だからって、狼からシシの連戦は……いや~、キツいでしょ。

 慣れてればまだしも、初心者だぞ俺……



 ◇


 ん~? 茂みの向こうに……鹿か。コンニチハ!

 ツノがないからメスだな。こっち向いて~、


「キュ゛ーン!」


 鳴いて逃げだした。じゃあ【鑑定】。

 結果は~……の前に、奥からも足音が。もう2~3匹いたみたいだ。


―――――

ブラウンディア(♀) Lv.17

(分類)魔物/動物型

 北の大陸で最も一般的な鹿。草食。

 警戒心が強く、群れをなす者が多い。


 HP:95%   MP:―

―――――


 そうかい。じゃあ元気でな~!



 ◇


 森の中にも、安全地帯のさぶろうぞ……。

 なんか不思議な力で、敵性の魔物が入ってこないんだって。街なかと同じ理屈。

 で~、前になんかいる。


「ふんす」

「……ぷう」

「ぴすぴす!」


 色素の薄い牛柄と、鮮やかなオレンジ色、そして黒っぽい虎柄。3羽の小兎ミニラビットだ。

 ……あぁいや、虎柄ちゃん(仮称)だけはラビットやったか。


「「「えぇ……?」」」


 こんな所にいたの?

 何 で ??


 3羽そろった。といってもこの子たち、まとまりがない。

 もぐもぐ草をむ牛柄ちゃん。いい加減にしな……

 向かって左側の目を閉じて、動かんオレンジくん。 ……寝てる?

 で、飛んできた謎の紙くずを、追い回す虎柄ちゃん。

 平和だな。だがそれがいい……。


「「「げえ! ボーゼ !? 」」」

「お、一丁いっちょやるコ?」


 急に、左後ろから男複数人の声がした。ボーゼがそれにこたえる。


「「「お断りッ !! 」」」

「はいはい。いっつもありがとうな」


 足早に安全地帯へと駆け込む男たち。驚いたらしいオレンジくんが、あわてて飛び退いた。


「……知り合い~?」

「せやな、ウチの視聴者」


 そこまで仲がいいわけでもないらしい。あらそう……


 話れちゃった……


「お2人さんお2人さん、ちょっとご相談なんですけど~」

「「何や何やー?」」

「この子ら、連れてってええ?」

「「んー……」」


 ちょっとボケてみる。将棋の記録員さん風に……


「10秒~」

「「じゃかまっしゃ……」」


 失礼しました。



結論ケツから言うと、1人1匹ずつかなー」

「「言い方よ」」


 えすとのボケは置いといて。


「【テイム】と【召喚サモン】て、契約できる頭数が決まっとってさー。スキルレベルが1桁やと、【テイム】は“2体まで”やったかなー」

「そうそう。で、お前は最低1体“魔法使える子が欲しい”て言うとったやろ? そのぶん枠1つけとかなアカン。つまり……?」


 俺に振るんかい。


「この子ら全員は連れてけん、か。1羽だけやな~?」

「「そゆこっちゃ」」


 なるほど。じゃあ答えは決まってる。


「……一緒に来る?」

「ふんす」


 牛柄ちゃんに声をかけた。いや即答……前のめりだな~。分かりやした。

 ほな、やり方は……


「【テイム】!」


 牛柄ちゃんの頭の上に手をかざして、となえる。

 彼女の首のあたりに、黄色い光の首輪ネックレスみたいなのが出てきて、3秒ほどで消えた。


《「ミニラビット(♀)」1羽の【テイム】に成功しました。名付けやステータスの確認ができます》


「ほなよろしゅう」

「ふす、ふんす」


 で、名前な~……保留で。いいのが浮かばない……

 2人と2羽は~?


「名前かー……“トラッ○ー”とか?」

「「おい」」


 オレンジくんにプイ、てそっぽ向かれた□人ファンえすとがいた……

 あと、肩に虎柄ちゃんを乗せたボーゼも。 ……重たくない?


「名付けは安全地帯あんちでやれ、て話ちゃうかった?」

「せやった。あぶねー」

「あ、そ~なんや」


 魔力マナ切れで気絶するかも、なんだって。特に俺。

 ……はい、じゃあ移動~。



 ◇


 歩くこと数分、だった。

 安全地帯に入ったら、体力が回復しだした。


 ど真ん中に、あんなのあるから? 【鑑定】~……


―――――

女神シトリーの立像(中)

 (分類)構造物オブジェクト

 時空を司る女神:シトリーの立ち姿をかたどる、石像。移動・破壊不可。

 置かれた地点を簡易的な安全地帯、および転移地点とする。

 その性能は、立地や台座に左右される。転移が機能しないことも。

―――――

神像の台座(大)

(分類)構造物

 巨石でできた、神像の台座。移動・破壊不可。

 神像とともに置かれた地点を、簡易的な安全地帯とする。転移機能を兼ね備えることもある。

 その性能は、立地や神像に左右される。

―――――


 ここから、あの中央広場に戻れるらしい。へぇ~。

 にしても……神様絡みだと、説明細かいな~。


 あ、手ぇ合わせとこ。なむなむ……


「ふんす、ふすふす」


 牛柄ちゃんがかしてきた。名前ね~。

 “ウサちゃん”とか“ラビィ”とか? ……ベタで面白くな〜い。

 兎……『鳥獣ちょうじゅう戯画ぎが』……ギガ? いや~、ないかな?


「“ギガ”とかどう?」



 反応がない、ボツ

 ん~……『鳥獣戯画』……高山寺こうさんじ……京都、栂尾とがのお……ん !?


「ほな、“とがの”てどう?」

「……ふんす!」


 お、いい反応だ~。じゃあそれで。

 ……あれ? なんか視界が白くなってきた……?


 ヤバい、しゃがんでもダメだ !?


《名付けに成功しました。以下の条件が満たされています》

《称号〈毛玉の主〉を取得しました》

《MP不足により、状態異常【気絶】になりました。回復まで約59秒……》

《従者「とがの」が、称号〈鬼族の従者〉を取得しました》


 通知来たけど、なーんにもできない……


「あーやっぱり……起きろジンジュー」


 えすとに肩を揺すられて、秒数が減っていった。


「……ハッ !? おはようございました~」

「「おうお疲れー」」


 飛び起きたら、2人と3羽が集合してた。

 オレンジくんは“ダイス”、虎柄ちゃんは“レティシア”て名前になったみたい。


「俺はツッコミをやめるぞ、ジ○ジ○ーッ !! 」

「同意見だなぁ……」


 えすとと2人でボケてたら、ボーゼが一言。


「はいはい後でな。アインツ戻るぞ」

「「あいよ~」」



 ではここで、女神像による転移のやり方です。割と簡単。

 像にお供え物をして、行き先を選んで祈るだけ。 ……だそうです。

 3人揃って、“ブラウンウルフの肉”を1個ずつ。


《「アインツ・中央広場」への転移ができます。転移しますか?》


 はい、お願いしま~す。



 ◇


《「アインツ・中央広場」に転移しました》


 恥ずかしながら、帰ってまいりました! 一瞬で、アインツの中心部にな。

 ヤバい技術だ~。


 で、まずは報告。冒険者組合シーカーズ・ユニオンへ……


「あ~、また並んどる……」

「「 せ や ろ な 」」



 だと思ったよ!


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